1月に発生した連邦議会議事堂の占拠事件を機にアメリカ社会で危機感が高まり、SNS(交流サイト)の運営企業に投稿の管理強化を義務付ける案が浮上しています。
そうした中、1月14日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でSNSの規制に見る欧米の基本的な考え方の違いについて取り上げていたのでご紹介します。
アメリカではSNSのアカウントの停止や接続の禁止、こうした措置を受けて、ドイツのメルケル首相は、停止は法に基づくべきで経営人が決めるべきではないという意見表明しています。
このルールを誰が決めるのかという議論が起きていますが、こうした状況について、番組コメンテーターで大阪大学の安田洋祐准教授は次のようにおっしゃっています。
「表現の自由という問題を超えて、市場のルールを誰が決めるかについて、アメリカとドイツをはじめとした大陸、ヨーロッパの考えの違いが出ていると思いますね。」
「ヨーロッパは国家がルールを決める。」
「対して、アメリカはプレイヤーである企業が決めることが出来ると。」
「例えば、イノベーションを起こすという発想になった時には、企業が自由にルールを決めてチャレンジし易いアメリカ型が有利なわけです。」
「で、実際に成功したデジタルプラットフォーマーを見ると、GAFAにしてもネットフリックスにしてもマイクロソフトにしても全てアメリカの企業だと、こういった背景が関係していると思います。」
「で、一方で、プレイヤーが自分でルールを決められることの弊害も当然あるわけですよね。」
「利用者の扱いを不当にしてしまうとか、将来的なライバルを買収して競争を抑制してしまうようなことが可能になってくるかもしれないと。」
「で、それを防ぐのが市場の競争が働いているかどうかだと思うんですね。」
「で、今、足元でデジタルプラットフォームを見ると、独占化、寡占化が進んでしまって、そのライバルのサービスに乗り換えるのが難しい。」
「こういった現状を踏まえると、ヨーロッパ型の国家がある程度ルールを決めていくことが重要なんじゃないかと個人的には思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
まず番組の内容を以下にまとめてみました。
・ヨーロッパは国家がルールを決めており、アメリカはプレイヤーである企業が決めている
・イノベーションにおいては、企業が自由にルールを決めてチャレンジし易いアメリカ型が有利である
・一方で、プレイヤーが自分でルールを決められることの弊害もある
では、こうした状況において、どのような当局の方針が望ましいかですが、イノベーションの激しい現状においては基本的にベンチャー企業が自由に活動し易い環境を整備する一方で、独占化、寡占化の抑止の観点から企業活動を制限するといった法制度も必要だと番組では伝えていますが、その通りだと思います。
更に、番組では触れておりませんでしたが、IT化、あるいはデジタル化による生産性の向上で従業員の削減が今後ともどんどん進んでいきます。
その結果、格差社会化がアメリカをはじめとして進みつつあります。
こうした状況に応じてGAFAのようなプラットフォーマーなどに対するデジタル課税や富裕層に対する増税とともにベーシックインカム(参照:アイデアよもやま話 No.3401 ”仕事がない世界”がやってくる その3 新たな生活保障制度の必要性!)といったような制度の導入が必要になります。
そして、実際にバイデン新政権ではこうした動きが既に始まっています。
ですから、日本においても同様の動きが望まれます。