2021年06月05日
プロジェクト管理と日常生活 No.696 『変異ウイルスの感染拡大に見る日本の水際対策の不備』
1月11日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で変異ウイルスの感染拡大に見る日本の水際対策の不備について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付けは全て番組放送時のものです。


昨年12月22日、イギリスから日本に帰国した30代の男性が2週間の「健康観察期間」中に10人で会食をしたといいます。
そして、同席していた2人が変異ウイルスに感染したことが昨日判明しました。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「水際対策も“ザル”と言わざるを得ませんね。」
「そもそもなんですけど、何のために「健康観察期間」を設けているのかというと、「守られていないじゃないか」ということを強調していきたいですね。」
「(台湾では隔離されている部屋から数歩出ただけで多額の罰金を取られるわけですが、)もう一つはビジネストラックのあり方もきちっと詰めておくべきだと思いますよ。」
「(変異ウイルスが実際に日本でどこまで広がっているのが気になるが、)ステージが変わりましたね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

ここで注目すべきは、これまでコロナ禍対応の優等生と言われてきた台湾における最近の感染急拡大の引き金は航空会社乗務員の隔離期間(14日間)を特例でわずか3日間に短縮するという4月の決定だったことです。(参照:アイデアよもやま話 No.4972 コロナ耐性世界ランキング1位(4月)はシンガポール!

5月24日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でこの感染拡大における台湾の対応について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付けは全て番組放送時のものです。

日本でも警戒が高まる変異ウイルス、実は今、これまで感染をほぼゼロに抑え込んできた優等生、日本よりもワクチンの接種率が低い台湾でも感染が急拡大していました。

これまでITの活用などで感染を封じ込め、コロナ対策の優等生とされてきた台湾ではこの先どのような対策を取るのでしょうか。
今日、日本記者クラブ主催のオンライン会見で台湾のIT担当大臣、オードリー・タンさんが現状を語りました。
「(今は)警戒レベル3の水準で、ロックダウンではなく通勤も出来る。」
「感染が急拡大すれば、警戒レベル4(ロックダウン)になる可能性も。」

この1年、徹底して先手を打つ水際対策が功を奏してきた台湾、しかし国際線のパイロットの一人が変異ウイルスを持ち込んだことをきっかけに感染が広がり始めています。
こうした状況について、台湾の蔡英文総統は次のようにおっしゃっています。
「私たちが今出来ることは、接触機会を減らし、感染リスクを抑えること。」
「一番大切なことはステイホーム。」

警戒レベルを一気に引き上げた台湾政府は街中でも感染防止策を矢継ぎ早に打ち出しました。
すぐさま各地に検査所を設置、全ての学校を閉鎖しました。
そしてマスク無しでの外出には最大約6万円もの罰金を課すなど厳しく制限、更に感染経路を追うため、入店時の登録を義務付けたのです。
タン大臣は次のようにおっしゃっています。
「先週、新しい接触追跡ツールを公開しました。」
「(携帯電話のユーザーは)現在地を示すコードを受け取れます。」
「QRコードを発行して、5秒足らずで入店出来ます。」

タン大臣が指導して、わずか3日であるシステムを開発しました。
アプリが不要で、QRコードを読み取るだけです。
すると自動的にメッセージが作成されます。
5秒ほどで登録が完結するうえ、店側には個人情報が一切渡らない仕組みです。
誰もが利用し易いシステムにしてあるのです。
これは感染症をコントロールするための非常に良いシステムなのです。

しかし今、感染対策の優等生ならではのある課題に直面しています。
人口2300万人ほどの台湾、ワクチンを接種した人は30万人ほどと、全人口の1.3%に止まっているのです。
感染者がいなかったからこそ、見逃されてきた深刻なワクチン不足、感染を食い止めたい台湾政府は先日次の一手に踏み切りました。
台湾メーカーが製造するワクチンを7月末までに供給することを宣言したのです、
蔡総統は次のようにおっしゃっています。
「私たちは台湾の人々を守るため、台湾産ワクチンを早く接種出来るようにします。」
「こうすることで台湾は早急に通常の状態に戻ることが出来ます。」

台湾メーカーのワクチンは、現在、治験の第2段階が終了したところで、日本メーカーとほぼ同じレベル、最終テストの大規模な治験が必要な段階ですが、特例として一気に使用を前倒しする方針です。
これまでも先手先手で感染拡大を防いできた台湾、最大の危機を前に、その対応が注目されます。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

以上、2つの番組を通して、日本と台湾との変異ウイルスの感染拡大の要因と対策の相違についてお伝えしてきました。
まとめてみると、日本は水際対策として、海外からの帰国者に対して2週間の「健康観察期間」を設けていますが、罰則などはありませんから、滝田さんも指摘されているように“ザル”対策と言わざるを得ません。

一方、台湾ではこれまでも厳しい水際対策を実施していたのですが、今回の感染急拡大の引き金は航空会社乗務員の隔離期間をわずか3日間に短縮するという4月の決定にあるといいます。
この4月の決定がなければ、台湾は今でもコロナ対策の優等生と言われ続けていたと思われます。
ですから、今回の台湾の変異ウイルスの感染拡大は台湾政府のちょっとした油断がもたらしたと言えます。
しかし、その後の台湾政府の対応は今回お伝えしたように矢継ぎ早でさすがと言えます。(詳細は5月28日(金)付けネット記事(こちらを参照)

こうした台湾の素早い対応に比べると、やはり日本の対応は遅く、変異ウイルスに立ち向かうには甘いと言わざるを得ません。
ですから、今後の感染者数の推移にもその違いが反映されるはずです。

いずれにしても、やはり変異ウイルスの感染拡大対策として、水際対策、PCR検査、ワクチン接種および、医療提供体制の充実がキーであると言えます。

 
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