7月27日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍におけるオンラインでの1兆円ビジネスについて取り上げていたのでご紹介します。
総合商社、三井物産株式会社はコロナ禍で海外への移動が制限される中、巨額のビジネスを新たな手法で成立させたといいます。
三井物産の本社(東京・大手町)は今年、真新しいビルに移転しました。
番組の取材を受けた安永竜夫社長は次のようにおっしゃっています。
「(本社内を案内しながら、)違う部署の人たちがここに集まって仕事をしています。」
「これは今、自分のプレゼンテーションを一生懸命披露している状況です。」
フロアには仕切りがありません。
事業部ごとにサイロ化された従来の総合商社のイメージを一新、そこには変革を迫られたトップの決断がありました。
世界中で人やモノの移動が止まった4月、ニューヨーク原油は初のマイナス価格に、市場は大混乱に陥りました。
資源・エネルギー分野が収益の6割を占める三井物産は大ダメージを受けたのです。
こうした状況において、安永社長は次のようにおっしゃっています。
「人が動かなくなったことによって需要が消えてしまった部分、これがやはりモビリティ関連、自動車ですとか船ですとか、あるいは航空機といったビジネス、こういったものが例年に比べるとマイナスということで、今年の事業計画は1800億円に下方修正せざるを得なかったと。」
「需要がいきなり無くなったわけではないので、供給過多という状況の中で投げ売りが起こったっていうことですので、いずれは戻るとは思っていました。」
「ただ、戻りは今回は遅いという感覚は強くあります。」
世界を舞台にビジネスをする総合商社が海外に行けない事態に、そこで社長が決断したのが事業のリモート化とオンライン化です。
その象徴的な現場がインドのハリヤナ州にあります。
日本のカレーチェーン、CoCo壱番屋の看板が見られます。
三井物産はCoCo壱番屋とタッグを組んで合弁会社を設立し、カレーの本場、インドで8月に1号店をオープンさせる予定です。(こちらを参照)
インド三井物産の野村保さんは次のようにおっしゃっています。
「インドで消費者ビジネスをやりたいと思っていた三井物産と元々インドにいつかは進出したいと思っていた壱番屋さんの想いが一致して、最後は三井物産が背中を押したというかたちでスタートしました。」
カレーのルウは日本から輸入し、お米も日本米、果たしてインド人の口に合うのかどうか、インド人スタッフは次のようにおっしゃっています。
「カレーのルウは最高だ。」
「チキンカツもサクサクしてジューシーだ。」
インドの13億人の胃袋をどこまで満たせるか、三井物産の野望も膨らみます。
そうした海外事業を支えているのが東京のリモート部隊です。
コロナ禍で現地に人を送り込めなくなった今、三井物産ではリモートでマーケティングや事業運営を指揮しています。
こうした状況について、安永社長は次のようにおっしゃっています。
「デジタル化の流れは、働き方もそうですし、ビジネスもより非接触型の仕事に移っていく。」
「今私が社員に言っているのは、かつては商品知識ですとか業界ネットワークですとか契約の基礎知識ですとか、あるいはファイナンスというものが商社パースンの基本要素、基礎実務として必要な部分だったんですけど、そこにデジタルトランスフォーメーション(DX)、AIっていうのも入って来ると。」
「この部分に対する知見なくしてビジネスの変革を起こすことは出来ないと思っています。」
「実は一つ嬉しいニュースは、アフリカのモザンビークでLNG(液化天然ガス)のプロジェクトを去年最終投資決定して1兆5000億円の巨大な融資なんですけども、細かな交渉事に至るまで全部オンライン会議で済ませた。」
アフリカ向けの投資で過去最大級となるLNGの巨大プロジェクト、本来なら現地へ飛ぶはずがオンラインで契約成立、こうした交渉が世界で進行中です。
安永社長は次のようにおっしゃっています。
「(需要も消えて、すごく経済が落ち込んでしまったが、これから回復軌道はどうなると見ているかという問いに対して、)カタカナでいうと、「レ」ですけど、ロックダウンの状況がいつまでも続くわけではないですし、いずれ経済活動の再開と感染対策、第2波、第3波への対応と両立しながら動いていくわけですけども、構造調整をしながら経済活動の再開をしていく中で、当然回復の道筋は緩やかにならざるを得ないとは考えています。」
なお、経済回復の道は緩やかにならざるを得ないと安永社長はおっしゃっていますが、それと同時に生活に必要な産業、例えば自動車業界ですとか航空業界、更にはヘルスケア分野などはそれぞれの国でサポートをする体制が取られてきているので、世界経済として見れば最悪シナリオよりは良いレベルになるのではないかとおっしゃっていたということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
コロナ禍で自由に海外に行けない事態において安永社長が決断した事業の“リモート化”と“オンライン化”は世界を舞台に事業を進める総合商社にとってとても理に適っています。
何より、今回ご紹介したように、現実に1兆円ビジネスをオンライン・コミュニケーションだけで実現させたという実績は三井物産にとって今後のビジネス展開において大きな自信につながったと思います。
またこの事業の“リモート化”と“オンライン化”は海外事業のみならず国内事業においてもそのまま通用します。
そして次のようなメリットが期待出来ます。
・事業のスピーディ化
・海外駐在員の削減
・出張旅費の削減
・オフィススペースの削減
・従業員の働き方改革(在宅勤務など)
ということで、今回ご紹介したコロナ禍における三井物産の取り組みはコスト削減と生産性の向上、および従業員の働き易さに大きく寄与すると期待出来ます。