これまでEVについて何度となくお伝えしてきました。
そうした中、2月4日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で現実味を帯びてきたアップルカーについて取り上げていたのでご紹介します。
iPHoneで知られるアップルが2024年にも自社ブランドの電気自動車(EV)の生産を始めるとアメリカのCNBCが報じました。
報道によると、アップルはEVの生産に向けて韓国の現代自動車傘下の起亜自動車と提携することで合意に近づいているということです。
2024年にもアメリカ南部のジョージア州にある起亜自動車の工場で生産を始めると報じています。
最初のアップルカーは無人で走行出来る完全自動運転になる見通しで、乗客を運ぶロボタクシーや食品配達など、業務用途を想定している可能性があるということです。
アップルと起亜自動車は現時点で合意に達してはおらず、最終的にアップルが他社と提携する可能性があるともCNBCは指摘しています。
また韓国の東亜日報は、アップルが起亜自動車に約3760憶円規模の投資を行う予定で2024年までに年間10万台の生産体制を整える計画だと報じています。
アップルがどんなEVをつくるのか、デザインも性能も気になるところですが、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は次のようにおっしゃっています。
「(アップルカーは1社ではなく、その製造メーカーと組むというかたちですが、)今、そのパートナーとして起亜自動車が考えられているわけですが、ズバリこのiPHoneのいうところの鴻海(台湾)に当たるパートナーを探しているということだと思いますね。」
「iPHoneというのは、実際に作っているのはアップルではなくて鴻海が作っていて、アップルの役割はそのデザインとかブランディングの部分で、そこが非常に利幅が大きいわけですね。」
「それで大きな儲けを得ていると。」
「同じことをアップルカーで再現したくて、恐らくアップル時代はクルマのデザインや開発、ブランドの部分はやるけども実際に作るところの工場は持たないと。」
「で、そのパートナーとして今、起亜自動車を選ぼうとしているということだと思いますね。」
「(そうなった場合に、どうして組む相手が起亜自動車になりそうなのかという問いに対して、)いわゆる欧米ですとか日本のグローバルメーカーと言われているところは、まだこの自動車のところで主導権を取りたいわけですよね。」
「はっきり言ってしまうと、アップルが今探しているのは自分たちのやりたいように作ってくれっていう、言葉を選んで言えば下請けメーカーですので、当然そうはなりたくないと。」
「それに対して、起亜自動車を持っている現代グループはグローバルでは生き残れないかもしれなし、その中の起亜という1ブランドであれば、アップルと組ませてもしょうがないかなということを考えていて、そしてアップルの方は交渉力が強くなりますから、小さい相手ですと。」
「そう言ったことで、お互いが歩み寄っているという情況なんじゃないかなと思いますね。」
「(これから、こうしたIT企業と自動車メーカーの組み合わせは様々な選択肢が考えられて面白くなりそうだという指摘に対して、)そうですね。」
「既にアマゾンやマイクロソフトやグーグルといったところとホンダやフォルクスワーゲンやダイムラー、いろんなところが組み出していますから、こういった動きはもっともっと起きてくると思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
なお、2月8日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でも同様のテーマについて取り上げており、アップルによる自動運転車の開発を巡って、提携への交渉が行われているとされる韓国の現代自動車は2月8日、「アップルとの自動運転車の開発について協議を進めていない」と明らかにしたと報じています。
また3月25日(木)付けネット記事(こちらを参照)でも同様のテーマについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。
・2020年末から、米アップルが自動運転の電気自動車(EV)「Apple Car」を開発中だという報道が盛んになってきました。ウェイモや、米アマゾン・ドット・コムが買収したズークスも自動運転の電気自動車を開発しています。米国のプラットフォーマーが自動車の世界でも台頭する時代が来るのかもしれません。
・アップルは近年、パソコンやスマートフォンなど個人で使うデバイスから、テレビやスピーカーなど家族で使うデバイスへと守備範囲を広げていました。リビングの次に、動くリビングともいえる自動車をターゲットにするのは自然な流れです。
