2020年08月29日
プロジェクト管理と日常生活 No.656 『鳥取県独自の新型コロナウイルス対策に見る”最適化”』

アイデアよもやま話 No.4729 ハーバード大学の専門家によるコロナ提言!ハーバード大学の専門家による医療的な見地からのコロナ提言についてご紹介しましたが、基本的にこの提言に沿った、鳥取県の新型コロナウイルスへの独自の取り組みについて、5月14日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で取り上げていたのでご紹介します。

 

5月14日、安倍総理は全ての自治体を対象に発令していた緊急事態宣言を39県について解除すると表明しました。

緊急事態宣言を解除された県の一つで、新型コロナウイルス対策で“鳥取モデル”と言われる先進的な取り組みで注目されている鳥取県ですが、その内容は以下の通りです。

・PCR検査の基準拡大

国の基準よりも対象を拡大して、医師が疑わしいと考えた全ての人にPCR検査を実施

・ドライブスルーやウォークスルーの方式によるPCR検査の全国初の導入

・新型コロナウイルスに対応する病床数の増加

12床から322床に増加(全国トップレベル病床数)

・県内の無観客公演への助成

  県内の会場で無観客の公演をライブ配信する場合に、その経費の一部を補助するなど、文化・芸術への助成をいち早く実施

 

どうして国よりも早くこうした取り組みを迅速に行うことが出来たのかについて、鳥取県の平井伸治知事は次のようにおっしゃっています。

「かつて新型インフルエンザというものがありまして、その時の対策を一つベースに置きながら、先回りをしながら対策を取っていきました。」

「と申しますのも、うち(鳥取県)は高齢化率がものすごく高いんですね。」

「ですから、高齢者の方、ひょっとすると死亡率も高くなるんじゃないか。」

「だからこそしっかりと医療体制を整える必要があります。」

「先回りをした検査をやる必要がある。」

「こんなことを徹底的にやっていったわけであります。」

「大都市と違いまして、沢山の病院があるわけではない。」

「そういう意味で、医師会やいろんな病院とよく話し合いを重ねながらどんどんとベースを拡大していったことの現れだと思います。」

「是非こうした体制を維持しながら、これから次の波が来た時に、今3人しか感染していないということは、次は沢山の人が感染するかもしれないということですから、逆に私たちは兜の緒を締めなければならないと思っています。」

「(次の波への準備という意味では、更にPCR検査の拡充なども考えているのかという問いに対して、)例えば妊婦さんがいらっしゃいますが、こうした方々にはPCR検査をやろうということで、そうさせていただいています。」

「その費用も県の方でみようということにいたしていますし、更にお医者さん、院内感染が心配なんですね、病院数が少ないですから。」

「ですから大きな病院で、入院されて、例えば器官に挿入するだとか、あるいは耳鼻咽喉科などの緊急手術をやるだとか、そうした場合にはPCR検査をやろうと。」

「で、基幹的な病院ではそういうスクリーニングをかけることに今しているところであります。」

「このように次の手を打って、私たちも備えていきたいと思っています。」

「(感染の第2波を警戒しながら、経済を再開していくことになるが、休業要請をしていた業種について鳥取県ではどのような対応をするのかという問いに対して、)私たちはあまり感染が進んでいなかったので休業要請はごくごく小さい規模になりました。」

「パチンコ屋さんで5日間だけであります。」

「ですからほとんどないんですけども、先ほどもVTRにありましたように、開けていてもお客さんが来ないという厳しい状況が続いてまして、私どもは全ての飲食店や宿泊業、こういったところに一律10万円の助成制度を休業したかどうかに係わらず差し上げることにいたしました。」

「(やはり気になるのは観光業ではという指摘に対して、)やはりそうですね。」

「鳥取は何といっても砂丘ですとか、それから大山、更にはスキー場もあれば、カニも美味しいということで、ちょうどお客様も来るいい季節だったんですよね。」

「しかし、残念ながらみんな涙を呑んで協力をして、命と健康を守るために業者さんも店を閉めて、私ども駐車場を閉め、サンド(砂)ダウンと言いましたけど、ロックダウン(都市封鎖)は出来ないんですけど、サンドダウンをやりました。」

「そうしたら99%のお客さんが去年と比べて減ったんですね。」

「これが感染拡大を防ぐことにもなったと思っておりますが、やっぱり非常に厳しいので次の手を考えようと。」

「とりあえずは県外のお客さんに今から周ってもらおうと、キャンペーンを4月から始めることにいたしました。」

「是非早くお客さんが帰って来れるようにコロナが収まることを1日も早くと願っております。」

「砂だけに“砂イズベター(Sooner is better)”です。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

前回、プロジェクト管理と日常生活 No.655 『新型コロナウイルス対策を国家プロジェクトと見なすと・・・』で新型コロナウイルス対策を国家プロジェクトと見なした場合の目的や体制などをお伝えしました。

そして、地方自治体との関連で各知自体が置かれた状況に応じて、それぞれの知事が“最適化”というルールに則り、最適な対策を実施することが出来るとお伝えしました。

今回ご紹介した鳥取県独自の対策はまさに“最適化”の実施例と言えます。

 

これはこれで望ましい取り組みですが、国家プロジェクトという枠組みで考えると、プロジェクトオフィスがこうした望ましい自治体の取り組み、あるいは失敗例などを収集し、各自治体に水平展開することも重要なのです。

 

なお、NHKの新型コロナウイルス特設サイト(こちらを参照)でみると、確かに鳥取県は自治体別感染者数の累計では岩手県に次いで少ないことが分かります。(8月27日現在)


 
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