昨年12月16日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍における銀行の果たすべき役割について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な行動規制が再び始まっていますが、日本でも第3波と呼ばれる状況が長引いて来て、中小企業の経営がより一層厳しさを増しています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「こういう時だからこそ、資金繰りの命綱を握っている銀行の役割は大変重要になってくるわけですよね。」
「そこで、群馬県に本店を置いている東和銀行に注目してみたいと思うんです。」
「実は、融資先、2000社あまりを絞り込みまして、3月までに集中的に支援するという、今そういう活動に出ているわけです。」
「(融資条件の緩和、資金ぐりの支援、そして本業の支援という、)融資と本業、そういうかっこうで支援していくわけですけども、重要なのはやっぱり資本が足りなくなっている融資先が多いんです。」
「そこでSBIグループとジョイントで会社を作りまして、劣後ローンなどの資本性の資金を注入する仕組みを整えたわけです。」
「こういったやり方については、金融庁も相当注目していると聞いています。」
「まさに“雨が降っている時に傘を差しだす”、それが銀行の一番重要な役割だと僕は強調したいですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
また3月26日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でSBIホールディングス(SBI)による地方銀行(地銀)の経営強化について取り上げていたのでご紹介します。
北尾義孝社長率いるSBIはこれまで7つの地銀と資本提携を結び、地銀の経営強化に乗り出しています。
地域の経済を支える地銀は今後どうなっていくのでしょうか。
3月上旬、群馬県太田市、群馬県の第二地銀、東和銀行の太田支店、営業担当の片倉知洋課長は外回りで、やって来たのは東和銀行が融資する飲食店、おもひで横丁
なつかし屋です。
5年前にオープンしたこのお店は昭和の古き良き時代をイメージして作られています。
オーナーの須永和昭さんは商店街の活性化のため、このお店を開きました。
須永さんは次のようにおっしゃっています。
「昔ながらのにぎわいを取り戻せればと思っています。」
駅前の商店街で6店舗の飲食店を経営していますが、コロナの影響で3店は休業中、売り上げがないまま半年以上家賃だけを払い続けています。
須永さんは次のようにおっしゃっています。
「我慢といってもいつまで我慢していいかっていうのは一番、資金繰りの部分が大変になってくるので・・・」
コロナの影響は深刻さを増しています。
そこで東和銀行が力を入れているのが資金ぐりの支援です。
通常、銀行が融資先の年間の資金繰り表を作ることはありませんが、昨年10月からコロナ禍で苦しむ融資先のために始めたといいます。
片倉さんは須永さんに次のように説明しています。
「8月に資金ショートを起こしてしまう。」
須永さんの会社はコロナ対策で借りた1000万円の返済が6月から始まるため、8月には運転資金が足りなくなってしまいます。
そこで片倉さんは須永さんに次のようにおっしゃっています。
「当行としては、須永社長を応援したいという気持ちがありますので、500万円のご融資をご提案させていただきます。」
これに対して、須永さんは次のようにおっしゃっています。
「ありがとうございます。」
「本当に心強いです。」
コロナに苦しむ地元企業を融資で支えるのが地銀の重要な役割です。
しかし、地銀の経営は年々厳しさを増しています。
低金利政策の長期化もあって、東和銀行の純利益は約33億円(2020年度)と、2期連続で減少、更に公的資金、150億円の返済も残っています。
東和銀行の吉永圀光会長は融資をするだけでは今後生き残れないといい、次のようにおっしゃっています。
「預金を集めて貸し付けるだけではダメだと思います。」
「お客様が何を望み、どういうことをしたいかということを十分ヒアリングして、私どもの力では出来ないところを特にSBIさんの力を借りてやると。」
東和銀行は昨年10月にSBIと資本提携を結び、これまでの銀行業務を抜本的に見直すことにしたのです。
2月24日、東和銀行の本店にSBIグループの担当者がやって来ました。
そして、東和銀行の担当者は次のようにおっしゃっています。
「我々とSBIさんで力を合わせて、お客さんの支援をやっていきたい・・・」
SBIと東和銀行は昨年12月、5億円の共同ファンドを設立、地元、群馬の企業に出資して資金面で支えようというのです。
更にSBIインベストメントの吉村純一さんは次のようにおっしゃっています。
「コロナ後を勝ち抜いていけるような、私たちの技術を是非御行のお客様に対して導入して、私たちが微力ながらサポートさせていただきたいと考えていますので・・・」
共同ファンドは、SBIが出資しているスタートアップ企業のデジタル技術を東和銀行の融資先に導入、資金と技術で地元企業の体質強化を図ります。
