2021年04月04日
No.4920 ちょっと一休み その768 『ユーミンが語るコロナ禍のエンタメ産業!』

昨年12月10日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でユーミンが語るコロナ禍のエンタメ(エンターテインメント)産業について取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

新型コロナウイルスで大きく変化した今年、シンガーソングライターのユーミン、こと松任谷由実さんは「深海の街」をタイトルとした39枚目のアルバムを作りました。

お年はユーミンにとってもアーティスト人生の中で特別な1年だったといいます。

 

番組では、日本の音楽シーンをリードし続けてきたユーミンにコロナ禍でのエンターテインメント業界について聞きました。

「(コロナになってから、どのように過ごしていたかについて、)真面目にステイホームしていまして、3月、4月あたり、自分でもこんなに落ち込むことがあるのかというぐらい落ち込んだり、全てのモチベーションをなくしたり。」

「(具体的にどのようなことをしていたのかについて、)CDライブラリーがありまして、AからZまで整理してあるものなんですけど、4000枚ぐらいです。」

「(AからZまで全て聴いたのかという問いに対して、)ところがLで止まっているんですよ。」

「Mのアーティストが多いんですよ。」

「マドンナ、カイケル・ジャクソン、マルーン5とか。」

「「あー、Mか」と思った時に、それも自分のことやんなきゃと思ったきっかけも。」

 

5月、再び自宅のピアノに向かい、創作活動を始めたユーミン、こうして出来た曲の1つが「1920」でした。

曲の舞台は100年前、当時はスペイン風邪の流行やアントワープ・オリンピック(ベルギー)が開かれるなど、今年2020年との共通点も多いです。

着想のきっかけは母の存在でした。

「私の母が今年の春に100歳を迎えまして、施設にいるもんですから思うように会えない、お祝い出来ない。」

「そこでもまたコロナについて、コロナの非情な面とかを非常に痛感したり、それによって世の中の人たち、世界の人たち、もっと辛い人たちがいるんだろうなって想像することが出来たんですね。」

「(アルバムの)リリースも今年中にどうしても出したいと夏頃強く思いまして。」

「(どうしてかについて、)このコロナ禍という世界史に残るような特別な年を、この2020年を記録したかった。」

「アルバムに残しておきたかったんですね。」

「(アルバムに中で伝えたかったことについて、)愛しか残らない。」

「これは生活のあらゆる面で感じることだと思います。」

「このコロナ禍でしたから。」

「例えば、私自身の生活でいうと、古いお皿が好きなんですけど、食卓を豊かにしてくれますよね。」

「で、古いお皿って割れやすいのに、ずうっと残っているじゃないですか。」

「団欒を見てきているアイテムですから、すごく古いお皿って幸せが長い時間詰まっているんですよね。」

「そういうふうに愛があるものは残っていくと思う。」

 

アルバムと連動したコンサートツアーを行うのがユーミンのスタイル、前回は2018年9月から2019年5月まで全国17会場で40万人を動員しました。

続いてユーミンは次のようにおっしゃっています。

「(この環境の中でアーティストの皆さんはどのように活動していかれるのかについて、)リモートのコンサートでもある収益はものすごく上がったりはしているんですね。」

「ただ人が動くということでは圧倒的に少ないので、お金の問題だけじゃなくて、気持ちの問題があるじゃないですか、人の想いっていうのが。」

「自分でも誰かのライブに行く時にチケットを手に入れた時とか、行こうと思った時から始まっているんですよね、そのエンターテインメントは。」

「電車で見る景色が違ったり、日常がビビッド(鮮やか)になるんですね。」

「そして(コンサート会場に)着いたら、お目当てのアーティストだけを凝視しているだけでなく、お客さんの熱狂を後ろから見たり、ライトのビームを追ったり、そして自分の想い出の世界に一瞬浸ったりと、すごく自由だし、広がりがあるものなんですよ。」

 

コロナの収束は見えない、それでも来年(2021年)9月から全国60公演におよぶコンサートツアーを決めたユーミン、更に先月にはコロナで開催が難しくなったライブをもう一度取り戻す、後押しをするプロジェクト、「JAPAN LIVE YELL Project(ライブのリレー)」のエール・アンバサダーに就任、自身のコンサート活動だけではなく、エンターテインメント業界全体を盛り上げるためにも動き出しました。

ユーミンは次のようにおっしゃっています。

「様々なエンターテインメントがあります。」

「そこに携わっている人がものすごく沢山いらっしゃるんですよね。」

「そういう方たちにライブは再開するんだっていう強い意志とお客様が「必ず見に行くんだ」、「楽しみにしているんだ」っていう気持ちを確認するようなプロジェクトなんですけれども、何かお役に立てることがあったら、そういう気を発信していきたいなと思っているんですけど。」

「誰かから何かをしてもらうよりも、誰かに喜ばせてもらうよりも、自分が喜ばせる方がエネルギーが出るんですよね。」

「こういう世の中だからこそ、笑顔や親切や人にして差し上げるっていう、それによって自分自身のエネルギーを育てていったらいいんじゃないかなと思うんですけれど。」

 

“誰かを喜ばせる方になれば、エネルギーが出てくる”、そう語るユーミンは時代の預言者とも言われます。

ユーミンの見通す2021年の姿について次のようにおっしゃっています。

「やっぱり心して臨まないといけないと思いますね。」

「ワクチンが出来たとしても、もう戻らない世界もあるし、それから大変な2020年だったけれど、ショックやパニックっていう違うエネルギーが個々に出たと思うんですけど、それに慣れてしまって、真綿で首を絞められるような状況っていうのは続くと思うから、本当に大事なものを見極めて、それを大切にすることで個々が自分の力を、自浄作用や免疫力を高めないといけないと思います。」

