5月2日(土)放送の「インタビュー “コロナ危機”どう生きる2」(NHK総合テレビ)で経営者、経済人に日本経済の行方についてインタビューしていました。
今回はその中から日本電産株式会社の永野重信会長に焦点を当ててご紹介します。
モーターの世界的企業、日本電産、町工場から始まり、今では世界40ヵ国以上に事業展開しています。
一代で売り上げ高1兆5千億円のグローバル企業へと成長させた経営者、永野会長はインタビューで次のようにおっしゃっています。
(新型コロナウイルス感染拡大の現状と自社のリスク対応について)
「(世界的に新型コロナウイルスが感染拡大する中で、今の状況をどのように見ているかという問いに対して、)今回は人の命という人命という問題があるんですね。」
「ですから過去とは全く違う危機に遭遇しているというふうに私は感じております。」
「ですからまず自分自身の命を守れ、その次に家族を守れ、会社はその次でいいと、今は。」
「こんなこと言うの初めてでね。」
「(今後、長期化も予想される中で、事業を継続していく、発展させていくことについて、かなり今までやってこられた中でも厳しい状況にあるということかという問いに対して、)そうですね。」
「これはやはり世界的規模で起きていますね。」
「私はなぜ世界にこれだけの工場を作って来たかといいますと、リスク分散のために広げたわけですね。」
「例えば、どこかの国でどうかなっても全部OKだと。」
「例えば、アメリカと中国の問題でも、中国がダメだったら、同じものをメキシコから供給するとか。」
「ですから、非常にうまくリスク分散やったんじゃないかというふうに考えておったんですが、世界中の国が同じ状況になることは想定していなかったわけですね。」
「ですから、これをきちんと整備して世界の中で組み直すと。」
「これは数年かかると思いますね。」
(世界経済の今後について)
「(新型コロナウイルスが終息した後も世界経済が回復するまでには時間がかかるのではという問いに対して、)リーマンショックの時は非常にピンチをチャンスに変えることが出来ました。」
「本当にその後の成長はものすごく加速したわけですね。」
「逆に言うと、世界シェアを取る場合も景気がいい時はなかなか取れないんですよ。」
「しかし、悪い時はやっぱりみんな委縮しますしね。」
「で、そういう時は意識の高い社員を持っている会社は強い勢いになっているということを過去にも何回も経験しているわけですね。」
「だから今回もコロナの現状を見てみますと、売り上げや利益の数字を見てますと、これはえらいことだとみんな言っておられますけど、経験から申し上げるとやっぱり最後は自分の力を信じて、自分たちの従業員の力を信じて頑張れば、必ずいい結果が待っていると。」
「だから恐らく今の中小企業の経営者の方も悲しんで暗い将来を見るんじゃなくて、必ず解決します、この問題も。」
「必ず解決しますから一生懸命頑張ろうと。」
「工場の機械をまず磨こうじゃないかとか、それも従業員に対して勇気を与えるのが経営者の役目ですわ。」
(若い世代に向けて)
「(永守会長は大学の理事長、教育者でもいらっしゃいますが、今多くの学生が授業を受けられず、アルバイトも出来ない状況にありますが、そういった学生のみなさんに向けて、どのようなメッセージがあるかという問いに対して、)今年の4月から入学していない人たち、入社式も出来なかったし、しかし、必ずビデオメッセージを作って学生だけでなく学生の親御さんにも送っているんですよ。」
「諸君たちはなぜこういう時に、えらい時に大学生になったんだと思うやろと。」
「しかし、平穏無事な社会の方がおかしいわけで、何か起きるんですよ。」
「起きた時に、やっぱり頑張ってきた人がリターンを受けられる社会でないとね。」
「怠けておっても頑張っても一緒だという社会だったら、おかしいですよね。」
「国家も時には国民を裏切りますけど、だけど努力だけは絶対に裏切らないと。」
「これは私の75年間の人生の一つの教訓ですな。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
永野会長の発言の要旨を以下にまとめてみました。
・まず自分自身の命を守れ、その次に家族を守れ、会社はその次でいい
・今後は、世界中の国が同じ状況になることを想定した工場建設のリスク管理が必要である
・ピンチはチャンスに変えることが出来る
・経営者は、自分の力を信じて、従業員の力を信じて頑張れば、必ずいい結果が待っている
・従業員に対して勇気を与えるのも経営者の役目である
・平穏無事な社会の方がおかしいわけで、何かが起きる
・努力だけは絶対に人を裏切らない
永野会長のおっしゃるように、戦後、日本人全体が経験して来た大変な出来事と言えば、バブル崩壊やリーマンショックなど経済的な危機で、直接命に関わるようなものではありませんでした。
しかし、今私たちが真っただ中にいる新型コロナウイルスは直接命に係わり、いつ誰から感染するかも分からず、しかもこの状態がいつまで続くか誰も分からないのです。
また、新型コロナウイルスの影響は国内のみならず世界各国に及んでいますから、永野会長の指摘されているように、企業の海外展開におけるリスク管理の根本的な見直しも迫られているのです。
一方で、“ピンチはチャンス”と以前から言われてきたように、ベンチャー企業や積極的に自社のリストラを進めようという意欲のある企業の経営者にとっては、新型コロナウイルスの感染拡大は千載一遇のチャンスと言えるのです。
ということで、ベンチャー企業の経営者にはコロナ禍後を見越した新しいビジネスモデルを、そして既存の企業の経営者には単なる人員削減ではなく、社内の思い切ったリストラ断行をし、生まれ変わるくらいの意気込みでコロナ禍を乗り切っていただきたいと思います。
コロナ禍における新しい需要を生み出すことが出来れば、企業を存続させるだけでなく、新たな成長分野を切り開くことにもつながるのです。