2021年02月11日
アイデアよもやま話 No.4876 脱炭素社会実現(2050年)に向けた菅総理の本気度は伝わるが、・・・

昨年10月26日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で脱炭素社会実現(2050年)に向けた菅総理の本気度について取り上げていたのでご紹介します。 

 

菅政権発足後初めての国会において、菅総理は所信表明演説で新たな改革の旗印として温室効果ガスの排出を実質ゼロを目指す考えを以下のように表明しました。

「我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。」

「すなわち2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします。」

「温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。」

「積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要であります。」

 

就任から40日、マスク姿で初の所信表明を行った菅総理、これまで最優先課題として押し出してきたコロナ対策やデジタル化に続き、新たな菅カラーとして打ち出したのはカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現です。

温室効果ガスの排出実質ゼロ、これを30年以内に実現すると期限を明確に示したのは初めてのことです。

担当する小泉環境大臣は次のようにおっしゃっています。

「恐らく未だ日本の中では“脱炭素”という言葉自体も浸透しているとは言えないと思いますが、これがじわじわと日本を変えていくと思います。」

「環境省としては新たな時代が来たと認識してしっかり責任を果たしていきたいと思います。」

 

また梶山経済産業相は次のようにおっしゃっています。

「カーボンニュートラルを目指すうえで不可欠な水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力などの社会実装を進めるための支援策などを盛り込んだ実行計画を年末を目処に取りまとめてまいりたいと考えております。」

 

なお、菅政権発足時に公明党の山口代表と結んだ合意文書には、これまでの安倍政権を継承するとしながら、外交・安保や憲法などこれまで重要視されてきた政策よりも前に「脱炭素社会の構築に努める」という項目が新たに追加されています。

公明党は自らの手柄を主張します。

山口代表は次のようにおっしゃっています。

「我が党が先行的に主張したことに呼応するこの政権の姿勢が明示されたことも歓迎したいと。」

 

テレビ東京と日本経済新聞は昨年10月23日から25日にかけて、全国968人に世論調査を実施、菅政権に期待する規制改革は再生エネルギーの活用が労働時間規制の柔軟化とともに14%で首位となりました。

内閣の支持率は63%、日本学術会議の任命拒否問題もあり、内閣発足直後と比べ11%ポイント下落しました。(番組放送時)

 

大きな課題を掲げたことに共産党の志位委員長は次のようにおっしゃっています。

「脱炭素社会への大規模な転換、これ必要なことは論を待ちません。」

「しかし同時に原子力からも抜け出さなきゃなんない。」

「どうやってやるのか。」

「「原発を動かす」と言っていますでしょ。」

 

また立件民主党の福山幹事長は次のようにおっしゃっています。

「安倍政権が取り組まなかったことをやろうとしていることは評価しますが、それについても具体性もなく原発をどうするかについても何ら言及がありませんでした。」

「何らかの政策集を読み上げているような所信だったと思います。」

 

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「(「2050年に脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします」というが、“宣言”という言葉を所信表明演説の中で使うのは珍しいのではという指摘について、)極めて異例ですね。」

「その意味合いは何なのかははっきりしていますね。」

「これは2050年(温室効果ガスの排出量)ゼロを国際公約にするという意味です。」

「相当重要なポイントですね。」

「で、それについても相当本気と言っていいと思います。」

「理由は人事にあります。」

「梶山経産大臣と小泉環境大臣を菅内閣は留任させているわけですね。」

「2つの重要な温室効果ガスゼロにするためのキーポストの大臣の留任、ここが1つのポイントですね。」

「(菅総裁に代わった際に交わされた自民党と公明党の政権合意の中にも入れられたことについて、)そこにも決意が表れているわけですね。」

「そこで実際にエンジンですね、どういう格好で推進するかなんですけども、2つポイントがありますね。」

「1つは画期的な技術革新を進める必要があるわけですね。」

「次世代太陽光電池が一つ、もう一つはCO2の再利用ですね。」

「ここら辺を相当進めていく必要がある。」

「そしてもう一つはCO2を出さないエネルギー源、原発の再稼働。」

「安全性を徹底的に確認したうえで進めていく必要がある。」

「この2つのエンジンと言ったらいいのか、エネルギーをこの政策の推進力にしてもらいたいと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組でも報じているように、確かに菅総理は「2050年に脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします」と表明されたように気持ちのうえでは本気で実現を目指すとの決意を示されたのだと思います。

しかし、問題は実現するための具体的なプロセスです。

アイデアよもやま話 No.4858 2030年の電源構成から見えてくること!でもお伝えしたように政府は、2050年の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を5〜6割とし、原子力による依存度は少なからず残っている数値を「参考値」として公表しています。

また梶山経済産業相はその具体策として、水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力などの再生可能エネルギーを挙げられております。

そして解説キャスターの滝田さんはその具体策として、次世代太陽光電池、CO2の再利用、そして原発の再稼働の3つを挙げられております。

 

しかし、太陽光や風力による自然エネルギー発電については天候に左右されるという弱点があり、従って電力の安定供給の観点から余剰電力を蓄えるための大量のバッテリーを要します。

更に太陽光や風力での発電は巨大台風などによる強風に対しても弱いというリスクがあります。

また原発については、核廃棄物の最終処分場の確保といった大きな課題、そして原発の周辺自治体の反対への対処といった課題があります。

いくら菅総理が本気で2050年カーボンニュートラルを実現すると宣言されても、こうした様々な課題を解決するための具体的な方策を持ち得なければ実現は“絵に描いた餅”に終わってしまうのです。

しかも国民にすれば、そうした目標を達成出来なかったでは済まされないのです。

なぜならば、このまま地球温暖化が進めば、海面上昇や巨大台風の発生、疫病の多発、あるいは海産物や農産物の収穫量の激減といった様々なリスクの上昇が見込まれるからです。

ですから、2050年カーボンニュートラルの実現は国内外を問わず、世界各国の共通のとても大きな課題なのです。

 

ということで、菅政権、およびその後の政権には、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、しっかりと実現可能性の高い具体的な方策を検討し、一つひとつのプロセスを確実にクリアしていっていただきたいと思います。

同時にエネルギー関連のより多くの企業にはアイデアよもやま話 No.2025 私のイメージする究極の発電装置とは・・・のような発電装置の開発に取り組んでいただき、是非実用化していただきたいと思います。


 
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