1月8日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日経平均が30年ぶりの高値について取り上げていたのでご紹介します。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な中にも係わらず、世界的に株価は大幅上昇、いったいなぜなのでしょうか。
その主な要因はアメリカでバイデン新政権の誕生が確実になったことです。
新政権の発足後に追加の経済対策が実施されるとの期待から景気の回復に楽観的な見方が広がりました。
ただ、新型コロナウイルスの流行が長期化し、仕事を失う人も出ています。
景気が良いという実感がない中での株価の大幅上昇です。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾さんは次のようにおっしゃっています。
「コロナで打撃を受ける(飲食や観光などの)業種は業績面でいうと株価(全体)への影響は1割ぐらいしかない。」
「ただ一方で、その業種で働いている人の人数は全体の4割ぐらい占めているんでね。」
「非常に多くの人、4割もの人が被害を被る。」
「だから世の中は非常に重苦しい雰囲気なんですけども、株価指数への影響度は1割程度で済んでしまうと。」
「株価指数、日経平均であれTOPIXであれ、経済の体温計としての機能を失ったんだと思います。」
新型コロナで大きな打撃を受ける飲食や観光などの業種は経済全体に占める雇用者数が多い一方、その利益水準は低いため、業績が悪化しても日経平均株価に与える影響が比較的小さいといいます。
そのため景気の実感と日経平均株価の水準が乖離しているのです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して、空前の株高到来であるにもかかわらず、多くの人たちの景気の実感が伴わない理由がよく分かります。
要するに、井出さんの指摘されているように株価と人々の経済的な豊かさは連動していないということなのです。
その背景には以下のような状況があります。
・株価は企業の業績を反映していること
・飲食や観光の業種は利益水準が低いため、日経平均株価への影響は1割程度であること
・一方で、こうした業種における従業員は全体の約4割を占めていること
・コロナ禍での金融緩和によるカネ余りが株式や貴金属、あるいは仮想通貨などへの投資を加速させていること
ということで、日経平均が30年ぶりの高値の主な理由は金融緩和によるカネ余りということになります。
そして、実感なき景気回復はコロナ禍が収束するまで続くと見込まれます。
しかも、GAFAに象徴されるようなネット業界のプラットフォーマーといわれる企業はコロナ禍でむしろ業績を伸ばしていますが、これらのIT業界は売り上げの割にはあまり従業員を必要としません、
ですから、IT関連企業に富が集中し、同時にこうした企業の従業員と飲食業や観光業など人手に依存する企業との間で収入格差が生じてしまうのです。