5月18日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で激変する生活と心のケアについて取り上げていたのでご紹介します。
東京都による都内400社の調査で、4月の在宅勤務、テレワークの導入率は62%に達しました。
3月からは倍以上に急増したのですが、その結果企業にとっては無視出来ない課題も浮かび上がっています。
ゴールデンウィーク開けの5月8日、求人サイトなどウェブサービスを手掛ける株式会社リブセンスのオフィス(東京・品川区)を訪ねました。
リブセンス 人事部の遠藤 正幸部長は次のようにおっしゃっています。
「通常は220〜230人ぐらいがふだんは就業しているんですけども、・・・」
緊急事態宣言後は全従業員の98%が在宅勤務になっています。
こうした状況下、遠藤さんは深刻な問題を抱えていました。
毎月行っている従業員のアンケート調査に大きな変化が起きているのです。
遠藤さんは次のようにおっしゃっています。
「4月になって「倍以上コンディションが良くないです」と答えている人が増えているので、新型コロナウイルスの影響がここに反映されているな・・・」
在宅での勤務、テレワークの導入で生活が一転、心身のバランスを崩してしまう従業員が急増していたのです。
そこには以下のような声があります。
「自宅保育しながら仕事するのがなかなか難しい。」
「リモートワークが続くの意外とストレスです。」
こうした声について、遠藤さんは次のようにおっしゃっています。
「今まででしたら直接会っているのでタイムリーにキャッチアップしてすぐに対応するとか、人事だけの閉じた対応は結構限界かなというのが正直素直に感じているところですね。」
こうした声を受け、導入したのがオンラインカウンセリングです。
専門的な資格を持つカウンセラーに会社が費用を負担し、無料で悩みや不安を相談出来るようにしたのです。
契約したのがオンラインカウンセリングサイトの株式会社コトリー(cotree 東京・中央区)です。
今、こちらのカウンセラーのもとには引っ切り無しにテレワークを中心とした様々な相談が寄せられています。
IT企業に勤務する30代の男性は4月に人事異動したものの、在宅勤務で新しい部署の上司や同僚と直接顔を合わせることが出来ず、人間関係に悩んでいました。
こうした悩みについて、この相談者とカウンセラーとで次のようやり取りがあります。
(相談者)
「オフィスにいると、人となりが見えてくると思うんですけども、(テレワークだと)中々そこが見えづらくてですね・・・」
(カウンセラー)
「一つひとつの反応にいろいろ考えてしまわれると非常に疲れてしまいますよね。」
(相談者)
「分かって欲しいというのはあるかもしれないですね、」
「もしかしたら自分の仕事を認められて、褒められたいみたいな気持ちなのかもしれないなと今話してて・・・」
コトリ―の会員数は約2万人、緊急事態宣言が出された4月、新規会員数が前年比3倍に増えました。
この会社を立ち上げたのは社長の櫻本真理さんです。
京都大学で心理学を学び、卒業後は外資系投資銀行のゴールドマンサックスなどで勤務、リーマンショック後の大量リストラを目の当たりにしました。
櫻本さんは当時について次のようにおっしゃっています。
「その時、割と激務だったので一時期体調を崩したことがあって眠れなくなったんですね。」
櫻本さんは会社には言えないままメンタルクリニックを受診、しかし2、3分の診療で薬を処方されただけでした。
櫻本さんは次のようにおっしゃっています。
「私が感じた不調は薬で解決するものというよりは生き方を見直すとか、働き方を見直すとか、薬以外の方法で心理的な不調をサポート出来るような仕組み、それもいつでもどこでも自由に使えるような仕組みがあるといいなというところからスタートしたのがコトリ―というサービスです。」
2人の子を育てながら、フリーランスとして働く細野由季恵さんはカウンセリングに救われたといい、次のようにおっしゃっています。
「子育ても凄いいっぱいいっぱいだし、仕事もいっぱいいっぱいだし、明らかにちょっとおかしくなってきて、(カウンセラーは)受け止めてくれるんですよね。」
「例えば、私がこういうことがあって、怒ってしまったと言ったら、「ちょっと怒った自分の気持ちを一回大切にしましよう」みたいな感じで、「何かすごくそこにはあなたにとって大切なものがあったから怒っちゃったんですよね」とか言って、受け止めてくれる。」
「何か自分をその時初めて肯定してくれたというか・・・」
「(誰にも頼ることが出来ない、人と接しない今だからこそ、)意外と気づかないところで、(みんな)ストレスを感じている。」
「例えばコロナだからとか思っているけれども、本当はちょっと違うとこに問題を抱えていたりとか、・・・」
今、コロナ禍で生活が大きく変化、先の見えない不安や孤独感が増している中、心のケアは必要不可欠になってきています。
櫻本さんは自身の経験から今変わって欲しいと思っていることがあります。
「本当はカウンセリングを受けたらいいのに、受けられない人が日本人には本当に多いなと思います。」
「これだけ社会全体のストレスが高まってくると、メンタル不調がいつどこで誰に起きてもおかしくないというような状況になってくると思うんですね。」
「だから人の力を借りて、自分の生き方とか向き合い方を考えていくような支援が必要になってくると思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
なお、国内全体のテレワークの導入率は以下の通りです。(詳細はこちらを参照)
3月中旬〜4月上旬調査時点では、「導入している」(44.8%)、「導入していない」(54.6%)と、未導入企業のほうがやや多いことがわかります。ただし、従業員規模別で見ると1001〜5000人、5001人以上ではいずれも7割超が「導入している」と回答しており、大手企業ほど導入率が高いことがわかります。1〜100人と101〜500人は、共に3割台に留まっており、大きな開きがあります。
ということで、大なり小なりコロナ禍においては新しい働き方としてテレワークが導入されています。
こうした状況においては、経験年数の若い社員を中心に仕事のペースがつかめなくなったり、分からないことが出て来てもすぐに誰かに相談出来ないとか、仕事仲間と気軽に会話が出来ない状況で何となく不安を感じたりといった悩みを抱えてしまうケースが起きてしまいます。
そこで、アイデアよもやま話 No.4666 テレワークの普及で考慮すべきは・・・でお伝えしたように、定期的にテレビ会議システムを使って、課やチーム単位で週に一度とか定期的なミーティングが必要となります。
また、アイデアよもやま話 No.4445 広がる“1on1ミーティング”!でお伝えしたように、業務上の個人的な悩みなどについて上司と部下という個別のミーティングも必要です。
更に、心の悩みといったようなプライベートな相談については今回ご紹介したような専門のカウンセラーに相談出来るような仕組みが必要になります。
しかし、もっと問題なのはコロナ禍が原因で会社の業績が急速に落ち込み、解雇されたり、あるいは派遣切りに遭ってしまったりした人たちの心のケアです。
勿論、こうした人たちには失業手当や生活保護制度がありますが、突然のショックによる心のケアも欠かせません。
ですから、こうした人たち向けの無料相談窓口の開設も特に今のような状況においては必須だと思います。