2021年05月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.694 『コロナ耐性ランキングに見る日本のコロナ対応策の不備』
2月17日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界のコロナ耐性ランキングについて取り上げていました。
そこで、プロジェクト管理の観点からこのランキングについて思うところをご紹介します。 

日本のコロナ禍対応について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「日本は現状認識をしっかり持つべきだと思うんですね。」
「コロナ耐性ランキングというのをブルームバーグが定期的に出しているんですが、ちょっと面白いのは、単に感染抑止のランキングじゃなくて経済とか社会に与えるダメージを最小限に抑えながらどこがうまく抑止しているかというランキングなのです。」
「そうすると、日本は8位にくるんですね。」
「比較的経済とのバランスを取りながら、うまくやっている方なんですよ。」
「(国内では批判の声もあるが、あまり今までやってきたことに悲観する必要はないということかという問いに対して、)もっと自信持つべきだと思いますよ。」
「問題はこの先なんですけども、私はここで徹底的に抑止に努めた方が良いと思っています。」
「なぜなら、今日からワクチンの接種が開始されました。」
「で、おしりがだいぶ見えてきた。」
「私はワクチンの普及に1年くらいかかると思いますが、それでも先が見えてきたことは大きくて、これまではいったいいつまで営業自粛をやらなきゃいけないのか、どれだけ税金を投入しなきゃいけないのか分かんなかったんですよ。」
「でも、先が見えてきた以上は、予備費もあるんだから、今は感染抑制に協力費を使ってでもやった方が経済的にも合理性があると思います。」
「(リバウンドもあるし、まずは徹底的に抑えてワクチンの接種につなげていくことが重要であるということかという問いに対して、)そう思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、以前、No.4902 ちょっと一休み その765 『コロナ耐性世界ランキングに見る日本のコロナ禍対応力!』でブルームバーグによる初回のコロナ耐性ランキングについてお伝えしていましたが、4月26日版まで時系列で過去3回のランキングを以下にまとめてみました。

コロナ耐性ランキング(ブルームバーグ作成)

      昨年11月    1月25日版  4月26日版  
1位 ニュージーランド ニュージーランド シンガポール
2位 日本       シンガポール       ニュージーランド
3位 台湾       オーストラリア  オーストラリア
4位 韓国       台湾       イスラエル
5位 フィンランド   中国       台湾
6位 ノルウェー    ノルウェー    韓国
7位 オーストラリア  フィンランド   日本
8位 中国       日本         アラブ首長国連邦
9位 デンマーク    香港       フィンランド
10位 ベトナム    ベトナム       香港

こうしてみると、日本のコロナ禍対応については、いろいろ課題や問題を抱えていますが、世界ランキングでみると、番組でも指摘しているようにまあまあの順位を維持しています。
しかし、現実には、イギリスやインドが発生由来の変異ウイルスはこれまでに比べて感染力が強く、重症化するリスクも一段と高いといいます。
そうした中、他国はともかく、国内では感染者数、重症患者数、そして死亡者数、これらがともにいくつかの都道府県で過去最多を更新している状況がここしばらく続いています。
更に、こうした状況から、新型コロナウイルスの感染者以外の患者が本来の治療が受けられないという、医療崩壊が起きている医療施設が現れているといいます。
その大きな理由は、ワクチン接種の手配の遅れ、PCR検査数の少なさ、および医療施設の拡充の遅れにあると多くの国民は認識しています。
その原因は、政府の後手後手に回る対応のように見受けられます。

では、なぜこのような状況に追い込まれているのでしょうか。
そもそも対応が後手後手になっている状況に陥っている原因はリスク管理の不備にあります。
また、的確なリスク管理をするには、それなりのスキルを要します。
ところが、今回の一連の政府の対応を見ていると、リスク管理の専門家、あるいはリスク管理に十分な理解のある人物が関連組織の一員として参画しているようには見えません。

特に新型コロナウイルスの感染拡大が継続するようなパンデミックにおいては、平時とは異なる緊急事態にあるので平時とは異なる対応が必要なのです。
ところが、政府の繰り出す対応策はどうもこうした認識が薄いように思えます。

ではなぜ、このような状態であるにも係わらず、日本はコロナ耐性ランキングで世界のトップ10に入っているのでしょうか。
それは、相対的にみて、多くの国民のマスクの着用や“3蜜”の回避、あるいは医療関係者の寝る間も惜しむ献身的な対応にあると思います。
こうした状況は先の戦争の終戦間近に一般国民が“竹槍で戦う”準備をしていた状況が連想されます。

ということで、政府には合理的なリスク管理の考え方に基づいて、コロナ禍に立ち向かっていただきたいと思います。
こういう緊急事態に陥った時こそ、リスク管理が最大限に発揮されるべきなのです。
合理的な考え方なしに、一生懸命対応しても、そこには自ずと限界があるのです。
ですから、もし政府が的確なリスク管理に基づいた対応策を取り続ければ、間違いなくコロナ耐性ランキングで世界のトップ1、あるいは2位を維持していると思われます。

 
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