2020年09月19日
プロジェクト管理と日常生活 No.659 『新型コロナウイルス封じ込めで強気に転じる中国の脅威!』

5月15日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルス封じ込めで強気に転じる中国の脅威について取り上げていたのでご紹介します。

 

アメリカは中国に対してかなり強硬な姿勢を示していますが、それ以外でも中国との摩擦は世界各地で起きています。

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「各国との関係を整理すると非常に注目されることは多いと思うんですね。」

「まずオーストラリアとの関係では、オーストラリアはコロナの問題の独立調査のチームを派遣したいという要望をしていますが、それに対して中国は「そんなこと言うんだったら牛肉の輸入を制限するぞ」と言っているわけですね。」

 

「ニュージーランドについては、WHOの総会に台湾をオブザーバー参加したらどうだと言っていることに対して、中国は猛烈に非難しているわけです。」

 

「更に南シナ海や尖閣諸島を巡っても相当中国との間で今“波高し”のような状況になっていると思います。」

 

「(これだけ中国が各国との間で軋轢を生んでいる背景についてどのように分析しているかという問いに対して、)一言で言えば、コロナの収束に成功したんだと、言わば自信がちょっと高飛車な態度、姿勢の背景として見逃せないと思うんですね。」

「で、典型的な例はニュージーランドとの関係なんですけど、昨年の末にニュージーランドと中国の間でFTA、自由貿易協定を改定して非常に関係が接近していたんですけども、あまりに高飛車な態度を中国が取ったことで関係がこじれているわけですね。」

「本当はこういう状況にソフト路線を取れば中国の株が恐らく上がるんでしょうけど、残念ながらそのベクトルは逆ですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

また6月19日(金)付けネットニュースでも同様のテーマを更に詳しく取り上げていたので以下にその要旨をまとめてみました。

 

(習政権の存続は経済次第である)

・中国の習近平政権が20204月で発足8年目に入り、大きな試練に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大で、政権基盤の支えでもあった経済が急減速しているからだ。

・中国の政治指導者は選挙で選ばれていないため、その政権の正統性を立証することはできない。唯一の根拠は、経済発展を維持し、人民を幸せにすることである。

・経済成長が減速したのは中国国内の構造的な要因のほか、米中貿易戦争によって輸出が阻まれていることがある。

・これに加え、目下の新型コロナ危機で経済の供給網(サプライチェーン)が寸断され、中小企業の経営破綻で雇用が悪化、国内需要も弱くなった。

 

(不確実性に満ちた政治情勢)

・いつの時代も専制政治がベールに包まれて、その中で何が起きているかは分かりにくい。

1991年、あれほど強固にみえたソビエト連邦はどこの国にも侵略されないまま、突如として雪崩を打つように崩壊してしまった。

・ソ連崩壊の例から今の中国が崩壊することを類推するにはあまりにも材料不足である。ただし、中国社会に問題が山積しているのは確かなことである。

・これまでの7年間、習政権は250万人の腐敗幹部を追放した。腐敗幹部の追放は人民からの支持を広く集めているが、共産党幹部の腐敗を根絶できない現行政治体制を改革しなければ、人民からの支持を失うことになる。

・習政権は共産党高級幹部から草の根の民まで全ての国民に対する監視体制を強化している。

・しかし、人民から自由を奪う習政権の政治理想は簡単に実現しない。なぜならば、これまでの40年間、中国人はいったん自由のすばらしさを味わったからである。

・その自由が奪われることに対して、計り知れないほど強烈な抵抗が予想され、そのマグニチュードいかんによって習政権そのものがひっくり返されてしまう可能性がある。自由のない社会は幸せな社会になり得ない。

・ 中国の古典「荀子」には、「水能載舟、亦能覆舟」との教えがある。すなわち、水(民)は舟を浮かべることができるが、舟を転覆させることもできるということである。人民を幸せにすることができない君子はいずれ人民によって倒されるということである。この「荀子」の教えから習政権は存亡の危機に直面しているといえる。

 

(世界を敵に回す習政権の外交)

・習政権は強国復権の夢を人民に唱え、中国が世界のリーダーになるべく、「一帯一路」イニシアティブの巨大なプロジェクトを遂行している。習政権の国際戦略は、既存の国際秩序は先進国に利するものばかりであり、それを新興国にとってより公平な新たなものに改めなければならないということである。

・この問題意識は間違っていないが、新しいルールが確立されるまで既存のルールに従わないといけないと自覚すべきである。

・習政権になってから、既存の国際ルールの変更を待たずに、次から次へと既存の国際ルールにチャレンジしている。一つは、領土領海の帰属問題である。もともと歴史的な背景が複雑に絡み、簡単に白か黒かと決めることができない問題が多い。だからこそ国際裁判所に仲裁を仰ぐことが慣例である。

・中国は国土の広い国であり、12カ国と国境を接している。

・近年、中国の経済力が強化されたことから、陸に続いて海への拡張も行われている。しかも、対話よりも既成事実を作ることを優先にしているようだ。東アジア域内の不安定性は中国自身を困らせている。

・中国政府はかねて台湾問題を核心的な利益と位置付け、台湾統一に武力行使を辞さない姿勢を貫いている。また、香港に対しても、国家安全法を制定するなど、実質的に一国一制度への転換が図られている。

・問題は、中国から人心が離れていけば、台湾を統一しても、香港に対するコントロールを強化しても、北京との心の距離が離れて行っては、何のメリットもないはずである。

・新型コロナ危機をきっかけに、もともとぎくしゃくしていたアメリカとの関係はさらに悪化している。

・ウイルスの発生源を調査すべきと主張するオーストラリアなどに対して、中国は経済制裁を実施している。こうした言動はいずれも国際社会で反感を買うものである。

・国際政治学者の一部は米中が新冷戦に突入することを予言している。その予言が的中するかどうかは別として、米国の中国からの離反(デカップリング)が現実味を帯びてきた。

 

(中国経済の展望)

中国経済は経験したことのない苦境に陥っている。522日に開かれた全人代で李克強首相は政府活動報告を読み上げたが、異例なことに今年は経済成長率目標を掲げなかった。

その代わりに、「就業」、すなわち、雇用の安定維持が39回も繰り返して強調された。

・中国経済が急減速しているのは、新型コロナ危機によるところが大きいが、同時に対米貿易戦争によって輸出が阻まれているため、外需が弱くなっている。

・一方、内需については、短期的に見ると、家計貯蓄率が30%もあり、景気回復を下支えする重要な材料として注目される。

・ただし、雇用が悪化しているため、V字型回復は期待できない。

・何よりも、中国には、日本の中小企業信用保証制度のような仕組みがないため、民営企業は国有銀行からお金を借りることができない。これも失業率の高騰を助長する要因となる。

・現在、中国政府は外国企業の対中直接投資の誘致に力を入れている。しかし、多国籍企業を中心に中国にある輸出製造拠点をベトナムなどへ移転させる計画が表面化している。

・グローバルサプライチェーンが再編されるなかで中国は「世界の工場」としての地位が大きく揺らぐことになろう。

・中国は米国との関係悪化を乗り切るために、日本との関係改善に取り組もうとしている。

・もともと、習国家主席は20204月の初旬に国賓として訪日する予定だったが、コロナ危機によって延期となった。しかし香港情勢や米中関係の一段の悪化などを受け、年内の訪日実現は難しくなったと見られている。

・これで日中関係が急速に悪化することは考えにくいが、中国を取り巻くグローバル環境は一段と不安定化し、東アジアの地政学リスクがさらに高まるものと思われる。

・グローバル社会、とりわけ東アジア諸国にとり、チャイナリスクをきちんと管理することが今まで以上に重要な課題となっている。

 

以上、ネット記事の要旨をまとめてみました。

 

まず、共産党による一党独裁、すなわち専制政治国家、中国において、その政権の正統性を立証する唯一の根拠は経済発展を維持し、人民を幸せにすることであるという指摘はなるほどという思いです。

