昨年10月9日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で規制改革、および行政改革について取り上げていました。
そこで、3回にわたってご紹介します。
3回目は、霞が関の働き方改革についてです。
かつては官僚の養成校と言われた東京大学、今の東大生に官僚のイメージを聴いてみると次のような答えが返ってきました。
(男子)
「官僚って世間から悪く言われるし、給料もそんなに良くない。」
「しかも残業とかがかなり激しい。」
(女子)
「官僚になるとどうしてもあまり多様性のことを考えられる人が少ないなというイメージが最近ではあって、菅政権とか安倍政権でも女性の社会進出と言っておきながら、閣僚の中での女性の人数は極めて低いままなので結局同じことが続くだけなのではないかなって。」
「(将来官僚になる可能性について、)0%ですね。」
国家公務員の受験者数は4年連続で減少(番組放送時)、官僚を目指す人は年々減っています。
現役の官僚が霞が関の働き方の実態を明かしてくれました。
「国会が開かれている間は午前2時、3時までかかることもよくありますね。」
「次の日、答弁する大臣への説明がありますので、朝6時、7時から働き始めます。」
「忙しい週には、睡眠時間が1週間で1桁しか取れないこともよくあります。」
「周りに身体的、精神的に不調をきたして限界を迎える。」
「実際に病気で休んだり、辞めてしまう職員も多く見てきましたし。」
昨年厚生労働省を辞めた元官僚の千正康裕さんは今は独立してコンサルティング会社を経営しています。
河野大臣に直接会い、霞が関の働き方改革について提言したといい、次のようにおっしゃっています。
「無駄なこと(仕事)を止めて、減らして出来た時間で現場を見に行くとか、民間の人と意見交換するとか。」
「そうすると役所の若い人も自分のやっている仕事の意味が分かって楽しく仕事が出来るし、政策の提案能力が上がるので、世の中的にも良いという、そこを目指したいんですよね。」
河野大臣は次のようにおっしゃっています。
「(霞が関の働き方をどう変えるのかという問いに対して、)これはちょっと反省で、国家公務員制度担当大臣でもありますので、これは私の仕事で「ブラック化した霞が関をホワイト化する」と号令をかけてふと自分の足元を見たら、私の部署が結構私が大臣になってからブラック化してますっていう状況があったものですから。」
「長時間労働、家庭と両立しない、あるいはプライベートな生活と霞が関での仕事が両立しない、これはなんとかしなきゃいかん。」
河野大臣は昨年10月から11月にかけて官僚の勤務時間を調査するよう指示しました。
本来働き方改革の旗を率先して振るべき官僚自身が長時間労働に陥っている現状を把握し、問題解決につなげる狙いです。
河野大臣は次のようにおっしゃっています。
「(河野大臣が進める規制改革、行政改革によって日本の姿はどう変わるのかという問いに対して、)今までのように人口が増える、あるいは同じ数の人間がいることを前提としたシステムは維持出来ないというのははっきりしてるんだと思います。」
「人手が減ってる分、機械やAIに置き換える、あるいはオンラインでスムーズに物事を回して無駄な作業はやらなくていいようになっていく。」
「もっともっといろいろな分野で想像力を高めて、新しいビジネス、新しい価値が生まれていく日本に変わっていくんだと思います。」
「(それは本当に今しなければならないことではという指摘に対して、)少し後れをとったところはあると思いますので、ここはしっかり追い付いて追い越していく、そのために頑張っていきたいと思います。」
この規制改革、行政改革をすることで世の中が便利になった、いろんなことが早く出来るようになったと国民に感じてもらうことが大事だと河野大臣は話していました。
そして行政改革については、菅総理も昨年10月9日に発言しています。
会員候補の任命問題で揺れる日本学術会議のあり方について、行政改革の対象として河野大臣のもとで見直しを行うことを歓迎する意向を示しました。
なお、“手続き規制”見直しの工程表は以下の通りです。
第1段階 押印廃止(扶養控除の申請など)
第2段階 書面・対面の廃止(転入届、オンライン診療など)
第3段階 常駐廃止(調剤薬局の薬剤師など)
第4段階 支払いのデジタル化(納税などのキャッシュレス化)
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「(第1段階として押印廃止、“脱はんこ”を掲げているが、これはきっかけに過ぎないということなのかという問いに対して、)大江さん(番組のメインキャスター)の(河野大臣への)インタビューをもとに次のプロセスを整理してみたいと思うんですね。」
「第2段階は勿論出てきまして、これが書面・対面の撤廃ですよね。」
「そして第3段階、人をその場に貼り付けることを止めるということで、産業医の問題なんかが出てきてます。」
「そういったようなプロセスを踏んで今後手続きの簡素化、見直しをどんどん進めていくということだと思いますね。」
「(そのためにも第1段階の押印廃止はかなり重要な意味を持つことになるのかという問いに対して、)これはそれ自体はあまり大したことだと思わないんですけど、ただし“脱はんこ”と“はんこ維持”でちょうど劇場化しているじゃないですか。」
「小泉政権の頃の郵政劇場みたいなかっこうで“はんこ劇場”をまずやってみてそこに目を引き付けて改革の加速を付けていく考えだと思いますね。」
「(この主役は河野大臣となるのではという問いに対して、)はい、河野さん、および平井さん、そしてテーマごとに一人加える「2プラス1」になると思いますよね。」
「更に携帯電話料金でも次の「2プラス1」が出てくるでしょうね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
そもそも国家公務員の受験者数が減少傾向にあるという事実は国の行政をより良い状態で遂行していくうえで優秀な中央官僚が確保出来ないということで国としてとても由々しき問題だと思います。
その背景としては、以下の要因が考えられます。
・官僚の長時間労働
国会の会期中の大臣答弁の資料づくりなどの激務によるワークライフのアンバランス
・官僚本来の業務のための十分な時間が取れないこと
この規制改革、行政改革により世の中が便利になった、いろんなことが早く出来るようになったと国民に感じてもらうことが大事だと河野大臣はおっしゃっているということですが、足元の官僚の働き方改革にも大いに力を入れていただきたいと思います。
なお、官僚の働き方改革は単独では出来ません。
官僚の働き方を左右する国会運営、あるいは大臣の様々な活動を支援するアプリケーションシステム(業務支援システム)の構築にもしっかり取り組んでいただきたいと思います。
そのためには政治家の方々にも自らアプリケーションシステムを操作出来るぐらいのスキルを身に着けるくらいのレベルまでシステムに馴染んでもらうことも必要です。
なお、“手続き規制”見直しの工程表が提示されていますが、これらの項目は全て具体的な項目の羅列になっています。
実際に規制改革、および行政改革を進めるに当たっては、アイデアよもやま話 No.4861 政府の進める規制改革、および行政改革について その1
“脱はんこ”、オンライン化!でご紹介したような一連のプロセスに従って進めていただきたいと思います。
そうすることによって、業務プロセス全般において、これまでの多くの問題や課題が解決出来ると期待出来るのです。