2021年09月21日
アイデアよもやま話 No.5066 炎に反応して”消化するシート”!
5月24日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で炎に反応して”消化するシート”について取り上げていたのでご紹介します。 

ヤマトプロテック株式会社の中央研究所(茨城県河内町)である実験が行われていました。
鉄製の小屋の中には無数の白いシートが貼られており、ここに1リットルのガソリンをまいてガソリンに着火、激しく噴き出す炎、小屋から白い煙が立ち上ったかと思うと、炎はひとりでに消えました。
着火してから火が消えるまでたった約20秒、いったいこのシートはどういうものなのか、研究所の富山昇吾所長は次のようにおっしゃっています。
「世界初の技術でして、自ら消化するシートですね。」

このシートを使った実験映像では、火の着いたローソクに近づけると一瞬で火が消えました。
秘密は“温度”と“白い煙”にあるといいます。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「消化シートが炎を受けることによって300℃の段階で煙を発生して、その煙の中に消火剤が含まれておりまして、その炎を消してやるというメカニズムになっております。」

つまり、勢いよく噴き出す煙が消化剤なのです。
壁などに貼られたシートが温度の上昇を感知して、自動的に消火剤の煙を噴出してくれるため、人がいなくても初期消火が出来るのです。
実はこの壁や天井に貼る消化シートが開発されるきっかけになった火災がありまして。
それは2019年に起きた首里城(沖縄県)の火災、正殿を含め7棟が全焼しました。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「首里城で大規模な火災があって、これを用いていたら絶対に消せていたという自信がありましたので。」

もともとはスマートフォンなどリチウムイオン電池の火災に対応するために主にタブレット型として開発したこの消火剤ですが、文化財などの貴重な建造物を火災から守れるよう、壁や天井、柱などの建材にも貼れるシートにかたちを変えました。
現在、文化財を鑑賞する邪魔にならないよう、シートを透明にする研究も進んでいます。
更に煙を吸い込んでも害がないのです。
煙の近くで呼吸しても全く苦しくならないし、煙は無臭で目も沁みないといいます。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「煙そのものが安全性も非常に高いので、他のガス消火設備に比べて人がいるところでも作動しても全然問題がないというところが一つのメリットです。」

この大きなメリットを生かして病院や駅、学校、そして駐車場やエレベーターといった人が集まる様々な場所での活用が期待されています。
現在も研究が続けられていて、早ければ来年にも実用化されるということです。
富山所長は次のようにおっしゃっています
「街づくりのうえでも火災の拡大を抑制出来るところが一つの強みになるのではないかなと思います。」
「どこでもこのシートを使っていただけるようにして、火事を完全になくしていきたいと思います。」

このシートは薄くて紙のようだといいます。
火事が全くない世の中を目指すということですが、今後住宅火災から守るために壁紙として利用する研究も進んでいるということです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した“消化するシート”について、以下にまとめてみました。
(開発のきっかけ)
・2019年に起きた首里城(沖縄県)の大火災
(機能)
・壁などに貼られたシートが温度の上昇を感知して、自動的に消火剤の煙を噴出すること
(メリット)
・人がいなくても初期消火が出来ること
・文化財などの貴重な建造物を火災から守れること
・人が集まる様々な場所での活用が期待されること
・煙を吸い込んでも害がないこと
(今後の予定)
・文化財を鑑賞する邪魔にならないような透明なシートの研究開発
・住宅火災から守るために壁紙として利用する研究開発

この“消化するシート”は早ければ来年にも実用化される見込みといいますから、特に文化財などの貴重な建造物の関係者からの引き合いが大いに期待出来ます。
更に、ヤマトプロテックでは火事が全くない世の中を目指すといいますから、将来的には進化版の“消化するシート”を世界中に普及させることにより火災とはほとんど無縁の社会を実現してくれる可能性を秘めているのです。

ということで、火災予防の観点から見て“消化するシート”はとても画期的な発明と言えます。

 
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