プロジェクト管理においてプロジェクトを無事に完了させるためには大なり小なり解決すべき課題があるものです。
そこでプロジェクト管理の管理項目として課題管理があります。
そうした中、報道記事に接すると、菅新政権における官僚の活用を巡る課題が見えて来たので課題管理の観点からご紹介します。
まず昨年12月26日(木)付けネットニュース(こちらを参照)で「「月100時間残業」活力奪う 官僚、長時間の国会待機」というタイトル記事を目にしたのでその一部をご紹介します。
・中央省庁は長時間勤務やハラスメントなどで現場の疲弊が目立ってきた。
・一人ひとりが効率的に働き、生産性を高めることで人手不足や長時間労働を解消する働き方改革が進む。霞が関はその旗振り役でもあるはずだが、実態は非常識ともいえる長時間労働が残る。
・代表的な例が「国会待機」だ。国会の会期中、役所の担当分野・法案について与野党の議員から審議での質問を聞きだし、閣僚らの答弁案をつくる。議員の質問通告は委員会を開く日の2日前の昼までが原則だが、大半は守られないという。修正を重ねた大量の答弁案を印刷し、ホチキスでとじて、国会に自転車で届ける――。審議の前はこの作業が延々と深夜まで続く。残業時間が月に100時間を超える職員は珍しくない。
・国会は衆参のルールで「新聞・書籍等(類)」を審議中に原則、閲読できない。タブレットはこの「等(類)」にあたり、許可なしに持ち込めない。
・参院の厚労委員会では原則、役所の職員らは担当の質疑を終えても「手洗い」以外の理由で質疑中に席を外せない。散会しない限り、次の仕事に取りかかれない。
次に7月24日(金)付けネットニュース(こちらを参照)で「若手の男性官僚、7人に1人が数年内に辞職意向」と報じていたのでその一部をご紹介します。
・30歳未満の若手男性官僚の7人に1人が、数年内に辞職する意向であることが、内閣人事局が実施した意識調査で分かった
・背景には仕事への不満や、長時間労働で家庭との両立が難しいとの不安があり、国家公務員の働き方改革が急務となっている実態が浮き彫りとなった
・政府は若手の離職に危機感を強めており、全府省庁に対して7〜9月の働き方改革推進強化月間に、集中して業務改善に取り組むよう通知した
・人事局担当者は「最初は誰もが公に貢献する志を持って官僚になったはずだ。継続して働いてもらえるよう職場の魅力を向上させたい」と話す
次に4月7日(火)付けネットニュース(こちらを参照)で「若者の公務員離れ」が更に加速する3つの理由について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
・キャリア官僚離れから東大受験の法則が崩壊
キャリア官僚の登竜門である国家公務員の総合職試験(学卒)では、2016年度では1507人の合格者のうち742人が辞退または無応答者として採用プロセスの途中で離脱しています(出所:公務員白書)。
そして入省後の若手官僚でも退職者が急増しています。
・骨のある官僚が左遷される現状
なぜ公務員離れが加速しているのか、そのデメリット、つまり若者が公務員離れを起こした3つの理由を説明します。
1つめの理由は「イエスマン化」です。2014年に内閣人事局が設置されて、キャリア官僚の頂点にあたる300人ほどの高級官僚の人事権を官邸が握ることになりました。それを境に5年間で官僚の弱体化が目を覆うほどの酷さで広がりました。骨のある官僚が左遷されて、政治家にとって使いやすい官僚が重用された結果です。
・働き方改革を無視したサービス残業が当たり前
2つめの理由は、「残業の多さ」です。特にキャリア官僚はサービス残業が常態化していると指摘されています。
かつてはキャリアを上り詰めるたびに、絶大な権限が与えられました。それが残業の多さを補ってあまりある報酬となっていました。しかし、そのキャリアレースが実力ではなく「イエス」といえる能力で測られるようになってしまったのです。このため、まだこの世界にどっぷりとつかっていない若手実力派は、今が離脱タイミングと考えて霞が関を離れるようになりました。