なお、自由主義国家においても、政権与党が政権を維持し続けるうえで経済発展は大きな要素です。

そして、専制政治国家と自由主義国家の大きな違いは、自由主義国家においては選挙により政権交代が可能ですが、専制政治国家においては政権交代の仕組みがなく、中国であれば共産党内での権力の転換が行われるか現政権の反対勢力による革命しかないのです。

 

さて、現在、中国国内の構造的な要因のほか、米中貿易戦争によって輸出が阻まれていることから中国の経済成長が減速しています。

更に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多国籍企業を中心に中国にある輸出製造拠点をベトナムなどへ移転させる計画が表面化しています。

グローバルサプライチェーンが再編されるなかで中国は「世界の工場」としての地位が大きく揺らぐ可能性が出てきています。

 

そうした中、習政権は共産党高級幹部から草の根の民まで全ての国民に対する監視体制を強化しているのです。

しかし、人民から自由を奪う習政権の政治理想は簡単に実現しないといいます。

なぜならば、これまでの40年間、中国人はいったん自由のすばらしさを味わったからです。

ですから、その自由が奪われることに対して、計り知れないほど強烈な抵抗が予想され、習政権そのものがひっくり返されてしまう可能性があるといいます。

 

そこで、習政権は強国復権の夢を人民に唱え、中国が世界のリーダーになるべく、「一帯一路」イニシアティブの巨大なプロジェクトを遂行しているというわけです。

習政権の国際戦略は、既存の国際秩序は先進国に利するものばかりであり、それを新興国にとってより公平な新たなものに改めなければならないということなのです。

 

習政権になってから、既存の国際ルールの変更を待たずに、次から次へと既存の国際ルールにチャレンジしています。

一つは、領土領海の帰属問題です。

中国は国土の広い国であり、12ヵ国と国境を接しています。

近年、中国の経済力が強化されたことから、陸に続いて海への拡張も行われています。

しかも、対話よりも既成事実を作ることを優先しているようで、東アジア域内の不安定性は中国自身を困らせています。

中国政府はかねて台湾問題を核心的な利益と位置付け、台湾統一に武力行使を辞さない姿勢を貫いています。

香港に対しても、国家安全維持法を制定するなど、実質的に一国一制度への転換が図られています。

また、新型コロナ危機をきっかけに、もともとぎくしゃくしていたアメリカとの関係はさらに悪化しています。

ウイルスの発生源を調査すべきと主張するオーストラリアなどに対して、中国は経済制裁を実施しています。

こうした言動はいずれも国際社会で反感を買うものです。

国際政治学者の一部は米中が新冷戦に突入することを予言しています。

 

こうして見てくると、米中の新たな冷戦の様相が見えてきます。

(中国からの視点)

・習近平国家主席はもともと中国を覇権国家にし、アメリカに代わる世界制覇を目論んでいる

・新型コロナウイルスの感染拡大により、自国の経済成長が鈍化している

・そうした国民の不満を他に向けることも目的に、新型コロナウイルスの感染拡大への取り組みで、いち早く収束させた自信を背景に既存の国際ルールを自国に有利なように変えようとしている

 

(アメリカからの視点)

・トランプ政権のみならず、国全体が経済や軍事面での中国の追い上げに対し、世界的なリーダーシップを中国に奪われるのではないかという危機感が増している

・そこで習政権の弱点である経済成長の更なる鈍化、および中国の孤立化に狙いを定めて様々な手を打ち出している

 

(米中以外の国の視点)

・中国という独裁政権による監視国家の実像が自由主義国家とは大きく異なることを実感し始めた

・覇権国家、中国による行き過ぎた国際秩序の変更の取り組みに対して、自国に与える影響を危惧して危機感を持ち始めている

 

ということで、米中の冷戦が単なる冷戦で済めばいいのですが、軍事的な衝突に発展すれば、第三次世界大戦の勃発につながりかねません。

ではこのリスク対応策ですが、以下のように考えます。

・世界中の自由主義国家が一丸となって、習政権の覇権主義の誤りを正す取り組みをする

・中国国内の反習政権派との共闘を図る

・中国国民に向けて、個人の自由の大切さを各国が共同して訴える


 
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