2020年11月05日
アイデアよもやま話 No.4792 トヨタに見る競争力のある企業の要件!

8月6日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でトヨタ最終黒字の背景について取り上げていたのでご紹介します。 

 

新型コロナウイルスが業績に大きな影を落としてきたのが自動車業界です。

多くのメーカーの今年4〜6月期の最終損益は赤字に転落しています。

そうした中、日本のメーカー、3社については以下の通りです。

日産  2855億円 赤字

ホンダ  808億円 赤字

マツダ  666億円 赤字

 

こうした中、市場を驚かせたのがトヨタの決算です。

8月6日に発表した今年4〜6月期の最終損益は以下の通りで黒字を確保したのです。

純利益 1588億円(前年比 −74・3%)

更に4〜来年3月までの通気の業績予想も以下の通りで黒字になると予想しています。

純利益 7300億円(前年比 −64・1%)

5月の決算発表時と比べて販売の回復ペースが加速しているといいます。

特に回復のスピードが速いのが中国市場です。

北京にあるトヨタのある販売店では、平日の店内では楽しそうに試乗する女性の姿が見られます。

そして次のようにおっしゃっています。

「乗った感じはとっても最高だわ。」

「座り心地が気持ちいいわね。」

 

中国では4月以降、それまで買い控えていたお客の消費が戻りつつあります。

3月末までに中国の全店で営業を再開したトヨタでは1月〜7月までの累計販売台数は以下の通り、前年を上回るまでに回復しました。

91万8700台(前年比+1.1%)

 

そこには次のような理由があります。

ある男性購入客は次のようにおっしゃっています。

「みんな「壊れない トヨタ」と言っているよ。」

「トヨタは特に値崩れしにくい。」

 

また、こちらの販売店の責任者は次のようにおっしゃっています。

「(トヨタ車は)資産運用の対象になっている。」

「もともと50万元(約750万円)のクルマが60元(約900万円)で売れている場合もある。」

 

新型コロナで経済情勢がいまだ不安定な中、中国の消費者の間では自動車をただの売り物ではなく資産として捉える人も少なくありません。

そこでブランド力を持ち、売却する際に値崩れがしにくいトヨタ車に注目が集まっているのです。

こうした中国市場での回復などを受け、トヨタは今季(21年3月期)の世界販売台数を以下のように前回の予想から20万台に引き上げました。

前回予想 890万台

今回予想 910万台

 

中国での販売回復はトヨタだけではありません。

ホンダ(中国)も中国での7月の新車販売台数が半年ぶりに前年を上回り、以下の通り7月として過去最高を記録しました。

7月 6646万台(+17.8%)

 

専門家は、中国市場に限らず世界全体の市場は回復に向かっているといいます。

ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹さんは次のようにおっしゃっています。

「国内(市場)は恐れていたほどは悪化していないというのが正直な印象でして、アメリカ(市場)も不況だ、不況だと言われる割には実は自動車の販売はよく売れていまして、ピーク時の1700万台から見れば、もう8割近いところまで戻ってきているんですね。」

「右肩上がりでアメリカ(市場)も戻ってきている。」

 

ただ新型コロナの感染状況が変化する中、不透明感も強いと指摘します。

「第2波の影響が読めない。」

「第2波の影響によっては世界の経済がもう一段、来年悪化しているかもしれない。」

「その時にいったん戻った需要がまた順調に戻るとは言い切れないですね。」

「自動車産業は間違いなく、より競争が激化しますし、その中での勝ち負けは間違いなく際どく割れてくると思います。」

 

こうした状況について、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は次のようにおっしゃっています。

「(コロナ禍において、トヨタは4〜6月期の黒字を確保したが、自動車業界は軒並み赤字となっており、今後の自動車メーカーの課題について、)いろいろなポイントがあるんですが、非常に重要なポイントだと思っているのがサプライヤーなんですね。」

「つまり自動車というのは結局、自動車メーカーだけで作っているわけではなくて、様々なサプライヤーがあって作っているものですので、実はサプライヤーの方が苦しくなってきているんですね。」

「特に一次、二次、三次の一次くらいはいいかもしれませんが、二次、三次くらいのサプライヤーさんはそんなに規模も大きくないですから、今本当に苦しくなってきていて、もしかしたら倒産するかもしれないと。」

「そうなるとサプライチェーンそのものが痛んでしまいますので、そうなると仮に将来市場が本格的に戻ってきてもサプライヤーがいないと自動車メーカーの競争力はなくなりますから、意外とトヨタなんかは比較的この辺の意識があると思うんですが、この辺の意識が弱いメーカーもあると聞いていますので、是非このサプライヤーというのを意識して欲しいなと思いますね。」

「(ただメーカーとしても業績が下がるとコスト削減という方に行きますが、具体的にどうやって守っていったらいいのかという問いに対して、)その辺の値下げのところを少し緩めてあげるですとか、場合によっては部品の価格の見直しをしてあげるとか、まずはそういったところからサポートしてあげることが重要かなと思っています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

それにしても、中国におけるトヨタのブランド力の高さは日本では考えられないほどです。

もし、日本でもある自動車メーカーのクルマの下取り価格が購入時よりも10万円単位で高ければ、私も購入時の価格が多少高くてもそのメーカーのクルマを選んでしまうと思います。

また、資産家の中にはクルマのオーナーとしてよりも、投資目的での購入をする人も出てくるでしょう。

 

さて、以下に私なりに番組の内容を整理してみました。

 

(クルマ市場の環境)

・コロナ禍における米中の市場の底堅さ

・厳しいサプライヤーの経営

・今後も新型コロナの感染状況が変化する中、不透明感が強い

 

(トヨタの高い競争力)

・高品質なクルマ

・ブランド力の強さ

・売却する際の値崩れのしにくさ

・サプライヤーとの共存共栄意識が比較的高い

 

こうしてみると、どの業界にあっても激しい競争を勝ち抜く企業における要件が見えてきたので以下にまとめてみました。

・魅力ある商品

・高品質

・サプライヤーとの共存共栄

・妥当な価格

 

こうした要件を満たすことにより、ブランド力が高まり、下取り価格が高くなるのでユーザーの購買意欲が相対的に高まり、売り上げが伸びるという好循環をもたらすのです。

 

そうは言っても、今回のようなコロナ禍によるパンデミック、あるいは金融恐慌などで市場全体が大きく縮小する事態になってしまうリスクは常につきまといます。

それでも上記の要件を満たすような競争力のある企業は何とか切り抜けて最後の最後まで生き残ることが出来るのです。


 
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