2021年08月25日
アイデアよもやま話 No.5043 新開発の太陽電池搭載で充電不要のEVが可能になる!?
4月28日(水)付けネット記事(こちらを参照)で充電不要のEVが可能になる新開発の太陽電池について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・東芝はカーボンニュートラルで大きな勝機を狙い、独自の太陽電池の開発を進めている。それが、透過型亜酸化銅(Cu2O)と従来の結晶シリコン型太陽電池を組み合わせた「タンデム型太陽電池」。フィルム型の「ペロブスカイト太陽電池」と並んで、同社がカーボンニュートラルでの商機に勝負をかける太陽電池だ。
・Cu2Oタンデム型太陽電池は30%以上の変換効率を視野に入れる。電気自動車(EV)の屋根部などに設置して「充電しなくても走れるEVの実現を目指す」(同社研究開発センター ナノ材料・フロンティア研究所 トランスデューサ技術ラボラトリーの山本和重氏)とする。
・実用化目標は2025年。カーボンニュートラル市場拡大の波にうまく乗れば、イノベーション(技術革新)を起こす可能性を秘めると期待する。
・異なる性質のセルを組み合わせるタンデム型太陽電池は、面積を増やさず太陽電池の高出力化を図る手法だ。太陽光が直接入射する上層側トップセルと、下層側のボトムセルから成る。透明なトップセルとボトムセルで、幅広い波長の太陽光を吸収して二重に発電し、高効率な太陽電池を実現する。
・東芝は2019年6月18日、トップセルに亜酸化銅(Cu2O)など、ボトムセルに結晶Siを用いたタンデム型太陽電池で変換効率23.8%を確認した。
・同社はタンデム型太陽電池を開発する際、ボトムセルとして結晶シリコン太陽電池を選択した。「長波長光で効率的に発電でき、価格がこなれており、技術面での蓄積があったからだ」(同社研究開発センターの山本氏)。さらに開発品のCu2Oは、結晶シリコン太陽電池を補完するのにうってつけだった。
・東芝は1月21日、亜酸化銅(Cu2O)を用いた太陽電池セル(発電素子)の透明化に成功したと発表した。主成分である銅(Cu)と酸素(O)は豊富に存在し、資源供給面で安定している上に安価。ワット単価(発電量1W当たりの製造コスト)は結晶シリコン太陽電池より低い価格を達成し得る。
・同社はトップセルとボトムセルの間の空気層を排除して、光学反射を低減する密着フィルムを挿入。透過型Cu2O太陽電池のトップセルによる発電を世界で初めて確認。併せて、トップセルを透過した太陽光による結晶シリコン太陽電池のボトムセルの発電も確認した。変換効率は26.1%。公表されているガリウムヒ素と結晶シリコン太陽電池を組み合わせたタンデム型太陽電池の32.8%には及ばない。しかし、「目標は変換効率30%。36%以上の効率も実現可能だ」と山本氏は自信をのぞかせる。

・変換効率30%を目標とするのには、EV搭載の可能性という理由もある。「太陽電池によるEVのセルフ充電走行を可能にする電費(電気自動車の燃費)の目安が1kWの発電。変換効率30%なら可能性がある」(山本氏)。これを実現できれば、EV普及の最大のネックとされる充電の手間を省き、充電なしでEVを利用できるようになるのも夢ではない。
・現在、トップセルの光学設計の適正化を進め、ボトムセルの変換効率の向上を図っている。山本氏は、「当社独自のタンデム型太陽電池で、電動モビリティーの新市場を確立し、脱炭素化の促進に貢献したい」と意気込む。
・政府のカーボンニュートラル宣言で、にわかに注目度が高まっている再生可能エネルギー。タンデム型太陽電池は、冒頭で述べたように同社が開発を進めるペロブスカイト太陽電池と並ぶ期待の技術だ。25年までに安価で高効率の太陽電池は果たして実用化できるのか。今後の開発の進捗に期待したい。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

