2020年08月28日
アイデアよもやま話 No.4733 コロナショックがもたらすリモートワークの先に見えてくるものとは・・・

5月20日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナショックがもたらすリモートワークの先に見えてくるものについて取り上げていたのでご紹介します。

 

新型コロナウイルス対策の一環であるリモートワークの浸透で賃貸オフィスの需要にも変化が起きています。

東京都中央区にオフィスを構える経営コンサルティング会社、白潟総合研究所株式会社の白潟敏朗社長は次のようにおっしゃっています。

「3月下旬から今日までずっとこんな感じなんですね。」

「もう使わないと判断をしてオフィス契約を解除したという感じですね。」

 

こちらの会社は4月から全社員、30人あまりが完全リモートワークに移行し、出社する社員はゼロになり、オフィスを無くすという決断に踏み切りました。

白潟社長は元々はオフィスを持つことへの思い入れが強く、都心にオフィスを構えることは目標でもありました。

しかし、コロナが大きな発想の転換になったといいます。

白潟社長は次のようにおっしゃっています。

「九州の宮崎出身なので憧れるもの、その1が高層ビルなんですね。」

「(コロナの影響で完全に考え方が変わったのかという問いに対して、)そうですね。」

 

いざリモートワークに移行してみると、仕事の効率はむしろ高まりました。

更に、東京、大阪の2ヵ所の事業所で年間約1800万円の家賃負担が無くなることが決め手になったといいます。

白潟社長は次のようにおっしゃっています。

「(経費削減は)トータル経費で12%ぐらい、大きいですね。」

「浮いたコストをゆくゆくはお客様や社員にいっぱい還元したいなという感じですかね。」

 

新型コロナウイルスで在宅勤務が急速に普及したことで、今後不動産市場は大きく変わっていくと専門家は予測します。

不動産コンサルタントの長嶋修さんは次のようにおっしゃっています。

「都心居住・駅近居住が大事だという人たちもいれば、郊外でいいんじゃないという方もいれば、思い切って地方に移住する人もいればというふうに多角化する居住のあり方というふうに変化していくんじゃないかというふうに予想しています。」

 

こうした状況に、番組コメンテーターでニッセイ基礎研究所の主任研究員、久我 尚子さんは次のようにおっしゃっています。

「この不動産市場の変化も背景には働き方がテレワーク、在宅勤務に大きく舵が切られたことがあると思うんですけれども、今後在宅勤務がどんどん増えていきますと、評価制度も変わっていくというところに私は注目をしています。」

「従来の時間管理をベースとしたものから成果主義へとシフトしていく。」

「つまり成果を出せば、あるいはあらかじめ決められた業務をするのであれば、9時から5時までといった一律の時間ではなくて、都合のいい時間に働けるようになる。」

「働き方が多様化すると、労働市場でいろんな方が活躍出来るようになると思うんです。」

「例えば、そこでM字カーブ(*)が一気に底上げするという可能性もあると思うんですね。」

「働く女性は増えているんですが、依然として出産後に辞めてしまう方が多いので、30代で凹みが出来るんですね。」

「一方で、今働いていないけれども、本当は働きたいという女性をここ(現行のM字カーブの上)に足し合わせてみると、実はM字が台形になるんですね。」

「M字がほぼ解消していくんです。」

「で、働けていない理由は出産・育児とか適当な仕事がありそうにないということなので、時間とか距離の制約が弱まれば、働き方が多様化して価値観も変わる。」

「そうなると長時間働ける方が評価され易いという慣習も消えて来て、例えば男性の育児休暇取得なんかにもつながるんではないかと期待しています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

*女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は,結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し,育児が落ち着いた時期に再び上昇するという,いわゆるM字カーブを描くことが知られている(詳細はこちらを参照)


ちなみに、5月26日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では次のように報じています。


日立制作所で5月26日に打ち出したのが当面ではなく新型コロナウイルス収束後も在宅勤務活用を標準とした新しい働き方に大きく舵を切るといいます。
そして来年4月には出勤率50%を目指すといいます。


また、5月29日(金)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)では、大手日用品メーカー、ユニ・チャームが6月1日から原則週2日を在宅勤務とすると報じています。


このように大なり小なり、企業のリモートワークへのシフトが進んでいるのです。 


今回の番組を通して、コロナ禍は在宅勤務を軸としたリモートワークは私たちの暮らしにいくつかの変化をもたらしつつあることが分かったので以下に整理してみました。

・仕事の効率向上

・事業所の縮小、あるいは閉鎖によるコスト削減

・上記に伴う不動産市場の縮小

・居住のあり方の多様化

  都心・駅近居住

郊外への転居

地方への移住

・働き方の多様化

複数の仕事の掛け持ち(どの仕事が副業か曖昧)

労働時間の束縛からの解放

働きたい時、あるいは育児などから解放される時間に働く

   ワーケ―ション(ワークとバケーションから作られた造語 旅先で休暇を楽しみながら、仕事もこなすといったような働き方)

・労働力不足解消への寄与

・従業員の評価制度の変化(労働時間から成果主義へのシフト)

 

コロナ禍により「3密」の回避が求められている状況において、従来のような働き方を継続させることは出来ないことが明確になりました。

同時に、消費者の消費指向も“巣ごもり消費”、あるいは“イエナカ消費“と言われるように外出を極力避けるような消費パターンが主流になってきました。

今求められているのはこれまでの仕事のやり方でいかに与えられた業務を効率良くこなすかではなく、リモートワークを軸に自社の強みであるコンテンツを最大限に生かしつつ、「3密」を回避しながら“巣ごもり消費”を軸とした消費指向を前提に売り上げ、利益を生み出す新たなサービスの提供方法のアイデアなのです。

そして、最大のキーはDX(デジタルトランスフォーメーション ITの活用によるビジネスモデルや組織の変革)だと思います。

DXを制する企業こそが生き残り、新たな成長のチャンスを獲得出来るのです。


 
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