2021年08月31日
アイデアよもやま話 No.5048 “デジタルの価値”を生む新技術「NFT」!
5月3日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“デジタルの価値”を生む新技術「NFT」について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

(19世紀 − 20世紀のノルウェー出身の画家、)ムンクの名画「叫び」は2012年のオークションで約96億円の価格で落札されました。
一方、この絵画に引けを取らない価格が付いているのがこちらのデジタルアートです。
コンピューターを使って制作されたもので、アーティストが十数年かけて毎日コツコツ描いた5000枚のスケッチを1枚の絵にまとめたというものです。
5000枚が入っていますからギュウっと密になっています。
この作品、デジタルデータですので、普通の絵画のように手で触ることは出来ないものです。
それにも係わらず、オークションに出されますと約75億円で落札されました。
この他にもツイッターのCEOのツイートが約3億円で落札されたり、アメリカのプロバスケットボール、NBAが発行するデジタルトレーディングカードに約2200万円の値段がついたりしています。
デジタルデータといいますのはコピーが簡単に出来ますので、今までは価値がつきにくいものでした。
それが「NFT」(Non-Fungible Token 替えがきかない印)という新たな技術によって莫大な富を生み出すものになりつつあります。

クリーク・アンド・リバー社のオフィス(東京都港区)に、ある変わった作品を手掛けるアーティストがいると聞き、番組キャスターが訪ねてみました。
ゴーグルを着けた女性が宙に描いていたのは“火の鳥”、キャラクターから背景まで立体で表現したVR(仮想現実)アートです。
VRアーティストとして5年以上活動しているせきぐちあいみさんは次のようにおっしゃっています。
「モニターとかテレビを通して見てもらうのとVRゴーグルを被って見てもらうのとでは全然違うので是非一度見て欲しいなと思います。」

番組キャスターが実際にこのVRゴーグルを被ってみると、せきぐちさんの描いたVRアートの中に入れて臨場感に浸ることが出来ました。

そんなせきぐちさんはある挑戦をして大きな収入を得ました。
せきぐちさんは次のようにおっしゃっています。
「こちらの作品をNFTアートというかたちにしてオークションに出して、約1300万円で落札いただきました。」

こちらが約1300万円の値が付いたVRアート、NFTと呼ばれるデジタル証明書を活用しています。
通常のデジタルデータはコピーを作ると、元のデータと見分けがつかなくなるため、全てのデータが同じ価値を持つことになります。
しかし、NFTを付けておけば、元のデータを特定出来るため、この世に一つしかない本物として希少価値が生まれることになります。
NFTの核となっているのがビットコインなどの暗号資産にも使われているブロックチェーンです。
複数のコンピューターでデータを管理し、情報を改ざんしにくくする技術です。
せきぐちさんは次のようにおっしゃっています。
「これが私がNFTアートを出品したサイトのページです。」
「イーサリアムという仮想通貨でやり取りしているんですけども、69イーサが日本円で(落札当時)約1300万円になります。」
「デジタルのデータってコピー出来るし、誰にでも簡単に送れちゃうし、ちょっとそこに価値が付きにくかったと思うんですね。」
「海外でいろんな(NFTの)高額な事例が出てきたので、もしかしたら今なのかもしれない(と始めました)。」

せきぐちさんは国内外のライブパフォーマンスで稼いできましたが、コロナ禍でそうした活動も困難になっていました。
そうした中、デジタルデータに価値が付くNFTに希望を見出しています。
「この値段ってNFTのバブルなんじゃないかとかも言われていたりして、これがバブルで一過性で終わるんじゃなくて、落ち着いてから私は徐々に根付いていって、みんなが活用するものになってくると思います。」

このNFTでスポーツの新たな楽しみ方を作り出そうという動きも出てきています。
VNA傘下のバスケットボール、川崎ブレイブサンダース、とどろきアリーナ(川崎市)で行われた先週の試合でスマホを使ったDeNAによる新しいサービスを試験的に始めました。
選手、一人一人がデジタルのカードになっていて、実際の試合で活躍しそうな選手を5枚選んでチームを組みます。
選んだ選手が3ポイントシュートを決めるなど活躍すると、リアルタイムでポイントが加算、このポイントを参加者が競うゲームです。
実は、このカード1枚一枚にNFTが付いていて、誰が持っていて、どの試合に使ったかなどが全て記録されます。
このNFTの特性を生かして、10月の本格稼働の際にはファン同士でカードを交換したり、金銭で売買したりといったトレーディングの機能の導入を目指しています。
DeNAがこうしたサービスを始める狙いについて、DeNA川崎ブレイブサンダースの藤掛直人さんは次のようにおっしゃっています。
「コロナもありまして、会場も入場制限や無観客というところが余儀なくされている状態ですので、リモート観戦で横に同じように熱狂しているお客さんがいない状態でも「この選手を僕は予想したよ」であるとか、オンラインでも他のファンの方同士で盛り上がっていただけるようなサービスに出来たらなと。」

NFTをスポーツ観戦やスマホゲームなど、より身近なものに応用することでNFTの可能性を広めたいといいます。
藤掛さんは次のようにおっしゃっています。
「小さなところから価値を積み上げていって、ファンの皆さんと一緒に価値を作り上げていって、そういったようなサービスに出来たらなと。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

デジタルデータは誰でもコピーが簡単に出来てしまいます。
そして、オリジナルもコピーも一見しただけでは識別出来ません。
こうしたことから今まではデジタルデータは価値がつきにくいというのが常識でした。
しかし、NFTと呼ばれるデジタル証明書を付けておけば、オリジナルデータを特定出来るため、この世に一つしかない本物として希少価値が生まれることになります。
こうしたことからNFTという新たな技術によって莫大な富を生み出すものになりつつあるというのです。

番組ではNFTをスポーツ観戦やスマホゲームなど、より身近なものに応用することでNFTの可能性を広めたいといいますが、今後NFTを活用した、いろいろと試行錯誤のサービスが登場してくると思います。
その一環として、デジタル書籍やデジタルミュージック、あるいはデジタルミュージックビデオなどにNFTを導入してもいいのではないでしょうか。

しかしNFTには以下のリスクがあります。
・NFTの付いたオリジナルデータがなんらかの原因で破損して読み取れなくなってしまったり、削除されてしまう可能性があること
・NFTの核となっているのがビットコインなどの暗号資産にも使われているブロックチェーンですが、暗号資産の価値は変動が激しいこと

これらのリスクをクリアしておかないと将来的にNFTの仕組みは大きな問題に直面してしまう可能性があります。

いずれにしてもNFTはデジタルデータに新たな価値をもたらす、あるいはデジタル関連サービスにおいて新たなサービスを生み出す画期的な技術と言えます。

 
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