私は技術的にはよく理解できないので、細かい技術的な内容には触れませんが、東芝が開発を進めている「タンデム型太陽電池」の持つ太陽光発電としての可能性にとても惹かれました。
というのは、「タンデム型太陽電池」をEVの屋根部などに設置して「充電しなくても走れるEVの実現を目指す」としているからです。
ただ、この技術の実用性について、気になるところが2つあります。
1つ目は、「太陽電池によるEVのセルフ充電走行を可能にする電費(搭載するバッテリーの単位容量(1kwh)あたりの走行距離)の目安が1kWの発電」と伝えているところです。
日産「リーフ」の最新モデルに乗り始めてからほぼ1年経ちますが、私の経験値では1kwh当たりの走行距離、すなわち電費はざっと6kmほどです。
ですから、もしバッテリーを搭載せずにこのEVを時速60kmで走行させようとしたら、10kwほどの発電出力が必要となります。
2つ目は、太陽電池にはよく言われているように発電量が天候に左右されるのと、夜間は全く発電されないということです。

では、実際にこの1時間当たり1kWhの電力を得られるこの太陽電池を搭載したEVの利用方法ですが、360kmほどの長距離ドライブを想定すれば、搭載する60kwhほどの容量を持つバッテリーを事前にフル充電しておけば安心して走行出来ます。
要するに、これからドライブに出かけるという時には、あらかじめ搭載するバッテリーをフル充電しておき、太陽電池での発電量はあくまでもいざという時の予備として考えるということです。

さて、この搭載するバッテリーについてですが、先日、リチウムイオン電池を構造材料と一体化させて、電池としての体積や重量を大幅に低減する技術「構造体電池」についてお伝えしましたが(参照:アイデアよもやま話 No.5035 EVやスマホから電池パックが消える!?)、このバッテリーと今回ご紹介した「タンデム型太陽電池」とを組み合わせたEVが誕生すれば、これまで語られたことのない画期的な、そして理想的なEVとなり得ます。
ということで、是非、こうしたEVの研究・開発には国がヒト・モノ・カネの面で積極的に支援していただきたいと思います。

なお、今回ご紹介した記事は「タンデム型太陽電池」のEVへの適用という側面から取り上げていましたが、一般家庭やオフィスビルなどあらゆる建物施設に適用出来ます。
ですから、その上で、これらの余剰電力をスマートグリッドで融通し合えば、間違いなく火力発電や原発など従来の電力供給源からの脱却が可能になるはずです。
ですから、「タンデム型太陽電池」と「構造体電池」という2つの技術の組み合わせでエネルギーにおける“持続可能な社会”が実現出来る可能性が出てきたのです。

ただし、残された課題もあります。
それは、こうした製品の生産過程、およびこれらの製品をリサイクル、あるいは廃棄処分する場合にもCO2排出量ゼロを実現させることです。

ということで、今回お伝えした技術が実用化されれば、国内外を問わず、明るい未来に期待が持てるようになるはずです。
また、この技術の世界規模での水平展開により、コロナ禍で経済的なダメージを受けた世界各国は等しく特大の特需で一気に盛り返すことが可能になるのです。
更に、こうした過程において、日本が温室効果ガスの排出権取引きに加わると、日本企業は年間に2兆6000億円ものお金を排出権を買うために払わなきゃいけないという状況は一転して、日本は何兆円もの利益を得ることが出来ると見込まれるようになるのです。(参照:アイデアよもやま話 No.4997 温室効果ガスの排出権取引きが過熱!
ですから、「タンデム型太陽電池」と「構造体電池」という2つの技術の組み合わせは奇跡的な出会いと言えます。

さて、ここで思い出されるのは、以前ご紹介した水素発電(参照:アイデアよもやま話 No.4991 CO2ゼロ水素発電所が今年度内に国内初の商業運転を開始!)です。
こちらの技術もあなどれません。
ですから、エネルギーに関わるこの2つの大きな流れは近い将来開花し、お互いに住み分けての普及ということになると見込まれます。
しかし、主流になるのはタンデム型太陽電池」と「構造体電池」の組み合わせであると私は思います。
なぜかと言えば、こちらの技術の方が国内外を問わず世界展開し易いと思うからです。

 
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