2021年05月01日
プロジェクト管理と日常生活 No.691 『ファイブアイズに見る中国による香港の人権侵害への対応策の真意とあるべき対応策!』

昨年11月27日(金)放送の「深層ニュース」(BS日テレ)でファイブアイズによる中国の香港に対する人権侵害への対応策の真意について取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

深刻さを増す香港の人権問題、世界で懸念が広がっています。

イギリスの国営放送、BBCによると、国際的な機密情報ネットワーク、ファイブ・アイズを構成するアメリカやイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国の外相は11月18日、香港に対する中国の行為を非難する共同声明を発表しました。

これに対して、中国外務省の報道官は11月19日、「気を付けないと(5ヵ国は)目玉を引き抜かれるだろう」、「例え目が5個あろうが、10個あろうが関係ない」と、中国の内政問題に口出ししないよう警告しています。

中国情勢に詳しい神田外語大学教授の興梠一郎さんは次のようにおっしゃっています。

「(こうした強気な姿勢を崩さない中国に対して、国際社会はどのように対応していったらいいのかという問いに対して、)その強気な発言というのは今始まったことじゃなくて、例えば国家安全維持法が施法化されるかどうかという時期にアメリカがどう出るかとか、欧米がどう出るかとか、足元を見ているんですね。」

「例えば、よく引用される「人民日報」系の「関係情報」という新聞がありますけど、香港自治法案っていう、これ制裁出来るわけです、金融制裁とか。」

「それに対する7月2日の社説を見ると、「EUはそもそも制裁しない」と。」

「EUはそう言っています。」

「アメリカも香港における金融ビジネスのいわゆる利益を損ねるから決定的な制裁はしないと。」

「実際、アメリカが今までやってきたのは何人かの政府関係者を、林鄭月娥さんも入るけど、アメリカにおけるいわゆる口座を凍結したり、アメリカに行くときにビザが出なかったり、はっきり言ってあまりダメージないじゃないですか。」

「で、一番痛いのは金融制裁なんですよ、例えば、香港ドルとドルのとか。」

「だから、本気でそういうことをアメリカがやっていないということを中国側は書いている。」

「つまり、トランプ政権もそんなに香港の民主主義、民主化に対する関心がなかったって、ボルトン元顧問にバラされちゃったでしょ、本で。」

「で、それは今回もそうなんですね。」

「要するに、結局「中国でビジネスをしたいだろ」っていう、結構そういう強気のところがあって、ですね。」

「だからどうやるかっていうのは、声明文を出すだけじゃなくて、それは西側の国が本当に意思表示するなら金融制裁しなきゃいけないわけですよ。」

「または、香港にするだけじゃなくて、中国に対して天安門事件の後のように制裁しなきゃいけないです。」

「ところが、みんな出来ないわけです。」

「やるなら、とっくに国家安全維持法が出来るか出来ないかという時にやっとかないと。」

「もう、出来ちゃったわけですから、これ向こう(中国)の国内法になっちゃっているんで、捕まっても何にも出来ないですよ。」

「せめて移民で逃がすぐらいしか出来ない。」

「それだってアメリカの総領事館は受け入れなかったですからね、駆け込んできたのを。」

「そういうのを(中国は)見ているわけですよ。」

「だから、何をすればいいかって言っても、決定的な措置がいわゆる西側に、声明を出したけど出来ないっていうのを実は向こう(中国)はしっかり見ている。」

「経済カード(を中国は有効に使っている)。」

 

また、元海上自衛官で駐中国防衛駐在官などを務めた笹川平和財団上席研究員の小原凡司さんは次のようにおっしゃっています。

「(日本は何かものを言わなくて良かったのかという問いに対して、)日本も人権ですとか、自由といった価値についてはものを言うべきだと思います。」

「ただ、それが民主主義対権威主義といったような、更に進んだイデオロギーの対立まで行くことは日本にとって利益になるのかどうかということは考えなければいけないと思うんですが、ただ今お話にもあったように、中国というのは実力を行使されない限りは止まらない。」

「これ絶対止めないですし、強硬な姿勢で、私たちが理解しなくちゃいけないのは、指導者たちが言っているんですけど、国内ではそれを支持する人が多いんですね、それを歓迎する人も多いと。」

「ですから、外交部の報道官の趙立堅というような戦う外交官と言われる人ですとか、戦浪外交、戦う狼の外交と言われるような、そういった姿勢が実はスター扱いされたり、歓迎されたりする。」

「ですから、こういった言葉は“中国が強くなったんだ”という、“共産党はそこまで中国を強くしたんだ”と主張する一つでもあるんだと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、煎じ詰めると以下のようなことが言えます。

 

・中国は西側諸国からの決定的に強烈な制裁がない限り、香港や台湾に対して自らの望む一国二制度を推し進めている

・対するアメリカは中国に対峙するにあたって、自国の経済への影響をかなり考慮しているので金融制裁のような強力な制裁には踏み込めない

・従って、リスク管理の観点から中国による国家安全維持法の制定前に中国に対して強力な制裁をちらつかせるべきであったが、そうすることはしなかった

・こうした中国共産党の指導方針に基づいた中国の世界制覇に向けた取り組みに対して、アメリカを中心とする西側諸国が中途半端な対応を今後とも続ければ、中国の経済や軍事の強化でアメリカを追い抜いた暁には中国による世界支配が現実化するリスクが高まる

・そうなれば、日本国民も自由と人権を奪われ、暗黒の日々を送ることになる

 

では、肝心な自由主義陣営国の取るべき、中国の覇権主義による世界制覇を阻止するリスク対応策ですが、前回、プロジェクト管理と日常生活 No.688 『中国式“法治”の脅威!』で、法は中国共産党による国民への指導を徹底させるための手段であるとお伝えしました。

ですから、この中国共産党による法の支配の考え方を逆手に取るのです。

具体的には以下のように私は考えます。

・米中の覇権争いを中心とした対立の構図ではなく、「世界人権宣言」のような国連での取り決めをベースに、この取り決めを順守する国々が一致団結して、取り決めを無視する中国に対峙していく

・その際、最悪の場合は中国を国連から締め出して孤立化させるくらいの覚悟を持つ

・また、中国による、こうした取り組みをする各国への個別の経済制裁のリスク対応策として、経済制裁を受けた国に対して、他の国々が影響を最小限に食い止めるような経済支援や優先的な輸入をするといった取り決めをしておく

・同時に中国による軍事的圧力を受けた国に対しては、アメリカ単独ではなく、連合軍として中国に対峙する

 

そもそも現在のような自由や人権を無視している、しかも世界制覇を目論んでいる中国が国連の常任理事国であり続けているという状況がおかしいのです。

 

なお、こうした内容については、これまでも以下のブログなどでお伝えしています。

プロジェクト管理と日常生活 No.680 『激しさを増す米中の経済覇権争いと軍事衝突リスクの回避策!』

プロジェクト管理と日常生活 No.664 『覇権国家の横暴を許さない仕組み作りの必要性!』


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています