2020年09月20日
No.4752 ちょっと一休み その739 『夢の”人工冬眠”がマウスで実現!』

これまで人工冬眠について、No.764 老舗のすごいアイデア企業 林原生物化学研究所!

、そしてNo.4122 ちょっと一休み その664 『これからの時代の4つのキーワード その2 半永久的な寿命の獲得!』でお伝えしてきました。

そうした中、6月11日(月)付けネットニュース(こちらを参照)マウスでの“人工冬眠状態”の実現について取り上げていたのでご紹介します。

なお、同様のより詳細な内容についてはこちらのネット記事を参照下さい。

 

本来は冬眠しないマウスを人工的に冬眠状態にすることが出来たとする成果を筑波大と理化学研究所のグループが発表しました。

将来的には人にも応用出来る可能性があるといいます。

人工冬眠は救急医療や臓器保存といった医療分野のほか、酸素や食料が限られた有人宇宙探索にも生かせると期待されます。

 

哺乳類は普段、体温を一定に保っています。

ただ、寒い時期や食べものが少ない時期などには自らの代謝を落として「究極の省エネ状態」にすることで、通常ならば組織障害が出るほどの低体温になりながらも生きられる種がいます。

シマリスやヒグマなどが知られています。

ただ、詳しいしくみなどはわかっていません。

 

筑波大の桜井武教授と理研の砂川玄志郎・基礎科学特別研究員らのグループは、マウスの脳の視床下部にある特殊な神経細胞の集まりである体温や代謝をコントロールしている部位に目を付けました。

マウスに特定の化学物質を注入して刺激すると、体温と酸素の消費量が大きく下がった一方で、代謝は適切に制御され、冬眠中の動物に似た状態にすることが出来たといいます。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

これまでシマリスやヒグマなどの冬眠は知られていましたが、詳しい仕組みなどは分かっていませんでした。

そうした中、本来は冬眠しないマウスを人工的に冬眠状態にすることが出来たという成果は生物学上の画期的な大発見だと思います。

それにしてもなぜヒグマなど一部の動物だけが冬眠するのか不思議です。

 

この研究を更に進めれば、将来的には人にも応用出来る可能性が出てきます。

人への応用には次のようなメリットがあります。

・救急医療や臓器保存といった医療分野

・酸素や食料が限られた有人宇宙探索

・本人の希望による何十年後、あるいはそれ以上の未来へのジャンプ

 

中でも火星移住計画が進められている状況において、人類がかつて海洋進出していた“大航海時代”と言われた時のように今後“宇宙大航海時代”を迎えるにあたって“人工冬眠”はとても有効だと思います。

“人工冬眠”はSFの世界の話だと思っていたのが、現実になる可能性が近づいているのです。

 

なお、日立ソリューションズによる9月8日付けのメルマガで“人工冬眠”についてより詳細な内容を報じていたのでその一部をご紹介します。

なお、この記事の内容は小児科医を経て冬眠研究の道に進んだ理化学研究所の砂川玄志郎さんに、冬眠の謎について語っていただいたものです。

 

哺乳類の体温は、通常は37℃プラスマイナス2℃から3℃の間に保たれています。普通はここから体温が極端に下がると命が危険にさらされます。人間の場合、体温が32℃か31℃になると心臓の動きが鈍り、30℃を切った状態が長時間続くと死に至ります。

 

しかし冬眠動物は、4℃から5℃くらいの体温で数カ月間生きることができます。ここには何かトリックがあるはずです。代謝が下がるだけでなく、低い温度で生きられる仕組みが隠されているはずです。しかし、それが何かはまだ分かっていません。

 

最後の氷河期が終わったのが今から2万年ほど前です。2万年前にはすべての動物が冬眠をしていたのではないか。その後気候が徐々に温暖になるにしたがって、冬眠をしないという選択をする種が増えてきた。そんな説があります。

 

あれ(雪山で遭難した人が低体温の状態で生き延びたという例も国内外でいくつか報告されていること)も一種の冬眠かもしれません。僕は、人間の中にも遺伝的に冬眠可能な人がいるのではないかと考えています。例えば、冬眠に必要な100の因子があって、そのうちの一つでも欠けると冬眠できないが、たまたまそれを失っていない人がいる。そんな可能性があると思うんです。その因子が何かが分かれば、人為的に冬眠状態を引き起こせるはずです。

 

僕たちは生命の現象には、生と死の2つの状態しかないと考えていますが、実はその間に、死に最大限近づきながら、そこからリカバリーできる状態があるということです。そこでどのような生命活動が成立しているのか。それが明らかになれば、従来の生命観が書き換えられる可能性もあると考えています。

 

冬眠とは代謝が極端に落ちた状態です。その状態を人為的に引き起こすことができれば、いろいろな病気の進行を止めることが可能になります。例えば、心筋梗塞など血流が滞ることで命が危険になる病気があります。一般に、梗塞状態になって30分以上過ぎると死ぬ可能性が高くなるといわれているのですが、臓器の代謝を落とせば、ある程度の時間、血液から酸素を得る量が極端に少なくなっても命を永らえることができます。それによって病院にたどり着く時間を稼げれば、命を救うことができるし、低酸素状態による脳へのダメージを防いで、後遺症を回避することもできます。

 

患者さんを助けたいという思いから始めた研究ですから、最終的には臨床に活かしていきたいですね。人工冬眠治療が普通にできるようになれば、脳障害による後遺症が減るので、寝たきり状態の人が少なくなり、健康寿命も延びることになります。それによって、超高齢社会の課題である医療費を抑制することも可能になると思います。

 

(医学以外で)可能性があるのは宇宙分野です。地球から火星に行くまでに、最短でも1年半ほどかかります。つまり、ロケットに1年半分の食料や酸素を積み込まなければならないということです。しかし、代謝を10%まで落とすことができれば、食料や酸素も10分の1で済みます。人工冬眠は、人類が宇宙進出をめざすに当たって非常に重要な技術になるはずです。

 

もう少し発想を広げてみると、僕が「人生の再配分」と呼んでいる考え方もあり得ます。例えば、おじいちゃんが孫の結婚式にどうしても出席したいが、寿命から見て恐らく不可能である。そんな場合にしばらく冬眠して寿命を延ばす、つまり、人生の時間の配分を変えるという考え方です。

 

さらに未来には、いつでも自由に冬眠ができる「念ずれば冬眠」が実現する可能性もあると僕は考えています。心筋梗塞になった瞬間に自ら冬眠するという選択をすれば、病院に搬送される時間を稼ぐことができ、自分の命を自分で永らえることができます。修行を積んだヨガ行者の中には、自分の意思で代謝を極端に落とすことができる人がいます。だから決して夢物語ではないと思っています。

 

以上、メルマガの一部をご紹介してきましたが、“人工冬眠”における人類の暮らしへの将来に向けての適用可能性についてかなり具体的なイメージが持てたと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています