10月19日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(テレビ東京)、および11月30日(月)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で東証システム障害について取り上げていたのでご紹介します。
東京証券取引所(東証)は、株式売買が終日停止した10月1日のシステム障害を受けて、設定の総点検やバックアップ装置への切り替えなどの訓練を行うと発表しました。
また、証券会社を含めた市場関係者と対策を検討する協議会を設置し、10月中に初会合を開催する予定です。
東証は終日売買停止になったことについて、再開に向けたルールや手順が明確でなかったとして、今後協議会では障害は起こり得るという前提でシステムの運用などについて議論をしていく予定です。
こうした事態はヨーロッパでも起きている状況ですが、WBSの解説キャスターで日本経済新聞
編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「(ユーロネクスト傘下の証券取引所で)取引が止まっていたのは午前中だけとは言え、ヨーロッパの各国で同時にシステムがダウンしてしまったので、これは相当深刻な事態だと僕は思います。」
「そこで、日本と比較してみたいんですけども、日本は終日止まっていたというんですけども、ユーロネクストの場合はこれらの取引所が午前中止まっていた。」
「これだけでも相当大きな事態だと思うんです。」
「更に、日本は大阪の取引所で先物(デリバティブ)は動いていたんですよね。」
「ヨーロッパではデリバティブもダウンしていますから、ダメージはこっちの方がはるかに大きいと。」
「一言で言えば、交錯取引が非常に増えていて、取引先のシステムにかなり負荷がかかっているんですよね。」
「そして、サイバー攻撃みたいなものも想定しなければいけないので、あらゆるシステム障害について、かなり事前に想定しておく必要があると思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
これまでコンティンジェンシープランの重要性については、プロジェクト管理と日常生活 No.372 『戦争勃発の究極のコンティンジェンシープラン』などで何度となくお伝えしてきました。
番組では、東証は終日売買停止になったことについて、再開に向けたルールや手順が明確でなかったとして、今後協議会では障害は起こり得るという前提でシステムの運用などについて議論をしていく予定だといいます。
これは、すなわちこれまで東証はコンティンジェンシープランについては曖昧にしてきたと告白しているのと同じです。
東証のような重要な役割を担っている組織が運営する株式売買システムにおいて、これまでこうした状況であったというのはとても信じがたいことです。
私はかつて外資系のIT企業でシステム開発に携わっておりましたが、特に重要なシステム開発においてはコンティンジェンシープランの検討は必須であると開発標準マニュアルに明記されていました。
ですから、今回の件で東証が責められるのは当然ですが、このシステムを構築したプロバイダーの責任も重大だと思います。
また、こうした事態は国内のみならず、ヨーロッパでも起きていることにも愕然とします。
ということで、国内外を問わず、またどんな組織においても、リスク管理を検討する際には、特に重要なシステムにおいては詳細なコンティンジェンシープランの検討を必須としなければならないことを徹底させるべきだと思います。
ある程度の規模になれば、どんなシステムも必ずどこかに不具合が潜んでいる可能性があるということを大前提にしてシステム開発は行われるべきなのです。
同時に、不具合が発生した時の影響度合いとその対応コストとを天秤にかけてコンティンジェンシープラン構築の可否を決定することが必要なのです。