2020年11月24日
アイデアよもやま話 No.4808 コロナ禍で注目される職業、コンタクト・トレーサー!

8月18日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍で注目されるコンタクト・トレーサー(接触追跡者)について取り上げていたのでご紹介します。 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の中で、医療現場とともに今ひっ迫しているのがコロナ対策のカギを握る保健所です。

現場を支えるために政府も支援に動き出しています。

 

なお、保健所職員の仕事は多岐にわたりますが、主な仕事は以下の通りです。

・相談の対応

・検査の実施

・入院・宿泊療養の調整

・濃厚接触者などの追跡調査

 

中でも負担が大きいのが濃厚接触者の調査です。

1人感染者が出ると、その濃厚接触者に連絡し、自宅待機をお願いしたり、PCR検査を受ける日時や病院を調整したりします。

更に職員の負担を重くしているのが、感染者を病院に搬送する際は保健所の職員が付き添う必要があるのです。

感染リスクに対する心理的な負担も少なくないといいます。

 

なお、30年ほど前には全国に約850ヵ所あった保健所は行財政改革の流れを受け、現在は469ヵ所と半減しました。(全国保健所長会調べ)

こうした状況について、全国の保健所の実情に詳しい浜松医科大学の尾島俊之教授は次のようにおっしゃっています。

「長い歴史を見ますと、昔に比べて保健所の数が少なくなってきたり、感染症に対応する職員も減ってきたりという忙しい状況になっていると思います。」

「保健所の方以外の方でも出来るような業務を民間の方にある部分の業務を手伝っていただくとか、そういうことを推進していく必要があるんじゃないかと思います。」

 

一方、アメリカでは医療現場の人手不足を解消するためのある職業に注目が集まっています。

それがコンタクト・トレーサーで、その仕事は感染者の濃厚接触者を突き止め、電話や家庭訪問をして自宅での隔離やPCR検査を受けるよう促すというものです。

感染拡大を防ぐために重要な仕事で、日本では保健所がこの役割を担っていますが、実はアメリカでは特別な資格のない一般人からも募集しています。

ニューヨーク市だけでも3000人以上が今年採用され、一定の研修を受けた後、現場に投入されました。(8月17日付けニューヨーク・タイムズより)

ニューヨーク州のコロナ対策に関与しているコロンビア大学のワファ・エルサドル教授は次のようにおっしゃっています。

「結核やエイズなどの感染症の追跡でも一般人の雇用を行ってきました。」

「新型コロナは感染者数が非常に多いので、より多くのトレーサーが必要になります。」

 

カリフォルニア州のコンタクト・トレーサーの求人情報で、資格・条件の欄には、優れた対人スキル、英語を読み書き出来る能力などとありますが、感染症の専門知識は求めていません。

時給は22.79ドル(約2400円)です。

一般人から広く雇用することで、多くの人手を確保出来る他、失業者対策にもなるとされています。

 

一方、ミシガン州ではコンタクト・トレーサーがクラスターの拡大を食い止めた事例もあります。

ミシガン州のコロナ対策に関与しているアーノルド・モント教授は次のようにおっしゃっています。

「ミシガン州のバーで100人以上の感染者が出たが、州内の様々な地域でトレーサーが活躍し、感染拡大を抑えました。」

 

アメリカで広がるコンタクト・トレーサー、専門家は日本が学ぶべき点が多いと指摘します。

昭和大学医学部の二木芳人教授は次のようにおっしゃっています。

「保健所のスタッフはどうしても保健師さんや看護師さんとか、一定の資格を持った人しか出来ない業務もあれば、一般人が肩代わりしていただけるようなお仕事も沢山ありますので、それに少し研修か教育を受けていただいて、どんどんそういう人を採用していくのは一つの手ですよね。」

 

こうした保健所の負担軽減が急務になっている状況について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「今日の番組で、ニューヨーク州でトレーサーを組織化して追跡しているという話がありましたし、アジアの方ではスマホをGPSやアプリを活用して濃厚接触者を追跡させているんですけども、これ前提条件があるんですよ。」

「それは検査体制を拡充させるということ、これが必須なんです。」

「だって、ニューヨーク州でトレーサーが濃厚接触者で(感染の)疑いのある人を見つけたら、「検査を受けて下さい」っていうんですよ。」

「ところが、今日本でも「COCOA ココア」(こちらを参照)というアプリで濃厚接触者を見つけさせると言っていますけども、実はこれでアラートが出た人が保健所に相談したら「検査を受けなくてもいい」と言われるケースが結構出ているんですよ。」

「(そうなるとモヤモヤしたままになってしまうのではという指摘に対して、)そうなんですよ。」

「今、症状が無くても感染する人が沢山いることが分かっているわけですから、電話だけでは絶対分からないんですね、感染しているかどうか。」

「ですから、むしろアプリをダウンロードした人はそういうアラートが出た時には無償で検査が受けられるくらいのインセンティブがあった方が普及が進むと思います。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

番組を通して分かった新型コロナウイルス感染拡大の問題点と対応策、およびその期待効果を以下に整理してみました。

 

(問題点)

・行財政改革の流れを受け、国内の保健所は30年ほど前から半減している

・保健所職員の仕事は多岐にわたり、新型コロナウイルス対応に十分に対応出来ていない

・感染者の中には無症状の人もいるので、感染の有無の識別が出来ない

・例え濃厚接触者を特定出来たとしてもPCR検査を受けられる体制が整備されていない

・感染者の収容施設の対応状況は十分とは言えない

 

(対応策と期待効果)

・一般の民間人でも出来る保健所の新型コロナウイルスの関連業務をコンタクト・トレーサーなどとして民間人に肩代わりしてもらう

  期待効果:保健所の職員の労働環境を改善出来、同時に失業対策としても機能する

・「COCA」といったような濃厚接触者追跡アプリを活用する

期待効果:手間をかけずに濃厚接触者を追跡出来る

・特定された濃厚接触者は全てPCR検査を無償で受けられるようにする

  期待効果:無償で受けられることにより、感染拡大阻止の可能性を高められる

・全ての感染者の増加傾向をリアルタイムで把握し、収容施設の収容者の受け入れ態勢が常に十分な状態になるように管理する

 

ということで、新型コロナウイルスについては、現在第三波が発生していると報じられており、今後とも更なる大きな波が今後何回繰り返されるか分からない状況ですので、まだまだ対応策として打つ手はいろいろあるのです。


 
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