・アップルやグーグル(系列)の自動車が市場に与えるインパクトは相当なものになるでしょうね。両社の製品系列には、スマートフォンやスマートスピーカーなど、既にユーザーの日常生活の一部になったデバイスがあるからです。慣れ親しんだユーザー・インターフェース(UI)が自動車にも装備され、他のデバイスと連携するなら、他社製品にない価値を生みます。
・加えて、アップルにはブランドに対する信頼がある。何かいいもの、かっこいいものを作ってくるに違いないという信頼と期待を寄せる人が大勢います。同社の新製品は発表されるや、予約が殺到します。
・アップルが作る自動車なら当然、同社のOSを採用するはずで、OSのアップデートで車載システムを更新できるようになる。
・Apple Watchと自動車の連動にも期待できそうです。Apple Watchをスマートキーとして使えればセキュリティーはより堅固になるし、運転中もApple Watchで心拍数や血中酸素濃度をモニターして、ドライバーが眠そう、調子が悪そうといった兆候があれば自動車側から警報を発することもできる。
・懸念は、便利すぎて人をダメにするかもしれないということ。自動運転技術もどのレベルのものを搭載するのか不明ですし、車載インフォテインメント機器の詳細も分かりませんが、人が判断したり手を動かしたりする部分を適切に残しておいてほしいなと思います。先端技術は人をスポイルする(ダメにする)のではなく、人を進化させる方向で使ってほしい。
・製品にまつわる全てを自社のコントロール下に置くのが“Apple Way”。ブランドを守る意味でも、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から製品ライフサイクル全てに責任を持つという意味でも欠かせないことだとアップルは考えているはずです。
・新たな市場が立ち上がり、各社のプロダクトが出そろったときには、そこに足したくなるようなサービスや機能、付随する何らかの新しいニーズが必ず生まれます。そこに対応できるのは、後発のアドバンテージ。音声SNSの「Clubhouse」がユーザーを獲得できたのも、後発だからでしょう。TwitterやInstagramが普及し、さらにコロナ禍でオンライン会議システムを使う人が増えたなかで、揺り戻しのように、音声コミュニケーションというプリミティブなコミュニケーションに光が当たった。このタイミングの妙があって、スマッシュヒットするに至っているのです。
以上、ネット記事の一部をご紹介してきました。
また、6月11日(金)付けネット記事(こちらを参照)では以下のように報じています。
アップルは依然として、その自動車の計画について口を閉ざしている。Reuters(ロイター)が12月に発表した記事によると、アップルは2024年までに「画期的なバッテリー技術」と「自動運転技術」を備えた電気自動車を生産する意向だという。それ以外には、どのようなクルマになるのか、どこが製造するのか、といったことは誰にもわからない。しかし、アップルがハードウェアとソフトウェアの両方を開発するだろうということは想像に難くない。
また6月21日(月)付けネット記事(こちらを参照)でも同様のテーマについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。
・アップルカーとは単なるEV、単なる自動運転車ではなく、実際には次世代自動車の4つの潮流である「CASE」全体を推進するものであろう、ということです。すなわち、Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric。スマート化、自動運転、シェア化・サービス化、電動化です。
・そしておそらくは、単に「クルマ」を推進するものでもなく、次世代自動車産業におけるプラットフォームであり、エコシステム全体の覇権を奪おうとする戦いを、これからアップルは仕掛けてくるでしょう。
・これは、アップルがスマホの世界で実現してきたことでもあります。「ものづくり」に強いこだわりを持つアップルですが、デバイスを作るだけに終わらず、OS、アプリ、サービスといったエコシステム全体で勝負をしかけてくるのが常であり、スマホはその代表的な事例です。
・これに対し、NECや東芝、富士通、ソニーなど日本の携帯電話メーカーはデバイスメーカーとして戦いましたが、「iPhoneは競合ではない」と油断している間に、完全に市場を掌握されてしまいました。
・同じことが今、自動車業界に起ころうとしています。アップルが自動車業界をデジタル化し、破壊するということです。
「アップルカー」はおそらく3年以内にローンチされることでしょう。そのとき既存の自動車メーカーはどうするのか。日本の自動車メーカーに残されている道は多くはありません。ハードとしての車を作るだけのポジションに成り下がるのか。それともアップル同様にプラットフォームやエコシステムを支配するポジションをつかみ取るのか。
・強い危機感を持ったトヨタは明白に「OS、プラットフォーム、エコシステムを支配する」道を目指していますが、残念ながら、ハードとしての車を提供するだけのプレイヤーも続出するでしょう。その姿はハードとしてのスマホのみを供給するプレイヤーと重なります。