2015年度に総務省がまとめた調査では、地方公務員の残業時間が158.4時間となり、民間事業所の残業時間154時間を上回る結果になりました(出所:地方公務員の時間外勤務に関する実態調査)。
国家公務員の場合はさらにひどく、残業時間は全体平均で235時間、そのうち本府省では366時間と霞が関の残業量が突出しています。民間では36協定を超える違法であり、過労死ラインの目安とされる720時間を超えて勤務する国家公務員が全体の8%もいます。でも、それが社会問題になる気配すらない。いまや公務員のほうが激務なのです(出所:公務員白書)。
・公務員の大規模リストラも起こり得る
3つめの理由は「公務員の安定神話の崩壊」です。公務員はクビにならない、国や自治体は決して破綻しない、というのは今や事実ではありません。実際には政府や自治体側のコストを理由に公務員がクビになる流れが完成しつつあります。そのきっかけは民営化です。
最初の導入は、中曽根内閣が手がけた3公社の民営化、つまり公共事業体と呼ばれていた3つの事業をそれぞれNTT、JR、JTの民間会社に変えたことでした。
次に大きな転機となったのが小泉内閣で行われた郵政民営化です。
そして今、その日本郵政では郵便局員1万人のリストラが話題になっています。
・「公務員は安泰」という時代の終焉
さらに公務員には水道、清掃、交通といった「現業」と呼ばれる業務がたくさんあります。こうした業務は主に地方自治体が担ってきましたが、コスト負担が重いことからたびたび民営化が取り沙汰されています。「公務員は安泰」という時代は終わりかけているのです。
責任感ある若者が「それでも公務員として社会に尽くしたい」と思える程度の魅力は残さなければ日本社会は成り立たない。これ以上の公務員の地位の悪化は日本にとってマイナスです。公務員離れは私のような民間人にとっても対岸の火事ではなく、私たちの未来を決める重要な問題なのです。
次に9月10日(木)付けネットニュースで菅官房長官(当時)との政策面で対立して左遷された官僚について取り上げていました。(詳細はこちらを参照)
以上、4つのネットニュースをご紹介してきましたが、ここから菅新政権における官僚の活用を巡る課題が見えて来たので以下にまとめてみました。
・中央政府における「働き方改革」の推進
国会議員の国会関連の活動プロセスの見直し
官僚の業務プロセスの見直し
これらの見直しから、無駄な業務を排除し、生産性向上により、国会議員、官僚の双方にとって働きやすい環境を整備すること
そのための手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点から業務プロセスを再構築すること
・政府は優れた官僚の具申を積極的に取り入れることにより、これからの日本のあるべき姿を追求し続けること
・一方で、政府はその意向に反する官僚の具申に対しても、それを理由に左遷するようなことはしないと明言すること
・一般企業の模範となるような国家運営を目指し、多くの優れた若者たちが官僚を目指したいと思えるような官僚のあり方を目指し続けること
以上、まとめてみましたが、官僚の活用を巡る課題について見てきましたが、どうもその根幹は政治家の方にあるようです。
キーポイントは以下の2つです。
・優れた政治家のリーダーシップ
・政治家はあるべき日本のかたちを実現するために、官僚の能力を最大限に活用すること
ということで、“官僚を生かすも殺すも政治家次第”ということになります。
いくら能力のある官僚が沢山いても、それを使いこなす立場の政治家がしっかりしていなければ“宝の持ち腐れ”になってしまいます。
一方、素晴らしい目標を掲げたリーダーシップのある政治家の下では、官僚は思う存分にその能力を発揮することは明らかです。
報道記事からは、政府が推進する「働き方改革」はどうも官庁や民間企業が対象のようですが、“まず隗より始めよ”の通り、国会議員は自らの「働き方改革」に取り組むべきなのです。
その手始めとして、特に年配の国会議員にもパソコンやスマホの基本的な操作に慣れていただきたいと思います。