2021年07月17日
プロジェクト管理と日常生活 No.702 『中国リスクとの日本企業の向き合い方』
3月25日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国リスクとの日本企業の向き合い方について取り上げていたのでご紹介します。

中国政府による新疆ウイグル自治区の人権弾圧の問題が企業活動にも影響を与えています。
ファイスブックの発表によりますと、中国のハッカー集団はフェイスブックのプラットフォームを悪用して新疆ウイグル自治区出身の活動家やジャーナリストの行動を監視したり、追跡したりしていたということです。
こうしたスパイ活動を封じるためにファイスブックは中国のハッカー集団のアカウントを削除した他、監視対象になった利用者に対し、注意を喚起したと説明しています。

一方、新疆ウイグル自治区で生産された綿花の調達を止めたスウェーデンのアパレル大手、H&Mに対する不買運動の動きが中国で広がっています。
中国メディアによりますと、主要なネット通販サイトはH&Mの商品の検索を停止したということです。
不買運動について、中国商務省の報道官は「消費者が実際の行動で反応した」と述べ、理解を示しました。
こうした状況について、番組コメンテーターで株式会社日本供創プラットフォーム(JPiX)の社長、冨山和彦さんは次のようにおっしゃっています。
「(不買運動のような経済的な報復やネット上でのスパイ活動といった中国リスクがある中。中国とビジネスをしている日本企業はこうした中国リスクにどのように対処していけばいいかという問いに対して、)キーワードはデカップリングと二重化ということになると思います。」
「経済圏が中国を中心とする領域と西側諸国に分かれちゃっていると、まさにこれはデカップリングなんですが、特に人権とか個人情報とか、あるいは安全保障など神経質に分かれていきます。」
「なんですが、日本の企業や経済にとってはどっちも大切なお客さんなんですね。」
「だからとにかくうまくやっていかなきゃいけないんですよ。」
「(そのポイントはあるのかという問いに対して、)恐らくいろんな機能、例えば情報管理であったり、生産であったり、研究開発であったり、必要に応じて分けて、ある種のウォール(壁)をつくって、2重につくっていくということがどうしても必要になってきます。」
「だから最近起きたラインの問題なんかまさにこれですよね。」
「個人情報を完全に国ごとに分けなさいということなので。」
「(ただ二重化をしていくと相当なコストがかさみますが、)かなり政治的に構造的な問題なので、こういう世界で生きていくしかないとすれば、必要なコストですね。」
「必要なコストを払ったうえでなおかつこれを回収出来るような高い価値のビジネスをやっていくということしかないんでしょうね、長期的には。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまで中国共産党の“まず中国共産党ありき”を大前提としたあらゆる政策、その結果である国際的なルールの無視、国内外における人権無視、そして中国共産党に不利益をもたらすと考える国や企業への経済的な圧力、更には世界的な覇権主義の展開など、民主主義陣営国からみたら全く価値観を共有出来ないような行動について何度となくお伝えしてきました。
しかし、一方で中国には膨大な需要があることから先進国からの企業進出、あるいはコストの安さから海外企業から部品や完成品の製造を委託されるなど、日本も含め海外企業の多くは中国に依存してきました。

また、中国政府は7月6日、アメリカなど国外で上場する中国企業への規制を強める方針を打ち出しました。(こちらを参照)
このように最近の中国は中国の国内企業でさえある日突然大きな影響を受けてしまうような規制を始めています。
その背景について、将来、中国共産党を脅かす存在になると思われる企業についてそのパワーをそぎ落とすこと、あるいは中国国内で収集されたデータが米国側に渡ることへの警戒感があると専門家は指摘しています。
ちなみに、一説ではこうした背景にはこれらの企業は習近平国家主席の政敵である江沢民派の牙城なので、こうした企業に対していろいろな理由を口実に罰金を課し、江沢民派を弱体化させることを意図してのことであると言われています。
このような見方からすると、今後ともいろいろな理由を並べ立てて同様の事件が発生する恐れがあるのです。
こうした規制は、これらの企業に投資している海外投資機関にとっても大きなリスクとなります。
例えば、中国企業に投資している日本のSBG(ソフトバンクグループ)の株価もこの影響で大きく株価を下げました。
要するに、どんな時でも“まず中国共産党ありき”の中語政府はその時々で規制を強化するのです。

一方で、先ほどもお伝えしたように中国には膨大な需要がありますから、海外企業にとっては魅力があります。
ですから、中国リスクは承知のうえで何とか今後とも中国でのビジネスを継続したいというのは中国への進出企業の本音だと思います。
そして、その際のリスク対応策として冨山さんは以下の項目を上げております。
・経済圏が中国を中心とする領域と西側諸国に分かれていることを大前提でリスク対応策を検討すること
・人権や個人情報、あるいは安全保障、そして企業の機密情報については必要に応じて分けて2重に管理すること
・こうしたコストを払ったうえでなおかつこれを回収出来るような高い価値のビジネスモデルを構築すること

いずれにしても習近平国家主席は今のところ、自由や人権の尊重といった国際ルールに従う意思は全くなさそうですし、覇権主義を軌道修正するような動きも全くありません。
また、こうした中国共産党の意志に反する国や企業、個人に対しては個別撃破をしてきます。
こうした中国の一連の取り組みを世界各国が許し続けるといずれ世界中が“まず中国共産党ありき”の世界に引きずり込まれてしまいます。

ということで、今回は今の中国と係わりのある企業のリスク対応策についてご紹介しましたが、民主主義陣営の国々も同様に中国との付き合い方におけるリスク対応策が求められるのです。
そして民主主義陣営のリーダー国、アメリカは本気でこうした中国の動きの阻止に向けて動き出しているのです。
こうした米中の覇権争いの行きつく先で連想されるのは太平洋戦争前の日米の関係です。

今、世界はSDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)というキーワードを旗印に、CO2排出量の削減、すなわち持続可能な社会の実現に取り組んでいますが、米中の覇権争いをきっかけとした第三次世界大戦に突き進むリスクも無視出来ないのです。
ですから、何とか自由主義陣営の国々を中心としたより多くの国々が中国に国際ルールを守るように軌道修正させることが今とても重要なのです。
今の流れがある程度まで進んでしまうと取り返しがつかなくなってしまうのです。

ということで、地球温暖化の進行と中国の覇権主義の世界展開は人類共通の2大リスクであるという認識のもとに適切な対応策が求められているのです。
そして、平和憲法を掲げる世界ナンバー3の国、そして中国と経済的にも深い関係のある国、日本こそ、中国の覇権主義を阻止するための平和的な解決を図るために使命感を持って取り組むことが求められるのです。

 
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