株式会社ワークマンについてはアイデアよもやま話 No.4850 修復する魔法の生地!でその独自に開発した生地をご紹介しました。
そうした中、昨年10月15日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でワークマン快進撃のカギについて取り上げていたのでご紹介します。
コロナ禍で苦境にあえぐアパレル業界の中でユニクロは国内の店舗数はやや減少しています。(2016年9月末は840で2020年9月末は814)
一方、店舗数でユニクロを逆転しているのがワークマンです。(2016年9月末は779で2020年9月末は885)
しかし、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長から昨年10月15日に決算発表の場で新型コロナウイルスの影響を感じさせない強気の言葉が飛び出しました。
「我々の世界中でのポジション、これはやはり自分で言うのもなんですけど世界最高なんじゃないかなと思います。」
一方、同様にコロナ禍で好調なワークマンは国内の店舗数でユニクロを抜くなど、出店攻勢をかけていますが、ユニクロの国内事業の売上高は2020年8月期で8068億円、それに対しワークマンの2020年3月期の売上高は1220億円といまだ大きな差があります。
ただコロナ禍でも既存店の売上高は36ヵ月連続で前年越えなど、業績を伸ばしています。
そんな中、攻めの一手として打ち出すのが“ワークマン女子”で、作業服や作業用品は扱わず、売り場の6割に機能性と安さを売りにした女性向けの商品を展開、20歳代から30歳代前半の女性の取り込みを狙います。
実はワークマン、女性向けの商品は今年(番組放送時)に入って対前年比で2倍に増加しているといいます。
ワークマンは今後10年で女性向け店舗を400店にまで拡大、ワークマン全体では1500店舗にまで増やす計画です。
背中を追うユニクロについて、土屋哲雄専務は次のようにおっしゃっています。
「ユニクロさんに近づくと負けるんで、ユニクロの領域はベーシックで、誰でも買う商品、うちはちょっと機能性寄りと、ユニクロの3分の2とか、そういう価格帯を目指しています。」
一方、急拡大を続けるワークマンについて、ユニクロの柳井さんは次のようにおっしゃっています。
「僕はね、競争こそが発展のもとだと思ってるんで、やっぱりそういうふうに積極的にどんどんやってもらいたいということと、我々もそうですし、ワークマンもそうですけど、新しい需要をつくった。」
「僕はこれから新しい需要をつくる、そういう服が非常に必要なんじゃないかなと思います。」
こうした状況について、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は次のようにおっしゃっています。
「最近ワークマンの土屋専務と対談させていただきまして、非常に面白い会社なんですよ。」
「一言でいうと私はこういうことかなと思っていまして、“信頼資本企業”、まさに“信頼”を資本にしているんですね。」
「例えばワークマンは従業員のほとんどの方がデータ分析が出来るんですよ。」
「表計算ソフトのエクセルを使うんですね。」
「これ結構有名なんですけど。」
「逆にいうと、そういった方々に権限移譲しているんですね。」
「信頼して権限委譲しているから、そういう方々がデータ分性をやって現場で意思決定するということです。」
「更に言えば、ワークマンはいろんなところから仕入れているんですけど、実は全部買い取りなんです。」
「ですから在庫リスクをすごく持つんですけども、やっぱり仕入れ先と長い信頼関係でそれをやっていると。」
「更にいうと、お客様も作業着のお客様ってワークマンのリピート率9割くらいって言われているんですけど、そういったお客さんて値段のタグを見ないそうなんですね。」
「だからそれくらいワークマンだったら安いに決まっているっていう信頼関係をつくっている。」
「そして最後にインスタグラムでインスタグラマーみたいな女性をうまく使って、そういった方が認知を広げているわけですけど、そういった方に商品企画みたいなのに入ってもらっているって言われてまして。」
「ですから自力というよりはいろんな方と信頼関係をつくることで、そこである意味助けてもらいながら経営しているっていう。」
「だから私は究極の“脱力系経営”って言うんですけど。」
「一方のファーストリテイリングは非常にグローバルで戦略的で、柳井さんていう素晴らしいリーダーがいて、戦略的にやっていますよね。」
「だから好対照なんですね、経営の仕方が。」
「そこがすごく面白いなと思いますね。」
「(女性向け店舗の戦略も成功しそうかという問いに対して、)私は成功するんじゃないかなと思っています。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通して、ワークマン快進撃のカギについて以下にまとめてみました。
・従業員へのデータ分析手法の研修
・現場への権限移譲
・インスタグラマーによる自社商品の認知度の向上
・インスタグラマーの商品企画への参加
・最大手のユニクロとは別なマーケットの創造(機能性重視、および低価格)
・仕入れ先との信頼関係(全ての仕入れ商品の買い取り)
・顧客との信頼関係
・顧客の高いリピート率
こうしたワークマンの特徴について、入山教授は“信頼資本企業”、および“脱力系経営”という2つのキーワードにまとめておられます。
さて、ここで以前ご紹介した長寿企業(アイデアよもやま話 No.4774 コロナ禍で学ぶ長寿企業の経営のヒント!)を思い出しました。
従業員、あるいは自社と係りのある企業や個人、そして消費者との信頼関係、あるいは“共存共栄”、“三方良し”といったような基本的な企業の姿勢は企業の存続、および成長における基本要件と言えます。
ですから、ワークマンの経営者はこうした企業のあるべき姿をきちんと理解された経営をされていると思うのです。
同様に、ユニクロの柳井会長兼社長は世界的に有名な経営哲学者、ドラッガーの熱烈な信望者と言われていますから、やはり企業のあるべき姿を深く学ばれているはずです。
なお、アイデアよもやま話 No.4774 コロナ禍で学ぶ長寿企業の経営のヒント!でもお伝えしたように、こうした企業のあるべき姿の基本的な考え方はそのまま国や個人のあるべき姿として適用出来ると思うのです。
そしてこのあるべき姿のキーワードはやはり”共存共栄”、および“信頼”の2つであると思うに至りました。