2021年09月17日
アイデアよもやま話 No.5063 食材が固体から液体に変身!
5月17日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で食材の固体から液体への変身について取り上げていたのでご紹介します。 

カタクチイワシを入れたビニール袋をある装置に入れて、1日経つとドロドロの液体に、続いてザックリカットしたカボチャも液体カボチャに変わります。
この驚きの発明品の商品名はズバリ「まるごとエキス」です。

その仕組みについて、この商品を開発した株式会社東洋高圧(広島市)企画管理部の森川篤史さんは次のようにおっしゃっています。
「“超高圧力”を使って食材を液状に変化させることが出来ます。」

食材を液体にする超高圧のパワーとはどれほどのものなのか、かき氷の容器を使って実験してみると、とても小さくなりました。
超高圧という圧力ですが、地球上でもっとも深いと言われるマリアナ海溝の水深1万メートルの底と同じ圧力をわずか数分でかけることが出来ます。

この「まるごとエキス」、ただ食材を液体にするだけではないのです。
超高圧をかけると発酵と熟成が進んで、食材の旨味もアップするんです。
この技術を活用して高知県の食品製造会社、有限会社スタジオオカムラではバーニャカウダソースを作っています。
使っているのは、地元の特産品、キビナゴです。
スタジオオカムラの蔵田克己さんは次のようにおっしゃっています。
「キビナゴに含まれている成分を本当に余すことなく全て使います。」
「魚の旨味がでますので、味に深みがでる。」

超高圧によってキビナゴが熟成され、素材の旨味が詰まったソースになるといいます。
また、短期間で熟成することが出来るため、通常1年かかる醤油がたった1日で出来るのです。
しかも熟成期間が短いために腐敗を防ぐための塩を必要としません。
ですから塩分を8分の1に抑えた醤油が出来てしまうのです、
更に食品ロスを防ぐ超高圧技術はスゴイのです。
東洋高圧の森川さんは次のようにおっしゃっています。
「これはかたちが不揃いで市場に出回らないレモンになっております。」

かたちが悪く、店頭に出回らない食材も用途が広がります。
こちらの工場では、レモンに塩とこうじを加えた調味料「塩こうじレモン」を開発したり、規格外のニンニクもエキスにして健康補助食品に加工しています。
規格外のものを原料にしていることでコストを抑えられ、低価格で提供出来るといいます。

フードロスにも一役買っている「まるごとエキス」の超高圧、実は食材をドロドロにする以外の利用方法があります。
「まるごとエキス」にかけ、3日経過した生の鯛の切り身、圧力や時間を調整することで食材のかたちを保ったまま鮮度が変わらないほど新鮮です。
その理由は、超高圧の環境では細菌は生きることが出来ないからです。
つまり、超高圧にかければ、火を使わずに殺菌出来て、風味を損なうことなく鮮度を保つことが出来ます。
広島市の老舗日本料理店「喜多丘」でも「まるごとエキス」の殺菌技術を活用していました。
店主の北岡三千男さんは次のようにおっしゃっています。
「これにかけると3日から1週間はきちっともちます。」
「食品ロスが全くないです。」
「すごく僕は重宝してますね。」

今後、この超高圧技術「まるごとエキス」でそのままエキス化した食材は流動食であったり離乳食であったりといったものへの活用も期待されています。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した超高圧を利用した「まるごとエキス」の特徴を以下にまとめてみました。
・食材を固体から液状に変化させる
・発酵と熟成が進んで、食材の旨味もアップする
・短期間で熟成出来るため、通常1年かかる醤油がたった1日で出来、しかも腐敗を防ぐための塩を必要としない
・規格外で店頭に出回らない食材も用途が広がる
・規格外のものを原料にすることで低価格で提供出来る
・食品ロスを防ぐことが出来る(参照:No.4914 ちょっと一休み その767 『やはり無視出来ない食品ロス!』
・超高圧をかけることにより、火を使わずに殺菌出来て、風味を損なうことなく鮮度を保つことが出来る
・今後、この超高圧技術によりそのままエキス化した食材を流動食や離乳食として活用出来る

こうしてまとめてみると、「まるごとエキス」は私たちの食生活の幅を広げ、一方で食品ロスの削減に貢献出来ると大いに期待出来ます。
ですから、将来的に「まるごとエキス」が現在の電子レンジと同様の大きさ、および価格で市販化されれば、飲食店や一般家庭でとても重宝される存在になると思われます。

 
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