2021年06月19日
プロジェクト管理と日常生活 No.698 『バイデン政権の意図!』
2月25日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でバイデン政権の意図について取り上げていたのでご紹介します。 

アメリカのバイデン大統領は、半導体、レアアースなどのサプライチェーンの見直しを指示する大統領令に署名したということです。
これは中国への依存度を引き下げるのが狙いだということで、かなり引き締めてきた感じですが、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「そこで整理するためにキーワードを紹介したいんですけども、“Small yard,high fence”という小さな庭と高い壁の政策で、何を意味しているかというと、トランプ政権の時は米中の分断政策を取ろうとしてたんですけども、そういう大上段に振りかぶったことは言わないと。」
「自分の国益、縄張りをはっきりさせて、その内側についてはしっかり守るという政策を打ち出しているんだと思います、」
「(では今回の半導体とかレアアースといったものは“庭の中”ということなのかという問いに対して、)レアアースについては、中国側が米軍関連への供給の制限をちらつかせていますから、自給の向上というのが非常に重要になっていますよね。」
「日本としては、何が重要なのかというと、やはりスモールヤード(小さな庭)の中に日本の国益をしっかり入れていく政策を取る必要があると思いますね。」
「(尖閣諸島の問題などもしっかりこの中に入れてこないといけないのではという指摘に対して、)まさにそこなんです。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまで何度となくお伝えしてきたように、習近平国家主席の率いる中国は経済力、軍事力の強化ととともに、覇権主義を前面に押し出し、一党独裁の共産主義の世界展開に向けて邁進しています。
そして、これまでその取り組みは着々と進みつつありました。
こうした中国の取り組みに対して、バイデン大統領は本気で中国に対峙しようとしているのです。

その政策の一つが今回ご紹介した、レアアースなどの重要な物資における中国への依存体質からの脱却です。

実は、プロジェクト管理の観点から、依存関係についてはこれまで以下のブログなどでお伝えしてきました。
プロジェクト管理と日常生活 No.459 『国家間のより強い依存関係こそ戦争勃発の最適なリスク対応策』
プロジェクト管理と日常生活 No.454 『築地市場移転に思う その2 重大決定時に無視出来ない依存関係』

この依存関係の在り方について、今問題視されている中国の覇権主義の国際展開について当てはめて考えると、5GなどITの最先端技術の事実上の国際標準を目指したり、自国で豊富に入手出来るレアアースなど希少資源の他国への供給量をコントロールすることにより、他国に対する中国の優位性を高めようとしているのです。
要するに、中国は自国に対する他国の依存関係を高めることを武器に他国をコントロールしようとしているのです。

一方、アメリカを中心に、自由主義陣営国は中国に対する依存関係の度合いを高めることがいざという場合に弱みになり、経済や軍事などの安全保障上大きな影響を受けるリスクが高まることを警戒して、こうした中国との依存関係を断ち切ろうとしているというのが現状であるという捉え方が出来るのです。

こうした考え方の究極的な国のあり方は、いつどんな状況になっても他国に依存しないで済む、あらゆる面での自給自足です。
しかし、現実的に考えれば、アメリカと言えどもこうした極端な考え方を押し通せば、現在の暮らしのレベルを維持することは叶いません。
アメリカ国民の暮らしは多くの国々からの輸入によって成り立っているからです。
まして、日本のように食料自給率の低い国は他国からの輸入に頼らなければ国民の暮らしは成り立ちません。
ということで、米中、2大大国と言えども、ましてや日本のような資源小国おいては諸外国との貿易なしには現在の暮らしを維持していくことは不可能なのです。

ですから、どの国においても他国との依存関係を完全に断ち切ることは望んでいないのです。
ところが、中国のような一党独裁国家が5Gのような社会インフラ、あるいはレアアースのような戦略物資の供給コントロールパワーを握ってしまうと、これを武器に世界各国を自国に都合の良いようにコントロール出来てしまうのです。

こうしたことからアメリカのバイデン大統領は深い依存関係から生じる危機感をベースに、より多くの自由主義陣営の国々を巻き込んで中国の覇権主義に対峙しようとしているのです。
その具体的な対策は、中国の戦略を逆手に取って、中国の5G関連製品やレアアースなどの戦略物資は中国から輸入せず、自由主義陣営内の国々から輸入したり、あるいは協力して中国よりも優れた製品の開発を進めるといったような対策を講じようとしているのです。

こうした自由主義陣営の国々の動きは、当然中国にとって逆に脅威になります。
というのは、自国の製品の輸出量が激減しますから、経済的な影響が大きくなると見込まれるからです。

更に、こうした依存関係関連の問題とは別に、中国の南シナ海や東シナ海、そして香港や台湾への軍事的、あるいは人権への圧力といった中国の行為は自由主義陣営の国々からすれば見過ごすことは出来ません。
そこで、今や日米のみならず、カナダやヨーロッパ、あるいはインド、オーストラリアといった国々を巻き込んで軍事的な協定を結びつつあります。

さすがにこうした各国の動きに対して、中国はその都度、反論を展開しています。
その際のキーワードは“内政干渉”で飽くまでも“まず中国共産党ありき”です。
しかし、こうした自由主義陣営の一致団結した中国への対峙はいずれ習近平国家主席の戦略の軌道修正を強いることになると見込まれます。
そこで気になるには、覇権主義を後退させるのか、それとも強気に出て更に覇権主義により一層突き進むかです。
後者の場合、最悪のケースは第三次世界大戦の勃発です。
しかし、このケースは人類はおろか地球そのものを破壊に導いてしまうリスクがあります。
ですから、こうしたリスク回避のためには、経済的、軍事的に自由主義陣営のパワーが中国を圧倒し、習近平国家主席、あるいは中国国民の半数以上が覇権主義に突き進むことは益少なくして損失が多いと実感させることです。
そのために自由主義陣営の国々は中国との対抗意識をテコに以下のような対策を講じるべきと考えます。
・いざという時に中国への依存関係を最小限にしても影響が少ない状態にする
・DX(デジタルトランスフォーメーション)関連時術で中国を凌駕する
・同様に自由主義陣営国の軍事力が総力で中国を圧倒する
・こうした状況を具体的に示し、習近平国家主席、および中国国民に覇権主義の愚かさを実感してもらえるようにする

ということで、経済のグローバル化が進んでも、国家安全保障の観点からはいざという時に依存関係が無くなっても一定の経済活動が継続出来るような状態を維持しておくことがとても重要なのです。

さて、本来、経済のグローバル化が進んでそれぞれの国の国民の暮らしが豊かになっていくことが最も望ましいのです。
しかし、残念なことに経済的にも軍事的にも大国化したある国の指導者が覇権主義を唱えて世界制覇の夢を実現しようともくろんで突っ走り始めると、グローバル化により依存関係が深くなった国ほどその脅威にさらされることになってしまいます。
このある国が今の中国なのです。
ですから、世界の国々が安心してグローバル化の恩恵を受けることが出来るようにするために、習近平国家主席が覇権主義から“共存共栄”、“人権尊重”および“平和主義”へと軌道修正を決断されることを切に願います。

 
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