昨年12月25日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍で増加する看護師の離職について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、増えているのが看護師の離職です。
昨年12月22日、日本看護協会の福井トシ子会長は次のようにおっしゃっています。
「看護師職員は心身の疲労もピークを迎えています。」
「使命感だけでは既に限界に近づいている(状況です)。」
日本看護協会によりますと、コロナが原因で実際に看護師が辞めたという病院は全体の15.4%で、コロナ患者を受け入れる感染症指定医療期間では21.3%に上るということです。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞
編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「医療従事者に対して、言われなき差別とか中傷があるという話も聞くんですが、これは言語道断だと思うんですよね。」
「一方で、病院の経営が大変難しくなっていまして、冬のボーナスを減らすとか、支給無しといった話も聞くんです。」
「日本もようやく予備費をそういうところに使えるようになったんですけれども、アメリカの場合、今回90兆円以上の追加経済対策を打ちますが、雇用とか医療に重点的に当てているんですね。」
「それは大いに見習うべきだと思いますね。」
今なお、感染者が増え続ける中、医療現場では何が起きているのでしょうか。
一日200人前後の感染者数が続いていた7月中旬、多くの重傷者を受け入れていたのが東京医科歯科大学病院です。
現在、重傷者向け病床の全てが1ヵ月以上埋まっているといいます。
若林健二病院長補佐は次のようにおっしゃっています。
「いわゆる「第3波」で一般的に呼ばれる状況はまだ終わりが見えていないですね。」
「で、今日にも1000という数字が出てくるかもしれないし。」
最前線で勤務するスタッフ、感染制御部の貫井陽子部長は次のようにおっしゃっています。
「1人の患者のケアも複数の医療スタッフが対応せざるを得ない。」
また浅香えみ子看護部長は次のようにおっしゃっています。
「コロナ病棟のみならず、院内全体の看護師不足が十分予測されました。」
医療体制をどう維持していけばいいのか、予断を許さない状況の中、病院は看護師の中途採用を決断、来月までに約30人を確保する予定です。
迎える年末年始、スタッフを管理する医師、若林健二病院長補佐は次のようにおっしゃっています。
「我々、医療者も人間ですから、その中にちょっと気持ちがほっとしたりだとか、心が和むようなことも必要なので、そういったクリスマスツリーを飾ってみて、「そういう時期だね」って話したりっていうのはしている。」
「山あり谷ありを多く経験してきたところで、非常に辛いこと、いろんな人が様々な思いを抱えながらやってきたというところで、本当に苦労の多い1年であったと。」
なお、iPS細胞の生みの親、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、12月21日、番組のインタビューに応じ、次のようにおっしゃっています。
「沢山の感染症やウイルスの専門家の方々と協力していろんな研究もしていますし、普通のことが出来ない今、普通じゃないことに挑戦するものすごいいいチャンスでもある。」
「年が明けて、まだしばらくこの状態は続くと思いますが、ワクチンなどの開発もあって、まだほのかではありますが、トンネルの出口、先に明かりが少し見えてきたと思います。」
「とはいえ、まだまだ私たちはトンネルの真ん中におりますので、何としてもみんなで頑張って、特に冬を乗り切る。」
「一生懸命我慢すれば、必ずトンネルの出口が見えてきます。」
また、沖縄県立中部病院(沖縄県うるま市)勤務の中山由紀子さんは、3月9日の番組放送時に次のようにおっしゃっていました。
「私は沖縄の救急医です。」
「そして、妊娠9ヵ月の妊婦でもあります。」
「3月半ばに関東に住んでいた私の祖父が亡くなりました。」
「でも葬式には行かず、沖縄に残りました。」
「私の移動によって、沖縄に職場である救急医療の現場に妊婦検診を受けている産科に、夫の職場に、そして息子の保育園にウイルスを持ち込むリスクがあるからです。」
「このウイルスの怖いところの1つは、無症状でも感染していて人にうつす可能性があることです。」
「あなたが、私が気づかずに今まさにウイルスを運んでいる可能性があることです。」
「「まだここではそんなに流行っていないから」と住民が油断していたら、医療者が感染してしまったら、地域の医療を崩壊させるのは簡単です。」
