2021年01月26日
アイデアよもやま話 No.4862 政府の進める規制改革、および行政改革について その2 縦割り行政の打破!

昨年10月9日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で政府の進める規制改革、および行政改革について取り上げていました。

そこで、3回にわたってご紹介します。

2回目は、縦割り行政の打破についてです。

 

現在、内閣には11の省に加えて内閣府と復興省があります。

この省庁間の連携が十分取れていないことがたびたび問題視されていました。

新型コロナウイルスの問題が拡大し、保健所のPCR検査がひっ迫した際にも速やかな検査が拡充出来なかった背景として“縦割り”の弊害が指摘されています。

日経バイオテクの編集長、坂田亮一郎さんは次のようにおっしゃっています。

「大学であればPCRの機械は沢山あるわけですね。」

「コロナの検査に使えるのではと大学関係者から提案もあります。」

「ただ実際問題としてPCRの検査をする当初は保健所を中心にやっておりましたので、保健所は厚生労働省(厚労省)の管轄ですので、厚生労働省と大学を所管している文部科学省との間で縦割りの弊害があったと思います。」

 

河野大臣はこうした縦割りの弊害について、広く意見を募るため目安箱「縦割り110番」を開設、意見が殺到し、翌日には受付を一時中断するほどになりました。

河野大臣は次のようにおっしゃっています。

「(縦割りの狭間は沢山ありそうだが、そうした中で縦割りの打破に何から手を付けていくのかという問いに対して、)本当に沢山あるものですから、例えば書面を止めようとか常駐義務を廃止しようとか・・・」

 

河野大臣が例に挙げたのが1000人以上の大企業に義務付けている産業医の社内常駐です。

これは厚労省の管轄です。

一方で経済産業省(経産省)などは逆に社内にいる人員は減らし、テレワークを拡大するよう企業に求めています。

河野大臣は次のようにおっしゃっています。

「8割はオンラインなのにお医者さんがそこに相変わらずいなければいけない。」

「で結局、オンラインでいろいろな人と話をする、カウンセリングをする。」

「だったらもうそこにいる必要はないよねと。」

「そういう技術の進歩をきちんと規制の中に織り込んでいらない規制を外していかないと、ただでさえ人が足りませんと言っているわけですから常駐専任義務も外せるものは全部外していきたいと思っています。」

「(行政改革というと何となく「行政の中の効率化」と思ってしまうが、そうではなくて国民の利便性を高めるのが重要ではという指摘に対して、)行政改革というと、何となく無駄をそぎ落としてスリムにする、何となく冷たいという印象があるんですけども、縦割りの狭間で困っている人にどう支援の手を差し伸べられるかという視点が今回大事だなと案じています。」

「(具体的に狭間でこぼれてしまっている例にはどのようなものがあるのかという問いに対して、)例えばホームレスの方などは例えば住民票がありません。」

「本来なら受けられるはずの支援がそのために受けられてないというところがどうもいろいろあるようです。」

「それから子どもの貧困、(対策に使った)トータルの金額を見れば、もう少し問題が改善されていてもいいはずなのにそうなっていないというのはそこの連携が取れていないのかなということもあるんだと思うんですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

河野大臣は縦割り行政の弊害についていくつか提起されていますが、そもそも組織とは“始めに組織ありき”ではなく、組織全体の役割を最大限に効果的、効率的に遂行するためにいくつかの組織に役割を分担したものなのです。

要するに国や地方自治体、あるいは企業などあらゆる組織は組織全体として何らかの目的を持っています。

ですから、組織とはその組織が寄って立つところの理念や目的を実現するための手段なのです。

そして手段であるということは、理念や目的、あるいは周りの環境の変化などにより臨機応変に変わり得るべきなのです。

しかし、いつの間にか個々の組織を取り巻く環境が変わってくると、それぞれの組織の視点から各々の業務に取り組んでいくと、複数の関連組織が相反する取り組みを始めたり、あるいはどの組織も取り組まずに漏れてしまったりといった弊害が出てくるのです。

また、同じ組織が長年続くと、いつの間にか“始めに組織ありき”になってしまい、組織防衛に走ってしまい、本来の役割を忘れてしまいがちになるのです。

こうした状況が縦割り行政の弊害と言われるのです。

 

ではこうした弊害をなくすためにはどのような対策が必要なのか、以下に私の思うところをまとめてみました。

・まず組織の理念ありき、あるいは目的ありきで組織は理念の実現、あるいは目的達成のための手段であることを組織の構成員に徹底させること

・大きな問題や課題の発生時には、組織を横断するプロジェクトを立ち上げて対処すること

・定期的に、あるいはタイムリーに組織全体を取り巻く環境の変化の際は、組織を見直し、必要に応じて個々の組織の改編を実施すること

 

ということで、菅政権には規制改革、および行政改革に取り組むに当たり、単なるデジタル化に留まらず、デジタル化を通してこれまでの業務全般を見直し、大胆な組織改編に取り組んでいただきたいと思います。

こうした意味で、言葉の使い方としては“デジタル化”よりも“DX(デジタルトランスフォーメーション)”の方が本来の目的を表していると思うのです。

やみくもに進める単なるデジタル化では、規制改革、および行政改革は中途半端な結果をもたらすのです。


 
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