EV(電気自動車)と言えば、その普及に向けて以下のように様々な問題が指摘されています。
・バッテリーの充電時間の長さ
・フル充電での航続距離の短さ
・バッテリーの価格の高さ
・バッテリーの寿命の短さ
・バッテリーの安全性
・充電インフラの整備遅れ
そうした中、1月19日(火)付けネット記事(こちらを参照)で10分の急速充電を可能としたバッテリーについて取り上げていたのでその要旨をご紹介します。
ペンシルベニア州立大学の研究チームは、EVに係る様々な問題を解消するEV用バッテリーを開発したと報告しています。
研究者によると、このバッテリーは10分以内の急速充電が可能で、走行距離は400km以上、長寿命で320万km以上を交換無しで走行でき、値段も大衆向けに安価に抑えられ、小型で安全性も高いのだといいます。
研究者はその鍵が、急速な加熱にあるのだといいます。
今回の研究で開発されたバッテリーは、長寿命、急速充電を実現するために60℃近くまで急速に加熱し、バッテリーが機能していない時に冷却する機能を持っているのだといいます。
バッテリーに使用されるリチウムイオン電池は、周囲の温度が10℃未満の状態で急速に充電されると劣化する性質があります。
低温では、リチウムイオンがスムーズに陽極へ挿入されず、陽極表面にいびつに堆積しリチウムスパイクを発生させます。
これによりバッテリーは容量を減らし、さらに短時間に大きな電圧がかかる危険な状態を引き起こしてしまいます。
今回の研究チームは、バッテリーが60℃まで加熱されると、このリチウムスパイクが形成されず、バッテリーの熱劣化も発生しないことを発見しました。
そこでチームは、充電時のバッテリーにニッケル箔を使った3番目の端子を作成し、最初は電子がニッケル箔に流れ込み、抵抗加熱によって急速にバッテリー内部が温められる仕組みを作成しました。
バッテリー内部が60℃まで温まると、温度センサーがスイッチを切り替えて通常の充電が開始されます。
ただ、バッテリーを60℃まで加熱することは、バッテリー研究の分野では危険なことだと考えられています。
研究チームはこの問題を、車に組み込まれたラジエーターを使って急速に冷却するシステムを組み込むことで解決させました。
今回のバッテリーは急速に加熱することで、急速充電と安全性、さらに低コスト化と軽量化を実現させたのです。
研究チームのワン氏によると、この小さなバッテリーは加熱すると大量の電力を生成でき、時速0kmから時速100km近くまで3秒で加速する、ポルシェのような走行感が実現出来ると語っています。
以上、ネット記事の一部をご紹介してきました。
今回ご紹介したリチウムイオンバッテリーについて、その特徴を以下にまとめてみました。
・60℃近くまで急速に加熱し、バッテリーが機能していない時に冷却する機能を持っている
・10分以内の急速充電が可能である
・フル充電での走行距離は400km以上である
・320万km以上を交換無しで走行出来る
・価格は大衆向けに安価に抑えられる
・小型で安全性も高い
・時速0kmから時速100km近くまで3秒の加速性能がある
こうしてまとめてみると、今回ご紹介したリチウムイオンバッテリーは既存のバッテリーの改良版ということになりますが、それでも現行のリチウムイオンバッテリーの弱点をほとんどカバー出来ると見込まれます。
ただし、記事では市販化の時期については触れられていないので、タイミングによっては全固体電池(参照:アイデアよもやま話 No.4738 1000km走るEVが10年後には実用化!?)の登場によって立ち位置がなくなってしまう可能性があります。
しかし、今回ご紹介した研究成果の一部のアイデアは全個体電池に応用出来るのではないかと思われます。
いずれにしても、今後短期間のうちに製品化出来れば、全個体電池の実用化までのつなぎとしてとても有効だと思います。
なお、4月7日(水)付けネット記事(こちらを参照)でもリチウムイオン電池の10倍の速さで充電可能なバッテリーについて取り上げています。
ですから、今回ご紹介したようなバッテリーの開発は世界各国の研究機関や関連企業でし烈な競争が繰り広げられているようです。