8月14日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でカイコワクチンについて取り上げていたのでご紹介します。
新型コロナウイルスの感染への備えで重要となるのがワクチン、世界中で開発競争が加速する中、日本独自の研究も進んでいます。
そのカギを握っているのがカイコの幼虫です。
実は九州大学では100年以上前からカイコの研究を続け、その後医薬品の開発に乗り出しました。
九州大学 農学研究院の日下部宣宏教授は次のようにおっしゃっています。
「ワクチンは結構カイコの生産系とよくマッチすることが分かってきまして、・・・」
日下部教授らは3月中旬からカイコを使った新型コロナウイルスのワクチン開発を始めました。
新型コロナウイルスはウイルスの表面にある突起状のスパイクタンパク質という物質が人の細胞と結びつくことで感染します。
そこでカイコに新型コロナウイルスの遺伝子を注入し、体内でスパイクタンパク質を大量に培養、これをカイコから取り出して精製し、ワクチンとして人の体内に入れることで抗体が作られます。
これによりウイルスが体内に入っても抗体が細胞への侵入を防いでくれるのです。
カイコを使うメリットについて、日下部教授は次のようにおっしゃっています。
「一匹当たりで作れる(タンパク質の)量が結構多いのと、簡単に大量に飼育出来る。」
「そうすると(ワクチンの)単価も安くなって、・・・」
餌となる桑の葉があれば、どこでも容易に飼育出来るため、開発コストを抑えることが出来ます。
またウイルスそのものを注射する通常のワクチンより安全性が高いと日下部教授は話します。
来年には人への臨床試験を行う予定です。
更に日下部教授は同時にカイコのさなぎを使った食べるワクチンの研究も進めています。
日下部教授は次のようにおっしゃっています。
「(スパイクタンパク質の)摂取量が膨大なんですね。」
「注射の100倍の量が一匹の中に入っているわけですよね。」
「注射だったら医療行為になりますけれども、口でつまんで食べるたけなので、お医者さんがいなくても食べられるわけですよね。」
食べるワクチンの効果は未知数ですが、世界中の新型コロナウイルス対策としての可能性について次のようにおっしゃっています。
「開発途上国の方とかは中々医療も十分じゃないというところには、それほど冷蔵機械が必要ないようなところに虫を持って行って食べてもらうということも可能ですし、可能性は結構大きいんじゃないかなと思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
九州大学の日下部教授が開発を進めているカイコワクチンについて以下にまとめてみました。
・ワクチンはカイコの生産系とよくマッチすることが分かってきた
・カイコを使うメリットは以下の通りである
一匹当たりで作れるタンパク質の量が結構多い
カイコは簡単に大量に飼育出来る
従ってワクチンの単価も安くなる
餌となる桑の葉があれば、どこでも容易に飼育出来る
従って開発コストを抑えられる
ウイルスを注射する通常のワクチンより安全性が高い
・同時にカイコのさなぎを使った食べるワクチンの研究も進めている
注射の100倍の量が一匹の中に入っている
口でつまんで食べるたけなので医療行為にならず、容易に食べられる
従来のワクチンのように超低温での保存を要しない
従って世界中の新型コロナウイルス対策として大きな可能性がある
さて、日下部教授らは3月中旬からカイコを使った新型コロナウイルスのワクチン開発を始め、来年には人への臨床試験を行う予定といいますが、この開発スピードはとても速いと思います。
また、このカイコワクチンの製造プロセスは新型コロナウイルス対策としてだけでなく、今後発生してくる様々なウイルスの感染対策としても応用出来ると期待出来ます。
ということで、是非政府には新型コロナウイルス対応のワクチン開発の一環として、このカイコワクチン開発に向けた、ヒト、モノ、カネでの最大限の支援をしていただきたいと思います。
それにしても、日下部教授も「ワクチンはカイコの生産系とよくマッチする」とおっしゃっているように“アイデアは既存の要素の組み合わせである”とあらためて思います。
さて、私たち人類はこうした組み合わせを闇雲に試行するには時間的な制約から不可能です。
しかし、スパコンやAIの進化により、今やこうした無限とも言えるほどの様々な組み合わせによる試行錯誤は可能になってきつつあります。
ですから、将来的には技術的に思わぬ組み合わせによるいろいろな問題や課題の対応策が発見出来るようになるのではないかと期待が膨らんできます。