2020年11月01日
No.4788 ちょっと一休み その745 『DXの重要性について認識不足だったこれまでの政権!』

7月10日(金)放送の「日経プラス10」(BSテレビ東京)で「コロナで見えた“日本の弱点”」をテーマに取り上げていたのでご紹介します。

 

今回のゲストコメンテーターはオリックス シニア・チェアマンの宮内義彦さんで、オリックス・バッファローズの球団オーナーでもあり、小泉政権などで規制改革会議の議長も務められました。

その宮内さんは次のようにおっしゃっています。

「(政府や企業はコロナの対応に追われたが、この様子について、)今日は“日本の弱点”を申し上げることになるんですけど、その前にまず日本の良いところは随分見えて来たんですね。」

「やはりコロナに対して日本の清潔感というのはとても良かったと思いますし、それからコロナは何とかしないといけないという時に日本人の持つ公共性の高さといいますか、これも示せた。」

「それから連帯感みたいなものも出来たと。」

「とっても良いところは沢山出たと思うんです。」

「それと同じくらいで、「いや、これは大変だな、何とかしないといけない」という弱点も見えて来たと思います。」

「そういう中で、今日は特に弱い部分について、私の感じで申し上げたいと思うんですけど。」

「いくつかあるんですけど、これを詰めてみますと2つ出てきたかなと思いました。」

「まず一つはデジタルトランスフォーメーションといいますか、今世界で起こっている、いわゆるDX、これが日本はとても遅れてしまっているなということを実感したと、これを何とかしないといけないということと。」

「それから政治行政の効率性、あるいは国民との密着度、特に国民をどう管理というか、一緒に運営していくかという、この危機にあらわになったマイナス点、これを何とかしないといけない。」

「この2つはある意味で非常につながっているとこもあるんですね。」

 

(DXについて)

「(DXは、ITの普及によって社会構造そのものを大きく変える可能性があるということだが、日本は遅れているのかという問いに対して、)例えばコロナ対策一つ見ましても、中国のようなことは出来ないということははっきりしているんですけども、例えばお隣の韓国がやったこと、あるいは模範生と言われている台湾のやっていること、そのコロナに対応してDXを本当に駆使してやっていると。」

「それに対して、日本は実に申し訳ないけどもたもたした感じで、動きが遅かった。」

「その結果、いくつかのマイナスが起こったんじゃないかと。」

「DXはコロナ対策だけじゃなく、各企業にとっても同じなんですね。」

「例えば「在宅勤務しろ」と言われて、「さて、どうするんですか」というところから始まって、テレワークをスムーズに出来るまで、立ち上がるまでにどなたも随分苦労されたと思います。」

 

「それから、例えば学校ですね。」

「一斉に休校になりました。」

「「どうするの」と。」

「海外を見ているとかなりテレスタディと言いますか、そういうことを一斉にやっていると。」

「日本は「どこどこがやっている」というのがニュースになるくらいで、ほとんどのところは、子どもをどうしたらいいかというようなことで教育面でも遅れていた。」

 

「私、昔、規制改革で政府といろいろご一緒に仕事をしたんですけども、これ15年とか20年前なんですね。」

「その時に政府もいわゆる当時IT、ITを“イット”と呼んだとか、呼ばないとか冗談があったんだけども、ITを何とかしないといけないということで、総理を本部長にする対策委員会みたいなものが既に立ち上がっていたわけですね。」

「もう気が付いていたのに、このコロナの騒ぎになってみると、諸外国の中からある意味ではとても遅れてしまったなということを実感出来たと。」

「これ残念であると同時に気付かせてもらったということで、これから頑張らないといけない大きな課題だと思います。」

 

「(今回、コロナによって図らずもやりたくて出来なかった実験が出来たりとか、先送りしていた決断をせざるを得なくなった経営者も多かったと思うが、例えば遠隔医療でも5Gの普及によって結構進む可能性があるとか、遅れていた分、ここから先の巻き返しに期待したい部分が多いが、)遠隔医療については私が規制改革をやっている時からもうテーマとして出ていたんですけど、一歩も動かなかったんですね。」

「それがコロナになって医師会の方もコロナのためだけには一時的に遠隔医療を認めましょうと、そこまで来たんだけど、世界を見るともうこれ常識になっているんですね。」

「ですから遠隔だけで病気を治せというのではなく。両方を組み合わせながら、遠隔のいわゆるデジタル機器をもっともっと利用すると、患者にとってプラスになるところは非常に大きいわけですね。」

「ですから一つ一つのアイテムを取っていっても、何か止まっている部分が多いんです。」

「何か止まっても良かったと。」

「私もこの危機の間に一度あるところで、私が宮内だと分かっていながら、それでもこの書類にハンコが要るんですというんで家まで取りに帰ったという、本人確認のためのハンコじゃなかったのと。」

