2021年08月14日
プロジェクト管理と日常生活 No.706 『コロナで感じる政府の驚くべき対応』
まず7月31日(土)付け読売新聞一面の「編集手帳」で新型コロナウイルスの感染の症状のレベルについての記述があったのでそのエッセンスをご紹介します。 

以下はコロナの症状をめぐって米ジョージタウン大学の医師・安川康介さんのSNSでの指摘です。

症状レベル 一般人のイメージ  医師の認識                     
軽症    全然平気・風邪程度 酸素は要らない
中等症   息苦しさは出そう  肺炎が広がり、多くの人にとって人生で一番苦しい
重症    入院は必要       助からないかも

以上、新聞記事の内容の一部の要約をご紹介してきました。

いかがでしょうか。
私の理解レベルもまさに上記の一般人のイメージの通りでしたので、コロナの症状レベルについての認識を新たにしました。

こうした中、8月2日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で 政府による入院基準の引き上げについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

医療体制がひっ迫している現状を受けて、政府は今日、患者が急増している地域では入院基準を引き上げる方針を示しました。
これまでは原則入院としていた呼吸困難や肺炎の症状が見られる中等症の患者について重症化するリスクが低いと判断されれば自宅療養となります。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

また、8月3日(火)付けネット記事(こちらを参照)でも同様のテーマを取り上げていたのでその一部をご紹介します。

新型コロナウイルスの入院対象者を重症者らに絞り込むとした政府方針に対し、与党や自治体から注文が相次いだ。与党は政府方針について「中等症以下の『切り捨て』と受け取られかねない」と警戒。公明党の山口那津男代表は3日、菅義偉首相と首相官邸で会談し「中等症の方々にも丁寧に医療的ケアが受けられる対応をお願いしたい」と要望した。

全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は田村憲久厚生労働相とオンラインで会談した。飯泉氏が「中等症で入院対象から外れる場合の客観的な基準を示してほしい」と求めると、田村氏は「医師の判断で必要なら入院させて問題ない」と答えたという。

以上、記事の一部をご紹介してきました。

なお、8月4日(水)付けネット記事(こちらを参照)では以下のように報じています。

新型コロナウイルスの感染者が急増する地域で入院を制限する政府の新方針をめぐり、自民党内からも撤回要求の意見が出ていることについて、菅義偉首相は4日、首相官邸で記者団に「今回の措置は必要な医療を受けられるようにするためで、理解してもらいたい」と述べ、撤回しない考えを示した。

政府が示した新方針では、感染急増地域での入院を重症患者や重症化リスクの高い患者に限定。リスクが低い中等症と軽症の患者は、原則自宅療養とするよう都道府県に求めている。これに対し、自民党が4日に開いたコロナ対策を議論する合同会議で異論が噴出。患者の健康管理や隔離が難しいなどとして、政府に撤回を求める声が上がった。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

本来であれば、変異ウイルスの感染拡大による医療崩壊を見越して、政府が真剣に早期にワクチンの入手、あるいは医療施設の拡充に取り組んでくるべきだったのですが、そうした取り組みが不十分であったため、後手後手の対応となり、先ほどの菅総理の発言に至ったと思われます。

更に8月4日(水)付けネット記事(こちらを参照)では以下のように報じています。

政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は4日の衆院厚生労働委員会で、政府の入院制限方針に関し、事前に「相談はなかった」と明らかにした。田村憲久厚労相は政府の独自判断で問題はなかったとの認識を示した。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

そして、8月5日(木)付けネット記事(こちらを参照)では以下のように報じています。

政府は5日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、感染者が急増している地域の新たな療養方針について、「中等症患者は原則として入院」とする考え方を明示した。対策本部では、「まん延防止等重点措置」の適用地域に福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の8県を追加する方針も正式決定した。期間は、8日から今月31日まで。

菅首相は対策本部で、感染急増地域の療養方針に関し、入院対象として、重症者のほか、「中等症で酸素投与の必要な方、投与が必要でなくても重症化のリスクのある方は入院していただく」と明言した。

政府が2日に発表した当初方針は、入院は重症患者や重症化の恐れが強い人らに限定しており、中等症患者の入院基準が曖昧だとして与党や自治体から説明を求める声が相次いだ。これを踏まえ、政府は説明を修正し、比較的症状の重い中等症に加え、軽い中等症でも医師の判断次第で入院させることを明確にした。

入院患者以外は「自宅療養を基本」とし、家庭内感染の恐れなどがある場合は宿泊療養を活用する。実際の対応は「自治体の判断」とし、全国一律ではないことも強調した。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

