2021年08月20日
アイデアよもやま話 No.5039 ホンダが2040年までに全てEVとFCVにシフト!
4月23日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でホンダが2040年までに全てEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)にシフトすると決断したことについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

独創性のあるクルマづくりで知られる自動車大手、ホンダ(本田技研工業株式会社)ですが、脱炭素化への対応が急速に迫られる中、今月新たにトップに就任した三部敏宏新社長が4月23日に会見を開き、宇宙事業への参入を明らかにしました。
会見後のテレビ東京の単独インタビューでは小型の単独ロケットの開発構想を語るなど、新生ホンダの意外な一面が見えてきました。

4月22日、日本政府が打ち上げた2030年度に温室効果ガスを46%減らす目標、従来の26%から7割引以上引き上げる野心的な数字です。(2013年度比)
それに呼応するかのように動いたのが4月23日に会見を開いた自動車大手ホンダの三部社長は次のようにおっしゃっています。
「先進国全体でEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)の販売比率を2030年に30%、2035年には80%、そして2040年にはグローバル(世界)で100%を目指します。」

ホンダは環境対策の一環として2040年までに北米や日本など全世界での新車販売をEVとFCVのいわゆる脱炭素カーにすると発表、強みを持つガソリン車やハイブリッド車を段階的に縮小し、5兆円の研究開発費を投じて脱炭素へシフトチェンジします。
更に次のようにおっしゃっています。
「次の夢として、モビリティを3次元・4次元に拡大していくべく、空、海洋、宇宙、そしてロボットなどの研究を進めていきます。」

その狙いについて、テレビ東京の単独インタビューで三部社長は次のようにおっしゃっています。
「今日、ロケットの映像が出てきましたけれども、それも将来の一つのモビリティに過ぎないということで、将来そういう可能性は十分あるので、研究は数年前から始めているということで、・・・」
「(アメリカなどは民間の企業が進出して、テスラのイーロン・マスクさんですとか、そういったところは意識されているのかという問いに対して、)少し意識していますけども、我々は大きなおロケットを造ろうとかそういうことでもなくて、ホンダは小さい方(ロケット)から段々上がっていくという、しかも自動車技術が持っているコスト低減技術は優れたものがありまして、小さな衛星を打ち上げるロケットも自動車会社の知見を入れるとかなりコストも下がるんじゃないかと。」

衛星などを積める小型の“ホンダロケット”の開発を進めていくと明かしました。
ホンダは脱炭素では後れを取ってきました。
昨年、量産型EV「ホンダe」を初めて投入しましたが、目標販売台数は年間1000台と控えめ、FCVも2016年以降、新型車を投入出来ていません。
そんな中で打ち出した“脱炭素カー”宣言、実現出来るのでしょうか。
三部社長は次のようにおっしゃっています。
「非常に厳しく高い目標であることは十分認識してるんですけども、やっぱりそういうところも「やるんだ」とまず決めて、それを達成するためにどうすればいいのか、既存事業の延長線上には多分そういう未来はないので・・・」

クルマの生産に関し、“自前主義”を貫いてきたホンダ、そんな中、昨年アメリカのGMとの提携を強く推し進めたのが専務時代の三部社長、“開国派”として知られています。
「IT企業が持つクルマとの相性の良い技術は合わせることによって顧客価値を上げられると思っていますので、価値が上がるんであれば躊躇なく組むこともあると思います。」

急速な電動化やITの流れに立ち向かうホンダ、ホンダらしい独創性とタブーなき連携が生き残りのカギと見ています。
「(例えば日産と手を組むことなどは考えているかという問いに対して、)実際にそんなことがあるかというと、中々難しいと思いますけども、ただ当然日産さんだけじゃなくていろんな自動車OEMと常に話はしていて、ホンダにとってメリットがあれば日産さんに限らずいろいろな会社と今後も話はしていきたいと考えています。」

いろんな話を伺ったのですが、「今、自動車産業は戦国時代の様相を呈しているが、私はそういうのに慣れているので、その中で答えを見つけていきたい」とお話しされていました。

なお、こうしたホンダの最近の動きについて、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「(ホンダは)エンジンにこだわっている会社だったから驚きましたけど、ただホンダらしいと思いました。」
「他の企業が出来ないことを真っ先にチャレンジするっていうのがホンダですから。」
「今、気候変動の問題が浮上していますけど、こういう時こそホンダの創業者である、本田宗一郎氏がかつて成し遂げた偉業を思い出すべきだと思うんですね。」
「50年前ですけども、本当に達成困難だっていう排ガス規制(1970年発効の「マスキー法」)をアメリカがやったんですよ。」
「その時に真っ先にこれをクリアして成功させて、それが「シビック」が世界的なヒットになった原動力になったんですが、その時に本田宗一郎氏が社内のエンジニアに向けて「後発のホンダにとってこれは絶好のチャンスだ」と鼓舞したんですね。」
「(今、こういった削減にはやはりコストアップにつながるですとか、企業の中には苦しい声もありますが、)宗一郎氏が今生きていたら間違いなく「今はチャンスだ、ピンチじゃない」と言ったと思いますよ。」

三部社長も「ホンダはチャレンジし続ける会社だ」と力強くおっしゃっていました。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して4月23日にホンダの三部社長がおっしゃったこと、および想いを以下にまとめてみました。
・ホンダは環境対策の一環として2040年までに全世界での新車販売をEVとFCVのいわゆる脱炭素カーにすると発表した。
・“脱炭素カー”宣言について、三部社長は「非常に厳しく高い目標であると十分認識しているが、「やるんだ」とまず決めて、それを達成するためにどうすればいいのか、既存事業の延長線上には多分そういう未来はない」とおっしゃっている。
・また、次の夢として、モビリティを3次元・4次元に拡大して研究を進めていくとしている。
・そして、小型の単独ロケットの開発構想を語るなど宇宙事業への参入を明らかにした。
・ホンダらしい独創性とタブーなき他社との連携が生き残りのカギとしている。
・そして、三部社長は「ホンダはチャレンジし続ける会社だ」と力強くおっしゃっている。

ということで、解説キャスターの山川さんも指摘されているように、エンジンにこだわっているホンダが他社に先駆けて2040年までに“脱炭素カー”を実現すると宣言したことはまさに創業者である本田宗一郎さんにより自ら示されたチャレンジ精神が今も引き継がれていることを示しています。

さて、ネット時代の申し子とも言えるGAGA(参照:No.4812 ちょっと一休み その749 『アメリカの巨大IT企業の躍進に見る日本企業の弱点とは!』)はネット時代以前に比べてとてつもないスピードで急成長を遂げ、今や世界中の名だたる企業を抑えて株価の時価総額でも世界のトップテン入りを果たしています。(参照:No.4968 ちょっと一休み その776 『世界の株の時価総額ランキング』
その背景にはIT革命、あるいはネット革命があります。
そして、この流れは今も続いており、AI革命、あるいはロボット革命といったように広い意味でデジタル革命はこれからも続いていくものと思われます。
そうした中、こうした流れの重要性をいち早く察知して卓越した方法で取り組んだ企業が企業規模に関係なく、次の時代をリードしていくというのがこれまでも、そして今後とも繰り返されているのです。
また、歴史的に見て、過去の成功体験が大きければ大きいほど、次の時代に乗り遅れてしまい、衰退の一途をたどるリスクが大きくなるのです。
そうした中、ホンダの創業時代から引き継がれているチャレンジ精神の組織風土は大きな強みと言えます。
ですから、かつて世界的なヒットになった「シビック」のようにどんなEVが今後ホンダから発売されるのか楽しみです。
ちなみに、2020年に発売されたホンダ初のEV、「ホンダe」ですが、その展示されていたスタイルはとても愛らしく見ました。
なお、その評価についてはこちらを参照下さい。

 
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