東和銀行は融資先との関係が深まり、SBIはグループのサービスを売り込める、双方にメリットのある取り組みなのです。
共同ファンドの出資先は3月中にも決まるはずです。
地銀の経営が更に厳しさを増す中、東和銀行は生き残れるのでしょうか。
吉永会長は次のようにおっしゃっています。
「今年はですね、やはり自らを変えて自分の経営基盤を強化出来る銀行と、そうでない銀行に分かれると思うんですね。」
「私どもはSBIさんとの新しい関係が出来ましたので、頑張っていけると思います。」
SBIの川島克哉副社長は次のようにおっしゃっています。
「(SBI地銀連合の目指すところについて、)我々が出資の関係を持たせていただいた地方銀行さん同士の横の連携が出来ることで、新しい商品の共有だとか、ノウハウの共有だとか、もっと進めばシステムの共有だとか、こういうことが出来るようになりますと、結果として個別の地方銀行さんのノウハウや価値も高まるだろうと。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
いまだ、新型コロナウイルスの感染の再拡大は第4波の渦中にあるような状況で、一部の企業の売り上げが伸びている一方で、多くの企業は売り上げが激減し、資金繰りに苦慮しているといいます。
同様に、特に非正規雇用者の中には労働時間の短縮や失業を強いられたりなどで収入が激減し、大変な状況に置かれています。
中でも、女性の非正規雇用者の自殺者が増えているといいます。
そうした中、銀行業界も特に地銀では資金繰りに苦慮されているところが増えているようです。
コロナ禍において、大幅な売り上げ減少が長期間にわたって続けば、特に事業資金の少ない中小企業は経営危機に直面してしまいます。
そうした時に、命綱、あるいは最後の砦となるのが融資元である銀行からの融資支援です。
ですから、その銀行が融資資金不足に陥れば、融資先の企業も融資元の銀行も共倒れになり、ひいては日本経済全体に大きな影響が出てきます。
そうした中、今回ご紹介したようにSBIは多くの地銀と資本提携を結び、地銀の経営強化に乗り出しているのです。
SBI、地銀連合による地元企業への融資と本業における具体的な支援内容を以下にまとめてみました。
(融資)
・融資枠の拡大
・融資条件の緩和
(本業)
・資金繰り表の作成などによる事業資金管理支援
・SBIが出資しているスタートアップ企業のデジタル技術の地銀、および地銀の融資先への導入による、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
こうしたSBI、地銀連合の新たな取り組みにより、東和銀行は融資先との関係が深まり、SBIはグループのサービスを売り込める、というように双方にメリットがあると期待されています。
更に、SBIの川島副社長がおっしゃっているように、SBI、地銀連合に参加した地方銀行同士の横の連携について、新しい商品、ノウハウ、そしてシステムの共有を通じて、個別の地銀のノウハウや価値を向上させるというゴールを掲げています。
ですから、SBI、地銀連合は単に融資先の地方企業を融資と本業における支援のみならず、地方企業、および地銀をDX(デジタルトランスフォーメーション)で革新しようとしているのです。
当然、SBIが出資しているスタートアップ企業も新たな需要を得られるわけですから、まさに“四方良し”(近江商人の言葉、“三方良し”のもじり
参照:アイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え!)で、地方企業、地銀、SBI、およびスタートアップ企業にとってそれぞれメリットがあるのです。
なお、ここには含めていませんが、当然、地銀の個人顧客、地方企業の取引先、あるいは最終消費者にいたるまで地方企業による事業の継続は恩恵が及ぶのです。
ここまで書いてきて、以前、ソフトバンクグループ(SBG)が投資会社としてだけでなく、各投資先企業の持つ技術力の相乗効果をより一層高めるプロデューサー的な存在を目指しているとお伝えしたことを思い出しました。(参照:アイデアよもやま話 No.4348 ソフトバンクグループに見る今後の日本企業のあり方!)。
まさにSBIの北尾社長は、より多くの地銀、および投資先のスタートアップ企業を対象にSBGと同様にプロデューサー的な役割を目指そうとしているのではないかと思います。
また、以前、以下のようにお伝えしました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.679 『経済復活のカギは地方銀行再編!?』)
・菅総理は地方銀行の再編を進めようとしている
・運用資産3兆円の巨大ファンドを率いるキャブラ・インベストメント・マネジメントの共同経営者で、ロンドンの金融界の大物とされる浅井将雄さんは、日本経済には成長の余地があり、その起爆剤が地銀の再編と外資にあると指摘している
ということで、今回ご紹介したSBIの取り組みは、国策である地方銀行の再編、および浅井さんの率いる巨大投資ファンドの取り組みとも符合する、まさに的を射たものと言えます。