・以上を踏まえて、あらためて「アップルカー」の戦略に私が分析を加えるならば、次の6点にまとめることができます。
(1)単なる「EV」ではなく「EV×自動運転車」を目指す
(2)インダストリアルデザインの細部にまでこだわる
(3)「製品」のみならず「エコシステム」にこだわる
(4)「自分らしく生きる」ライフスタイルブランドとしての車
(5)気候変動対策
(6)ディーラーに代わる新たな販売網
・そもそも人間が快適な状態になるのに、デジタルなアプローチだけで全てを解決できるはずもない。自動車でいえば、走りそのものの快適性はハードの技術にかかっているでしょうし、シートの形状や材質などにも左右されます。フィジカルに作用する質感が高いモノを精細に作り上げることは、日本のものづくり企業が価値創造できるところで、データを握られてもその優位は損なわれません。
・当たり前の話ですが、プラットフォーマーになれなくても、活路はあるのです。
・ハードもソフトもサービスも、全ては人が幸せになるための手段です。どんなバリューを生み出したいのか、目的や価値を基軸に考えれば、どんな会社にもチャンスはあります。
以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。
アップルが3年後の2024年にも自社ブランドのEVの生産を始めるといいます。
しかも、最初のアップルカーは無人で走行出来る完全自動運転になる見通しといいます。
アップルが実際にどんなEV、自動運転車をつくるのか、デザインや性能、そして販売価格などが気になるところです。
なお、これまで何度となくお伝えしてきたように、今はDX(デジタルトランスフォーメーション)という大きな時代の流れの中で、あらゆる産業がデジタル化を軸とした業務プロセスの見直し、更にはビジネスモデルの再構築といった大変革を迫られているのです。
そして、この流れから取り残された企業はいずれ競争力を失ってしまう結末が待っているのです。
ですからこうした大変革を制する企業こそがこれからの時代を制すると言っても過言ではありません。
ここで注意すべきは以下の2点です。
・単なるデジタル化でDXに対応したと考えるような企業は淘汰されてしまうこと
・DXを進めるうえで、これまで企業価値を生み出してきたコンテンツを更に高めるためにDXを活用するというスタンスを失わないこと
(企業の既存のコンテンツ×DX ⇒ 大変革 ⇒ 企業競争力の強化 ⇒ 新たな成長)
こうしたDXの流れの中で、自動車業界はガソリン車からEV、あるいは自動運転車へのシフトを中心とした次世代自動車のキーワード、”CASE”に沿って、大変革に突き進みつつあります。(参照:アイデアよもやま話 No.4071 次世代自動車のキーワードは”CASE”!)
ですから、今やこの大変革をより早く達成するために、また生き残りをかけて、既存の自動車メーカーとIT企業は入り乱れて競争を繰り広げているというわけです。
なお、クルマの電動化に伴い、クルマの動力源はガソリンエンジンからモーターとバッテリーに代わるので、クルマ本体のパーツは半分程度まで削減されるといいます。
一方、電動化や自動運転化といった”CASE”への対応に伴い、これからのクルマ関連の技術はITへの依存がより一層高まるので、DXの主戦場はIT分野になります。
しかも、”CASE”の要件を満たすようなクルマは言わば”移動する生活空間”、すなわち個室であったり、リビングルームであったり、仕事部屋であったりするわけですから、プラットフォーマーと言われるアップルやグーグルといったようなIT企業が主導権を握り易いように思います。
また将来のクルマは”移動する生活空間”ということになると住宅や家具、あるいは家電などの業界にとっても将来のクルマは宇宙ほどではないにしても経済のニューフロンティアになり得ます。(参照:アイデアよもやま話 No.4993 今年は民間の宇宙利用元年!)
いずれにしても、未来のクルマは”移動する生活空間”として、私たち一人一人の暮らし、あるいはライフスタイルを大きく変える起爆剤になり得ると思うのです。
そして、2024年には登場するはずのアップルカーは「iPhone(アイフォーン)」と同様に熱烈な既存のアップルユーザーを中心に私たちにどのような衝撃をもたらすのか、とても楽しみです。
なお、アップルは2030年までのサプライチェーンのカーボンニュートラルにコミットしたといいます。
これにより、今後はアップルに部品を提供しているサプライチェーン全体をカーボンニュートラルにすることを目指すといいますから、地球温暖化対策の面でもアップルの取り組みは世界中の多くの企業に大きな影響をもたらすと見込まれます。
TrackBack (0)| by e-an
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています