これまで3回にわたって政府の進める規制改革、および行政改革についてお伝えしてきました。
今回は昨年10月9日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、はんこ大手、シャチハタの“脱はんこ”対策についてご紹介します。
はんこ製造大手のシャチハタの担当者は次のようにおっしゃっています。
「“脱はんこ”の影響は大きく、危機感を持っている。」
「楽しさ、安心、安全を提供出来る商品・サービスをつくることが使命だと思っている。」
朱肉が要らないはんこ市場で8割以上の国内シェアを誇るシャチハタですが、従来のはんこ以外の製品開発を急ぎます。
子どもたちに手洗いをしっかりしてもらうために開発した商品「手洗い練習スタンプ おててポン」(税別500円)、手のひらに押して30秒間、石鹸で洗えば消えるという仕組みです。
新型コロナウイルスの予防で手洗いが注目される中、昨年(2020年)1月から6月までの間だけで一昨年1年間の20倍も売り上げたといいます。
更にシャチハタ システム法人営業部の斉藤可菜子さんは次のようにおっしゃっています。
「こちらが当社で多くの契約をいただいている「パソコン決済Cloud」です。」
「紙ではなくクラウド上で捺印していただけるサービスです。」
クラウド上ではんこを押すだけで社内決済が完了するシステムを3年前(2017年)に開発し、販売、契約数は今や27万件に達しました。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
朱肉が要らないはんこ市場で8割以上の国内シェアを誇るシャチハタにとって、行政における“脱はんこ”は死活問題です。
というのは、行政の“脱はんこ”化は地方自治体や民間企業にも影響を与え、日本全体が“脱はんこ”化していくからです。
そうした中、シャチハタは既にこうした流れに対して、生き残り戦略を進めているようです。
こうしたシャチハタの取り組みは、“脱はんこ”、あるいはデジタル化という時代の流れを見極めたうえでの、企業を存続させ、更に新たな成長に向けたものとして妥当であると言えます。
ただちょっと気になるのは、「パソコン決済Cloud」アプリでのクラウド上での捺印サービスです。
“脱はんこ”ははんこそのものの概念を不要とし、様々な決済機能や承認機能は全てアプリ上のボタンを押すことに置き替わるはずです。
ですから、「パソコン決済Cloud」は“脱はんこ”に移行するまでの一時的な“つなぎアプリ”ということになります。
また“脱はんこ”は行政のデジタル化の一環に過ぎず、ペーパーレス化も一気に進みます。
ですから製紙業界の売り上げにも少なからず影響が出てきます。
このように政府の取り組む規制改革、行政改革は様々な業界にも一時的にマイナスの影響をもたらしますが、長い目で見れば日本型システムの大改革につながり、生産性の向上という果実を手に入れるという成果をもたらすと期待出来ます。
そのためには台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンさんのような優れた若手の人材を登用して大きな権限を与え、規制改革、行政改革に取り組んでいただくことが不可欠です。(参照:アイデアよもやま話 No.4852 日本のデジタル政策のお手本は台湾!?)