2021年01月17日
No.4854 ちょっと一休み その757 『 テスラの株式時価総額がトヨタの2倍以上に』

昨年12月25日(金)放送の「グッド!モーニング」(テレビ朝日)の「池上彰のニュース検定」コーナーでテスラの株式時価総額が2倍を上回ったと伝えていたのでご紹介します。

 

今年7月(番組放送時)、アメリカのEV(電気自動車)メーカー大手、テスラは株式時価総額で初めてトヨタ自動車を追い抜いて世界トップになりました。(参照:アイデアよもやま話 No.4766 コロナ禍はゲームチェンジャー!?)。

そしてそのわずか半年足らず後の先月(昨年11月)にはテスラの株式時価総額は約54兆円となり、トヨタ(約22.8兆円)の2倍以上にも膨らみました。

世界最強の自動車メーカーと言われるトヨタが時価総額では売り上げ台数がわずか30分の1のテスラを下回っているのです。

 

その理由について、一言で言えばEVの時代が来たからということです。

いわゆるEV革命です。

テスラは販売台数こそ少ないですが、EVに限れば世界で最も多く販売しています。

更に各国が揃ってガソリン車禁止を打ち出していることもあり、世界の投資家は今後EVが一気に普及すると考えているのです。

まさに革命です。

実際にEVの普及に力を入れている中国では販売台数が急増しています。

 

なお、EV(プラグイン車を含む)販売台数のランキング(2020年1月〜10月)は以下の通りです。

 

1位 テスラ(アメリカ)         35万2792台

2位 フォルクスワーゲン(ドイツ)    13万8290台

3位 比亜迪(BYD)自動車販売(中国) 12万6290台

4位 BMW(ドイツ)          11万6963台

5位 メルセデス・ベンツ(ドイツ)     8万9624台

 

またテスラは創業時からこれまでの自動車メーカーと違い、オンラインでクルマを販売しています。

対面販売の巨大なディーラー網を抱える大手自動車メーカーに比べてコスト面で有利に働いています。

2003年に創業したテスラのトップは、今年(番組放送時)初めて民間宇宙船でISS(国際宇宙ステーション)への有人飛行を実現したイーロン・マスクさんです。

宇宙新時代を切り開いたマスクさんは自動車業界でも新たな時代の先頭を走っているのです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ちなみに1月7日(木)付けネット記事(こちらを参照)によれば、テスラの時価総額続伸もあり、マスクさんの資産が増加、世界の資産家500人を対象とするブルームバーグ・ビリオネア指数の番付で、米アマゾン・ドット・コムの創業者でCEOのジェフ・ベゾスさんからトップの座を奪ったといいます。

なおマスクさんの純資産額はニューヨーク時間午前10時15分時点で1885億ドル(約19兆6000億円)ということです。

 

さて、EV販売台数のランキング(2020年1月〜10月)では、日本でEV販売の先頭を走る日産自動車でさえトップ5に入っていません。

日産の主力EV車種「リーフ」について、その性能、価格において海外のEVメーカーと比べて劣っているとは思えません。

また、日産はテレビやネット上でもかなり宣伝に力を入れています。

そこで、なぜ世界初のEV量産を果たした日本のEVの販売台数が低迷しているのか、その理由を以下にまとめてみました。

・自動車のトップメーカー、トヨタ自動車がようやくEVの生産に乗り出したというように、日本の自動車業界全体で見ると、EVへの取り組みが海外メーカーに比べて相対的に遅い

・その背景にはユーザーもまだまだEVに比べて低価格のガソリン車、中でも軽自動車に魅力を感じていることがある

・まだまだEVの充電インフラは整備不足で、しかも充電時間が長い

・こうした状況から、国もEVの普及を推進する一方で、ユーザー、および自動車メーカーの意向をくんで大胆なEV推進対策を進めることに消極的である

 

しかし、自動車業界における時代の趨勢はCO2排出量ゼロの流れにあり、近い将来日本の自動車メーカーの得意とするハイブリッド車でさえ販売禁止にするという国まで出てきています。

ですから、今や世界的なガソリン車からEVへのシフトの流れの中で日本の自動車メーカーは総じて“ゆでガエル”のごとく、取り残されてしまうリスクが高いのです。

 

恐らく、テスラの株式時価総額が急伸してトヨタの2倍以上になった背景にはこうした、これまでの自動車業界での投資基準が大きく変わり、持続可能な社会、あるいはSDGs(持続可能な開発ゴール)といった新しい価値観が広まりつつあることが大きいと思われます。

 

自動車業界に限らず、長い目で見ると時代の趨勢をしっかり見据えたうえで長期戦略を常に見直し続けていかないと、企業、あるいは業界そのものの存続は危ういのです。

今や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れもあり、大きな時代の変革期に入っているという認識を強く持つことが特に企業経営者にとても重要だと思うのです。


 
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