2020年09月09日
アイデアよもやま話 No.4743 周回遅れのスーパーシティ法の実施計画!

5月27日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でスーパーシティ法の実施計画について取り上げていたのでご紹介します。

 

AIやビッグデータなどの技術を活用した先端都市の実現を目指す、いわゆるスーパーシティ法が参議院本会議で5月27日に可決され、成立しました。

複数の分野にわたる規制を一括で緩和することでオンライン診療やドローンでの配送といった複数のサービスを利用出来る地域の実現を目指します。

政府は指定する自治体を年内に決定するとしています。

 

なお、スーパーシティは計画を具体化して実現するのが2022年以降になる見込みだといいますが、アメリカや中国のハイテク企業を研究している立教大学ビジネススクール教授の田中道昭さんは次のようにおっしゃっています。

「まずはこのスーパーシティ法をテクノロジー国家としては待望の法案だと思いますけども、なんと2022年以降ということなのでちょっとスピード感が遅いですよね。」

「アリババの本拠地、中国・杭州で2016年10月から起動しているETCブレーンというアリババのスマートシティプロジェクトで非常に驚くことに2019年9月時点で既に23都市に展開しているということで、“ビッグデータ×AI”で都市機能を最適化するということで、私も行ってみて驚いたのは、良し悪しはともかくとして街中にカメラとかセンサーがいろんなところに付いてまして、既に交通渋滞は緩和されているとか、ゴミの収集車が最適なルートを通っているとか、配達員が最適なルートを通っているとか、本当にいろんな都市機能が最適化されているんですけども、“ビッグデータ×AI”というのが今テクノロジーの国家についても企業についても中核ですよね。」

「これ以上周回遅れで遅れてはいけないということで、正直2022年以降ということではちょっと遅過ぎるかなというのが率直なところです。」

「(ただし、中国ではプライバシーを度外視して個人情報を集めているような部分があり、それが犠牲になっているところもあるが、日本の場合はそうはいかないのではという指摘に対して、)」そういう意味ではプライバシー保護と利便性の両立を同時に達成しなきゃいけないと思いますし、日本式のやり方としては2つのバランス感はそれぞれの人が選べるというところまでテクノロジーを駆使して中国式の監視社会には陥ってはいけないと思いますね。」

「(民主主義国家ならではのスマートシティが求められるという指摘に対して、)そうですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

日本でも最近ようやく国もスマートシティというDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みを始めたようですが、田中教授も指摘されているように中国に比べたら周回遅れと言わざるを得ません。

なぜ国を挙げてのDXへの取り組みが重要かと言えば、大きく2つあると思います。

一つ目はあらゆる分野での生産性の向上、二つ目はこれまで出来なかったことが出来るようになることです。

この2つの成果は企業の競争力、国や自治体の業務の効率化、および国民の暮らし易さに直結します。

 

ただここに大きな課題があります。

それは番組でも指摘されているようにプライバシー保護と利便性の両立です。

中国の場合は、スマートシティに限らず国策の推進をプライバシー保護に優先させているので国民の立場は極めて弱くなります。

極端な場合、特定の個人の行動が国の意志に反したと見なされた場合、国にとってガラス張りの個人情報を盾に、ほんのちょっとしたことで不正行為を行ったとして逮捕されてしまうのです。

今話題に上がっている香港の国家安全維持法の運用も法律の条文が国に有利なように敢えて曖昧な記述であるため、国の拡大解釈で国にとって不都合な人たちはいつでも逮捕出来てしまうという専門家もおります。

 

日本は共産党による一党独裁国家の中国と違って自由主義国家なのですから、個人は尊重されなければならず、従って少なくとも平常時においてはプライバシー保護が最優先されなければなりません。

こうした前提条件のもとで、スマートシティ構築に向けて取り組んでいただきたいと思います。

なお、スマートシティ構築への取り組みにおいて、日本が周回遅れの要因はプライバシー保護が最優先であることではなく、国の指導者にスマートシティ構築への意欲、あるいは熱意が欠けているからだと私は思います。

コロナ禍という国民全体の動きが停滞しているような状況だからこそ、今後の国のあり方を左右するスマートシティ、あるいはDX全般への取り組みにまい進すべきだと思うのです。

このままでは、DXに向けて中国に増々大きな後れを取ってしまい、いずれ日本は中国の属国的な存在に成り下がってしまうのではないかと危惧されます。



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