「そうではなく、ハンコのためのハンコとなっている。」

「ああいうものを使っているのは世界で他の国であるんでしょうかね。」

 

(行政の危機管理体制について)

「行政というのは、国というか、地方も含めて粛々と動かす組織ですから、こういう危機の時には中々対応出来ない。」

「それを動かすのが政治なんですけど、政治自身が官僚的になっちゃって、行政の上に乗っかってしまっているんじゃないかなと。」

「だから、抜本的に動かすということは中々出来ない。」

「例えばコロナ対策についても従来通りの厚生労働省の枠内で何とかしようと。」

「対策本部が出来たにしても、縦割り行政というものの枠をどうしても抜け出れない。」

「縦割り行政になりますと、縦割りの中、タコツボに入ってしまうという表現がありますけど、それと同時に権限は渡したくない。」

「それから責任は出来るだけ逃れたいという、本能的なものがありますから、中々オールジャパンでコロナで闘うぞという体制が出来ないんですね。」

「中央政府もそうだし、地方と中央との関係もオールジャパンに中々ならない。」

「ですから一番始めの検査一つ取りましても保健所の能力が検査の能力になっているわけですね。」

「そうでなく、日本の医療機関全部を巻き込んで出来るだけのことをやろうということになれば、もっと出来た。」

「それから例えば、一つの目安として37.5℃、それから4日間、あれ通達でもなんでもないのに完全に規制として動いちゃって、熱がまだ3日間だから診てもらえないとかね。」

「そういう、どういうのかな、国民の立場に立った“You atittude(相手の立場になって考える態度)”というかな、それが消えていってしまった行政になっている。」

「そこを何とかしないと日本は日本の市民一人ひとりが行政に頼るということが中々出来ない。」

「これは何とかしないとけないなと思いました。」

「(これを機に本当に規制改革であったり、一気に思い切ったことが必要になってきそうだという指摘に対して、)それは規制改革なんかをやって、民間委員でこれはやるべきだということはきっちりと議論すれば、やらないといけないテーマは出るんですけど、これをやる力があるのは政治なんです。」

「政治が決断して利害関係のある人を説得する、「ここは辛抱しろよ」と。」

「「世の中違ったからこっちへ来るんだ」という強い説得力を持って、ついて来てもらわないと動かないんですね。」

「そこが中々、政治がみんなに妥協しちゃって、10歩動かないといけないところを3歩しか動かないというようなことがちょっと続き過ぎた。」

「(族議員という人たちが安倍内閣になってちょっとそこは薄まったという印象もあるが、やはり未だ政治が思い切って決断するという局面がもう少しあってもいいという指摘に対して、)そう思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、宮内さんの指摘された内容を以下にまとめてみました。

(日本の良いところ)

・清潔感

・公共性の高さ

・連帯感

 

(日本の弱点)

・DX推進の重要性に対する政治家の認識不足、およびリーダーシップの欠如

・行政の危機管理体制の無さ

 

こうして見てくると、新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられている大きな理由は、清潔感や公共性の高さなど、本来日本人が持っている長所にあるようです。

 

一方、DXの推進については、既に小泉政権の時代(2001年〜2006年)始まりの直前、2001年1月6日、IT基本法に基づき、「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(IT戦略本部)が 内閣に新設されました。

そして、「IT基本戦略の特色と問題点」(こちらを参照)には、既にDXに向けた取り組みの基本方針とすべき内容が盛り込まれています。

せっかくこうした戦略が打ち立てながら、具体的な実施についてはこれまでほとんど進んでいなかったのです。

ところが、図らずも今回のコロナ禍での給付金配布の遅れなど様々な行政の不備が表面化し、しかも台湾や韓国など他のDX先進国に比べて明らかな遅れを国全体が認識することになったのです。

 

DXへの取り組みは、国全体の生産性の高さを左右するとても大きな国家レベルの課題です。

しかも、宮内さんも指摘されているように、DXの取り組みは行政改革と表裏一体なのです。

仮にDXという観点から単なるデジタル化を推進すれば、その効果はとても中途半端な結果に終わってしまいます。

ですから、行政のあり方を根本的に見直し、その実現に向けてDXをいかに使いこなすかという視点がとても重要なのです。

また、こうした推進には日本国の指導者たる、菅総理のリーダーシップが不可欠です。

なぜならば現在の縦割り行政、あるいは反対勢力の強い反対を押し切るには強力なリーダーシップが必須だからです。

幸いにして、菅総理は官房長官時代から官庁に対してリーダーシップを発揮してきたと報じられています。

ということで、DXにおける“失われた20年間”を取り戻すべく、菅総理の強力なリーダーシップに期待したいと思います。


 
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