感染者の治療、そしてその家族の方々に大きな影響をもたらすような重要な国の方針変更に対して、事前に尾身会長に相談がなく、田村労相は、政府の独自判断で問題はなかったとの認識を示したということにはあらためて政府のコロナ禍対応における認識の甘さを感じます。

さて、冒頭の新型コロナウイルス感染の中等症の症状レベルは医師の認識では「肺炎が広がり、多くの人にとって人生で一番苦しい」なのです。
ところが、徳島県知事の「中等症で入院対象から外れる場合の客観的な基準を示してほしい」との求めに対して、田村労働相は「医師の判断で必要なら入院させて問題ない」と答えたというのです。
ですから、現場の医師の判断はほとんど「入院させる」ということになると思われます。
あるいは病床のひっ迫状況から本来入院が必要な感染者を自宅療養と判断してしまう可能性も出てきます。
更に変異ウイルスの感染拡大に伴い医療施設の病床数がひっ迫する中、自宅療養中の患者の様態が急変した場合の患者の受け入れ先の医療施設の確保の問題も浮上してきます。

こうしたことから、政府による今回の「患者が急増している地域では入院基準を引き上げる」という方針は、実際には以前から専門家により心配されていた「医療崩壊」が現実のものに近づきつつある状況において、政府は本質的な対策を講じることが出来ず、“責任逃れ”で現場の医師の判断に任せるという方針を示したと国民に判断されても仕方ありません。

菅政権はコロナ禍に対して一生懸命に取り組まれているとは思いますが、これまで何度となくお伝えしてきたように、どうも今のコロナ禍は“平時”ではなく国家レベルの“非常事態”であるという認識が政府には足りないと思います。
“非常事態”においては“平時”とは全く異なる思考パターンが要求されるのです。
例えば、いざどこかの国と戦争に突入した際、平時と同様に時間をかけて国会の場であれこれ審議していてはまともに戦争に取り組むことは出来ません。
コロナ禍の現状はまさにこれに近い状態で、変異ウイルスと人類との闘いだと思うのです。
ですから、コロナ禍の収束に向けて、スピーディにあらゆる方策を検討し、最善の方策を実施することが求められているのです。
“非常事態”においては特にスピーディに、タイムリーに、そしてリスクを恐れないチャレンジ精神と決断がとても重要なのです。
ちなみに、戦後のジャーナリズムに大きな足跡を残した評論家の立花隆さんも失敗を恐れないチャレンジ精神の必要性を唱えております。(参照:No.5022 ちょっと一休み その785 『立花隆さんによる今も未解決の問題提起!』
まさに国の指導者、すなわち総理大臣がその能力を最大限に発揮すべきはこうした“非常事態”を迎えた時なのです。

ところが、今回の緊急事態宣言ではこれまでと特別異なる、国民が納得出来るような具体的な対策はなく、こうした状態が8月末まで続けば、医療崩壊が現実のものとなりかねません。
同様に更に多くの飲食店などが倒産の危機にさらされます。

ということで、政府には、コロナ禍の過去最大の感染拡大が続く状況は日本国家の“非常事態”であるという認識を強く持っていただいて、“ロックダウン(都市封鎖)”なども視野に入れて有効な対策の検討をしていただきたいと思います。
菅総理は「ロックダウンは日本にはそぐわない」というような発言をされておりましたが、ならば「ロックダウンと同等かそれ以上のコロナ禍対応策」をなんとかひねり出して実行に移していただきたいと強く願います。

なお、憲法や法律を守ることは法治国家においてとても重要です。
しかし、その憲法が大きなハードルとなって国民の健康が大きく損なわれ、経済が崩壊してしまっては“本末転倒”です。
本来、憲法は国の存続が危うくなった場合でも存続の道を切り開くことが出来るような枠組みでなければならないと思うのです。
ただ、平和憲法を唱えていさえすれば、平和は守れるという考えは甘いと言わざるを得ません。
同様にコロナ禍のような国家レベルの危機において、国として最善の対応策をタイムリーに取ることを阻害するような憲法は改正すべきなのです。
要するに、戦争も今回のようなコロナ禍も同様に国の“非常事態”なのです。
ですから、“時限立法”でもなんでも国の危機を救えるのであれば、一国の指導者は自らの責任において、有効な手立てを考えてより早期の回復への道を切り開くことが求められるのです。
今の日本はまさにそうした瀬戸際に立たされていると思うのです。

 
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