昨年１１月２７日（金）放送の「深層ニュース」（ＢＳ日テレ）で中国による「台湾独立分子」リスト化の検討について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
香港メディアは今月１５日、中国当局が台湾内外の「台湾独立分子」のリスト化を検討していると報じていました。
台湾の独立の主張や資金援助などの行為に対して、厳しい制裁などの措置を取り、中国の法律に基づき生涯にわたって責任を問うとしています。
こうした状況について、中国情勢に詳しい神田外語大学教授の興梠一郎さんは次のようにおっしゃっています。
「（中国によるこのリストの目的について、）これは（アメリカの）ポンペオ（前国務長官）発言がきっかけになっていて、１１月１２日にラジオ番組で「台湾は中国の一部ではない」っていう発言をしたわけですね。」
「それで、これに対しては、ここでちょっと流れを止めなきゃいけないというのがあって。」
「もう一つは、先ほども出ましたが、法治に関する会議での習近平発言、こうした対外的な問題でも積極的に法を使って戦うんだと、主権を守るんだとはっきり書いていますから。」
「そうすると、もともと台湾に対しては反国家分裂法とか、国家安全法もそうなんですけど、そういったものがあるわけですね。」
「分裂を許さないっていう。」
「でもそれだけだとちょっと威嚇効果が、実際にそういう案件がないと、ケースがないと分からないじゃないですか。」
「だから今回は「リストに入れるぞ」という、思いっきりそれを発表して、「実は外国人まで関係するんだよ」みたいなニュアンスで。」
「で、これっていうのはグローバル・マグニツキー（人権問責）法というのがありますね。」
「例え外国であっても人権問題とかに問題が起きた場合には制裁する対象になるという、アメリカにあるというけれど。」
「あれのマネだって言われているんですね。」
「つまり、外国にいる人でも中国がそれを制裁することが出来る法律をつくると。」
「ロングアーム（法）（＊）っていう、そういうやり方で。」
「だから、もともと国家分裂法とか、国家安全法とかあって、そこで国家分裂行為に対する条文があるわけですよ。」
「で、刑法でそれが書かれているわけですよ。」
「最高で、本当に重大な場合は死刑になるので、そういう流れで実はここでそういう独立に向けた、今アメリカが台湾と国交を結ぼうかなんていう噂も流れてきているぐらいで、トランプが、“最後の凶器”って中国は呼んでいるんだけれども、カードを切ってくるんじゃないかって。」
「で、ポンペオ発言があったでしょ、「台湾は中国の一部じゃない」。」
「そういう流れの中で、思いっきりそういう流れを止めたいというかね。」
「香港の「大公報」という共産党系の新聞から出たんですよね、この記事は。」
この監視リストの対象となる人物は以下の通りです。（ブルームバーグより）
��
独立を求める傲慢な発言や悪質な行為を働く人物
��
台湾内外で国家分裂活動を組織、もしくは画策 実行する首謀者
��
主要な資金提供者、および支援者
元海上自衛官で駐中国防衛駐在官などを務めた笹川平和財団上席研究員の小原凡司さんは次のようにおっしゃっています。
「（こうなると、何が国家分裂と見なされるのか分からないという指摘に対して、）はい、おっしゃる通りで、どういった発言が傲慢な発言に当たるのかですとか、資金提供者だと証拠は集められるかしれませんが、プラス支援者だと何をしたら支援になるのかとか、そういったことは非常に分かりにくい。」
「中国共産党が恣意的に決められるということですし、この台湾の独立分子のリストを作るんだという香港の報道が出た後に、よく名前が出てくる「環球事報」、共産党機関紙の「人民日報」系の新聞ですけど、「環球事報」が台独（台湾独立）毒分子のリストは中国の歴史的制御を体現するものになるというような記事を出しているんですね、社説ですけど。」
「これは、中国は正義なんだということで。」
「ですから、最初から申し上げているように、中国共産党が領土を統一すると言っている、中国が主張している領土は全て自分のものだという、それを成し遂げるための手法は全て法律によって裏付けられているし、それは正義のためのものなんだということなので、中国がこういった動きを止めることはないということですね。」
＊ロングアーム法
被告となる者が当該州に所在していない場合であっても、被告がその州に最小限度の関連（minimum contact）がある場合には、当該州の裁判所に裁判管轄が認められるとするアメリカの各州における立法の通称
以上、番善組の内容の一部をご紹介してきました。
中国が「台湾独立分子」リスト化を検討中ということですが、私たち日本人が注目すべきは中国以外の人物も対象だということです。
更に、以前にもお伝えしたように、当局の判断で恣意的にいかようにも法の解釈がされるので、当局から目を付けられれば、まず逃れることが出来なくなるのです。
なお、この件については、昨年１２月１３日（月）付ネットニュース（こちらを参照）でも報じています。
さて、このリスト化の検討に関連して注目すべきは、５月１日（土）付けネットニュース（こちらを参照）です。
記事によれば、無料通信アプリ「ＬＩＮＥ（ライン）」の利用者情報が中国企業から閲覧出来た問題にからみ、同社以外でも国内大手企業の少なくとも７社で、保有する個人情報について、中国に移転したり、中国企業が閲覧出来たりする状態になっていることが、産経新聞社が行った１１７社の企業アンケートで５月１日に分かったというのです。
なお、中国では企業が保有する情報を政府が強制的に入手することが出来るのです。
更に、仮に無料通信アプリの個人情報や会話のやり取り、あるいは発信情報が中国の当局に把握され、その内容が中国共産党を非難する内容と見なされれば、中国国内では監視カメラが張り巡らされているといいますから、本人が観光旅行などで中国を訪れた際に逮捕されるリスクがあるのです。
なお、最高刑は死刑といいますが、死刑にはならないまでも何日間かは拘束されてしまったり、罰金刑になるかもしれないのです。
ということで、無料通信アプリに限らず、ネット上の個人情報は大なり小なり今のところ中国当局に筒抜け状態であるという認識を持った方が良いと思います。
また、中国共産党を非難するような内容をネット上で発信する際には、「台湾独立分子」のリスト化のような動きがあることを念頭に置いておくことが必要だと思います。
「ＬＩＮＥ」のような無料通信アプリは国内外を問わず、世界中の人たちとのコミュニケーションを容易に可能にしてくれる、とても便利なツールです。
しかし、一方で中国のような自由や人権を無視するような国がアプリのユーザーの個人情報を把握出来てしまい、しかもその内容が中国の法に触れてしまうようなリスクを抱えてしまうということが現状なのです。
ですから、こうしたサービスを提供するプロバイダー対して、当局による個人情報が漏洩しないような規制をすることが求められるのです。