「(ユーミンにとって大切なものについて、)私は音楽ですね。」

 

ユーミンは今年2月に苗場でのコンサートを予定しているのですが、コロナ対策として、観客数をこれまでの半分にします。

ただ、観客がそれも一つの演出だと感じられるような楽しい仕掛けを考えているということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ユーミンはインタビューの中で「(昨年)3月、4月あたり、自分でもこんなに落ち込むことがあるのかというぐらい落ち込んだり、全てのモチベーションをなくしたり」とおっしゃっていますが、この言葉に象徴されるように、多くのミュージシャンや芸能人は活動の場を奪われ、ユーミンと同じような想いをされていると思います。

 

しかし、ユーミンは5月、再び自宅のピアノに向かい、創作活動を始めたといいます。

こうして出来た曲の1つが「1920」でした。

そして、この曲の着想のきっかけは施設に入所している100歳の母の存在でした。

そこから100年前のスペイン風邪の流行や今回のコロナ禍の状況下で世の中の人たち、世界の人たちの中でもっと辛い人たちがいるんだろうなと想像することが出来たといいます。

ですから、このアルバムはユーミンの母親への想いやコロナ禍に対する想いが詰まっている特別な想いが込められていると言えます。

そして、このアルバムの中で伝えたかったことについて、「愛しか残らない」とおっしゃっています。

 

また、ユーミンは「誰かから何かをしてもらうよりも、誰かに喜ばせてもらうよりも、自分が喜ばせる方がエネルギーが出る」とおっしゃっていますが、ミュージシャンに限らず、エンターテイナーは観客が自分のライブ会場などに足を運んでくれて、楽しんだり、感動してくれることがエネルギーの源泉になるのです。

ですから、ユーミンでさえも、コロナ禍でライブが延期になってしまった時にミュージシャンとしてエネルギーを得られる場を失い、かつてないほど落ち込んでしまったのです。

 

これはエンターテイナーに限らず、どんな職業の人にとっても同じようなことが言えると思います。

自分が誰かのために作ったものにより、あるいは自分が提供するサービスに対して喜んでくれることがエネルギーになって、次はもっと喜んでもらうようにしようというエネルギーが涌いてくるのです。

ですから、私たちは誰かにサービスを受けた時に、あるいは何か困っている時に誰かが手を差し伸べてくれた時に「どうもありがとうございました」、あるいは「お蔭でとても助かりました」というような言葉で相手に感謝の意を表現しますが、実はこの時に相手の方にエネルギーを注入しているのです。

こうした人と人のコミュニケーションが世の中を暮らし易く、明るくしているのです。

ところが、コロナ禍はこうした様々なコミュニケーションの機会を奪ってしまっているのです。

 

そこで、ユーミンがコロナで開催が難しくなったライブをもう一度取り戻す、後押しをするプロジェクト、「JAPAN LIVE YELL Project(ライブのリレー)」のエール・アンバサダーに就任し、エンターテインメント業界全体を盛り上げるために動き出したことはとても理解出来ます。

 

ということで、ユーミンは番組の中でコロナ禍のエンタメ産業について語っていますが、この本質はどの産業界においても共通して言えることだと思います。

どの産業界においても、商品やサービスを通じて、与える側と与えられる側は良質なコミュニケーションによって、お互いにエネルギーを与えあっているのです。

こうしたしっかりした土壌があってこそ、“あるべき社会”の実現につながるのです。

 

さて、こうした基本的な考え方は国際社会のあり方にも展開出来そうです。

現在、米中2大大国の覇権争いがヒートアップしており、一方で世界各地で紛争の火種が絶えませんが、あらゆる国のリーダーが“人類愛”をベースに外交政策や経済政策を展開すれば、まさに“ラブ・アンド・ピース”の世界の実現につながるのです。

 

なお、こうした考え方は青臭い理想論のように思えますが、“何事もあるべき姿”、あるいは“こうしたい”という強い想いからスタートするのです。

 

さて、ここで思い起こされるのは、アイデアよもやま話 No.4913 ”イマジン”は生きている!でお伝えした、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの二人の基本的な考え方の共通点“ラブ・アンド・ピース”という言葉です。

ユーミンの発した「愛しか残らない」という言葉に触発されて、あらためて“ラブ・アンド・ピース”について考えてみると、“ラブ”と“ピース”は並列的な関係ではなく、“ラブ”に根源的な重要さがあり、その結果として戦争が世の中から無くなる“ピース”も得られるという解釈が適切ではないかと思い至りました。

そして、ジョンとヨーコが新婚旅行中に展開した、後に世界で最も有名なパフォーマンスと呼ばれることになるイベント、“ベッド・イン”もその真意が理解出来ます。


確かに、世界中の誰もの心の中が“自己愛”、“家族愛”、“社会愛”、更には“人類愛”で満ち溢れれば、“この世の天国”が実現するのではないかと思うのです。

やはり人々の暮らしの中のあらゆるものをそぎ落としていくと最後に大切なものとして残るのは“愛”なのではないかと思います。

 

こうして見てくると、やはりユーミンは単なる優れたミュージシャンの域を超えた、自ら“愛”をベースとした実践的な活動を展開する、人間的にも優れた人物だと思います。


 
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