「不安をあおるようなことばかり言って、申し訳なく思います。」
「でも、みんなが今自分にできることを考えて実行出来れば、この流行を抑え込むことが出来ると信じています。」
「完全に無くすことは出来ませんが、医療スタッフが出来るだけ危険にさらされず、医療が必要な人が適切な医療を受けられるレベルで制御することは出来ると思います。」
日本の医療体制や救急現場のスタッフを守って欲しい。」
「あなたが移動しなければ、貴重な感染防護具を温存出来ます。」
「医療者の感染リスクを下げることが出来る。」
「自分は無症状だけど、感染しているという意識で行動して下さい。」
「どうかお願いします。」
中山さんは5月、女の子を出産、2歳のお兄ちゃんに可愛がられているといます。
育児休暇中の中山さんから番組に次のようなメッセージが届きました。
今年は自分と違う立場の人の状況や思いを想像するのは難しいということを痛感した1年でした。
私が救急医としての立場しかなかったら、例えばあと10歳若ければ、公園の遊具にかけられたテープに気づくことはなかっただろうし、休校で子どもを看ながら在宅ワークをする親の大変さも理解出来なかったし、出産予定の病院にコロナにより突然受け入れてもらえなくなってしまった妊婦さんの、とてつもない不安も想像出来なかったかもしれません。
例えばあと20歳若く、救急医ですらなかったら、コロナのせいで検査や手術が延期となり、がんが進行してしまう人や重症の病気なのにコロナの患者さんでベッドがいっぱいで入院先が見つからない人の存在にも気づけなかったと思います。
何より手洗いなどの正しい感染予防の知識にすらたどり着けなかったでしょう。
世界は広く、自分と同じ立場の人の方が圧倒的に少ない。
それを自覚して考えたり、行動したりしたいと思います。
以上、中山さんから番組へのメールの内容をご紹介してきました。
番組のメインキャスター、大江麻理子さんは次のようにおっしゃっています。
「人によって新型コロナウイルスに対する考え方はとても違っていまして、友情がそれによって壊れてしまったという話も聞いた1年でした。」
「でも、これからの未来を作れるのは、お互いがお互いを思いやる想像力なのだと思います。」
「コロナで日本全体に閉塞感が漂っていますが、トンネルの出口を探して、来年は少しでも希望の光を見出せるようなニュースをお届け出来ればと思っています。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
沖縄県立中部病院勤務の中山さんは、一人の救急医として、一人の人間としてとても想像力が豊かで、とても温かみのある人柄の方のようにお見受けします。
確かにコロナ禍による閉塞感、そしてストレスの蓄積はどこかにそのはけ口を求めて発散しないではいられないと思います。
私もその一人です。
ですから、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として、“3密”を回避する中でのはけ口を見つけるのもとても重要だと思います。
一方で、中山さんもおっしゃっているように、新型コロナウイルスは無症状でも感染していて人にうつす可能性があること、一人ひとりが油断していると感染拡大につながり、地域の医療崩壊をもたらすのです。
そして、新型コロナウイルス感染症以外の患者さんが十分な医療を受けられずに、助かるはずの命を落とすことにもつながりかねないのです。
ですから、自分の安易な行動が自身の感染に、そしてそれが見知らぬ誰かの命さえ左右してしまうことにつながってしまうということをしっかりと認識しておくことも一人の人間としてとても重要だと思います。
こうした一人一ひとりの慎重な行動とワクチン接種の全国的な展開こそがコロナ禍を終息に向かわせるのです。
さて、山中教授は、「普通のことが出来ない今、普通じゃないことに挑戦するものすごいいいチャンスでもある」とおっしゃっています。
コロナ禍は企業のみならず個人もコロナ禍以前には多忙でやりたいことが出来なかったことに挑戦出来る絶好のチャンスを与えてくれているという前向きな気持ちで取り組み、その結果素晴らしい成果が得られれば、それは間違いなくコロナ禍後の新しい社会の実現をもたらすことにつながるはずです。
しかも、こうした取り組みはコロナ禍におけるストレス解消にもなります。
コロナ禍はまだ当分続きそうです、
ですから、より多くの方々にはこの絶好のチャンスを捉えて有意義な時間を過ごすことに取り組んでいただきたいと思います。
ちなみに、私はと言えば、“持続可能な社会”の実現に向けた、いろいろな道筋を考えることに時間を費やしています。
もう一つは趣味の太極拳とテレビ録画した映画やドラマなどの鑑賞です。
お陰様で、こうした時間を過ごすことでコロナ禍によるストレスを感じることはほとんどありません。