昨年１２月１２日（土）放送の「ニュース７」（ＮＨＫ総合テレビ）で太陽光発電施設の設置規制条例施行について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
太陽光などの再生可能エネルギー、その普及は脱炭素社会実現のカギを握るとされていますが、太陽光発電施設の建設を規制する内容の条例を設けている市町村が増えているのです。
その数、この３年で３倍以上、何が起きているのでしょうか。
看板には“絶対反対”の文字、長野県木曽町です。
町は昨年１０月、太陽光発電施設の設置を規制する条例を施行しました。
住民の女性は次のようにおっしゃっています。
「ここだけはちょっと止めて欲しい、ここだけは。」
政府は、“２０５０年までにＣＯ２の排出量を全体としてゼロにする”という目標達成に向けて、太陽光などの再生可能エネルギーを最大限導入する方針です。
８年前には発電した電力をあらかじめ決められた価格で大手電力会社が買い取る固定価格買取制度を設け、メガソーラーなどの普及を図ってきました。
その一方で起きている建設を規制する動き、木曽町の場合、背景には地元住民の懸念の声がありました。
温泉旅館を営む松永民子さんは、建設に反対する約２５００人分の署名を町に提出しました。
松永さんは次のようにおっしゃっています。
「紅葉と新緑が一番良い所なんです。」
「ここがソーラーに全部埋め尽くされちゃったら、もう私は来ない」というお客さんもいました。
「何とか御嶽山の自然を維持していくのに、ここだけは止めてくれないか。」
こうした声を受けて、木曽町は昨年、新たに条例を制定、“景観を損ねる恐れのある地域などでは、１００�屬鯆兇┐訛斥杆�発電施設の建設は原則同意しない”としました。
木曽町町民課の中村和子課長は次のようにおっしゃっています。
「（再生可能エネルギーの）推進はしていかなければいけない立場は変わりはないんですけれども、地元住民との合意形成といった問題も浮上している中では、自治体がどういったかたちでかじ取りをしていけばいいかというところは難しい。」
こうした動きは各地で起きています。
東京のＮＰＯ法人が調べたところ、設置を規制する内容の条例を設けている自治体は今月上旬の段階では３年前の３倍以上の少なくとも９４市町村に上っているということです。
背景としては、景観を損ねることの他に、土砂災害への懸念などもあります。
環境エネルギー政策研究所の山下紀明主任研究員は次のようにおっしゃっています。
「将来的にはゾーイング（地域分け）というかたちで、抑制する区域もある一方で、推進していくべき地域も設定していく。」
「国と地方が連動したゾーイングが長期的な再生可能エネルギーの導入目標と整合が取れているようなゾーイングをしていくのが非常に大事だと思っています。」
国の対応ですが、固定価格買取制度で認定した事業が後に地元でトラブルになるケースが少なくないことから、政府は認定後にしか事業者や事業内容などの情報を地元自治体に提供していない制度を変更し、申請があった段階で情報を共有することを検討しています。
これによって、自治体と事業者が早めにコミュニケーションを取ることが出来。事業が始まる前に地元の理解を得ることを促したい考えです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
そもそも政府が大々的に再生可能エネルギーによる発電の普及を目指すべく、電力の固定価格買取制度を導入する前にどのような問題が発生する可能性があるか、リスク管理におけるリスクの洗い出し・検討を実施し、合わせて環境アセスメント（こちらを参照）に関するガイドを作成していれば今回ご紹介したような問題は発生していなかったのです。
メガソーラーの日本各地での設置により、森林が削り取られて丸裸同然になってしまっては、景観の悪化問題、あるいは土砂災害といった新たなリスクを抱えることになります。
そこで、政府のこうした機能がないので一部の自治体では独自に太陽光発電施設の設置規制条例を施行し始めているのです。
本来、政府はこうした全国共通のガイドをあらかじめ作成して、各自治体にガイドに沿うように指示すべきだったのです。
そういう意味で、政府の政策は多角的な視野に立ったものではなく、しかもタイミングを逸しております。
小泉環境大臣には、是非強力なリーダーシップでリスクにも配慮した有効な政策の作成、およびタイムリーな実施を出来るように省内を指導していただきたいと思います。
