2021年10月04日
アイデアよもやま話 No.5077 転換点を迎える日本の電力事情!
6月3日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で転換点を迎える日本の電力事情について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

この夏にも原子力発電所の再稼働の問題などもあって、電力が不足する可能性が取りざたされています。
そこで期待されているのが再生可能エネルギーの拡大なのですが、今、意外な可能性が浮上しているのです。

神奈川県厚木市にある関原茂さんのお宅では10年以上前に自宅の屋根に太陽光パネルを設置しました。
関原さんは次のようにおっしゃっています。
「売電(価格)がもう本当に安くなっちゃったので運用方法をどうしようかな。」

年々太陽光の売電価格が下がり、収支が合わなくなってしまいました。
そこで購入したのがEV(電気自動車)です。
EV(に搭載されている蓄電池)を家庭用の蓄電池(バッテリー)として活用し、貯めた電気を自宅で使うようにしたのです。
EVを蓄電池として使うのに住宅に電気を送る特別な装置がニチコン製のEVパワー・ステーションです。
ちなみに価格は約44万円〜(工事費を除く)です。
毎月の電気代は想像以上に安くなったといいます。
「(月に)1万円は違います、去年と比べて。」
「太陽光だけでほぼ賄えますので大正解ですね。」

茨城県つくば市にある国立環境研究所では太陽光とEVを組み合わせることで都市で使う電力の大半を賄えるようになると試算しています。
国立環境研究所 地球システム領域の小端拓郎特別研究員は次のようにおっしゃっています。
「太陽光発電とEVを組み合わせることによって非常に経済性の高い方法でCO2削減が可能になるということが分かりまして、“ソーラーEVシティ”を進めていくことが非常に重要であると。」

国立環境研究所が提唱する“ソーラーEVシティ”とは、住宅などの屋根に太陽光パネルを設置してEVを蓄電池として使います。
そうすることで発電した余剰電力をEVに貯めて、その電力を使うことで都市で消費する電力の大半を賄うことが出来るというのです。

建物の屋根の70%に太陽光パネルを設置して乗用車を全てEVに置き換えた場合、全国9都市で試算すると最下位の東京23区でも電力需要の53%が賄え、トップの岡山市では95%、2位の郡山市では92%、3位の広島市では90%を自給出来ることが分かりました。
小端さんは次のようにおっしゃっています。
「太陽光パネルの価格は今後10年で半額くらいになると言われておりまして、それとともにEVの方も価格が今後安くなっていきますので非常に効率の高い“脱炭素化”を行える。」

太陽光パネルの価格が下がったことで新たなサービスも登場しています。
茨城県土浦市で去年10月に夢のマイホームを手に入れた西田篤史さん、自宅の屋根に設置した太陽光パネル、通常工事費込みの価格は約150万円ほどかかりますが西田さんは次のようにおっしゃっています。
「無料です。」
「無料でもらえて、更に使っている昼間の電気もほぼ無料で使えているような状態。」

太陽光パネルを無料で設置するサービスで全国で事業を急拡大しているのがベンチャー企業の株式会社シェアリングエネルギーです。
取締役の古賀恵美子さんは次のようにおっしゃっています。
「太陽光でつくった電気をご自宅の中で使っていただいて、余った電気を弊社が電力会社に売ることで収益を得ております。」

このサービス「シェアでんき」は、無料で太陽光パネルを設置し、最大2年間昼間の電気代を無料にしています。
それでも収益を上げられるのは、余剰電力を10年間シェアリングエネルギーが買い取って電力会社に売っているからです。
古賀さんは次のようにおっしゃっています。
「住宅用の屋根は空いている場所の活用になりますので、もっともっと普及させるべきだと考えております。」

都市で太陽光パネルを設置出来るのは住宅だけではありません。
株式会社アイ・グリッド・ラボが目を付けたのは巨大な物流センターです。
ロジスクエア狭山日高(埼玉県飯能市)の屋上には太陽光パネルがびっしり、約2500枚が設置されています。
アイ・グリッド・ラボの取締役、岩崎哲さんは次のようにおっしゃっています。
「パネルを敷けるだけ敷いてどんどん発電してクリーンな電力を使っていこうというのがこれです。」

伊藤忠などが出資するアイグリッドグループはスーパーマーケットや物流センターの屋根に太陽光パネルを無料で設置して事業を拡大しています。
既に全国170ヵ所以上で太陽光パネルを設置、導入した企業は大手電力会社よりも安く再生可能エネルギーの電力を使うことが出来ます。
一方、アイグリッドは余剰電力を電力会社に売ることで収益を上げているのです。
アイグリッドが特に注目する物流センターには大きなメリットもあります。
岩崎さんは次のようにおっしゃっています。
「発電量に比べて全然使用量が少ないので(電力が)かなり余るんですよね。」

屋根では1時間に最大約500kwhを発電しますが、物流センターで使う電気はその半分ほどなので、大量の余剰電力が生まれるのです。
アイグリッドは伊藤忠と組んでこのクリーンな余剰電力を7月から一般家庭に販売していく予定です。

太陽光パネルとEVで生まれる余剰電力をうまく循環させることで、都市で使う電力をその都市で賄える可能性があるのです。
国立環境研究所の小端さんは次のようにおっしゃっています。
「都市におけるCO2の排出は日本全体の排出の50%近くになります。」
「“ソーラーEVシティ”を進めていくことが非常に重要である。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。
・今後、太陽光パネル、およびEVの低価格化は進む
・住宅やオフィス、工場などの屋根に太陽光パネルを設置してEV搭載のバッテリーを家庭用、あるいはオフィス用電源などとして使用すると、発電した余剰電力をEVに貯めて、その電力を使うことで都市で消費する電力の大半を賄うことが出来る
・こうした状況を踏まえて、一般家庭や企業の工場などに太陽光パネルを無料で設置し、その余剰電力を電力会社に売電するサービスも誕生している

一方、現実には以下のような課題があります。
・太陽光パネルは巨大台風などによる暴風で吹き飛ばされ、凶器と化すリスクがある
・メガソーラーは環境破壊をもたらす
・EVに搭載するバッテリーの製造で多くの電力を消費するが、その電力源の多くは化石燃料による火力発電により供給されているので、かなり多くのCO2を排出するという指摘がある(こちらを参照)

では、太陽光パネルとEVをベースとした持続可能な“ソーラーEVシティ”を実現するための方策はあるのでしょうか。
その要件を以下にまとめてみました。
・環境に優しい太陽光パネルの設置だけで全国のほとんど全ての消費電力を賄える
・原料にレアメタルを使用せず、しかもエネルギー密度の高いバッテリーを開発する
・このバッテリーをEVのみならず、一般家庭やオフィスなどで余剰電力を貯めるためにも使用する
・こうした電力の需給バランスをコントロールするためのスマートグリッドを全国展開しる

では、こうした要件を満たすための技術の実現性はどうでしょうか。
その候補として以下の技術があげられます。
・超薄型の太陽電池(参照:アイデアよもやま話 No.5001 超薄型の太陽電池!
・充電不要のEV(参照:アイデアよもやま話 No.5043 新開発の太陽電池搭載で充電不要のEVが可能になる!?

なお、今回は太陽光パネルとバッテリーに焦点を当ててお伝えしてきましたが、この他にもCO2排出量削減に向けた研究開発が進められています。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.708 『基準年が異なる各国の温暖化ガス排出量の削減目標

 
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