2020年08月13日
アイデアよもやま話 No.4720 新型コロナウイルスによる経済への影響には段階が・・・

4月15日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルスによる経済への影響の段階(ステージ)について取り上げていたのでご紹介します。

 

新型コロナウイルスの影響で、大企業も資金繰りに奔走している状況ですが、企業への影響が波及していく段階があるといいます。

産業再生機構COOなどを歴任し、JALやダイエー、カネボウなどの再建に係わり、現在は株式会社経営共創基盤CEOの冨山和彦さんは次のようにおっしゃっています。

「今回の場合は、まず地域、ローカルな観光業であるとか、飲食、小売業からやられているんですね。」

「で、そのサービス業・小売業の次に耐久消費財、自動車とか電気製品に多分いきます。」

「こういう状況になると、耐久消費財、これほとんど買換え需要ですから、すぐ買わなくていいわけで、みんな先送りしますよね、未来に不安があるわけですから。」

「そうすると今度はいよいよ大きな会社の財務が傷んできます。」

「これ、短期であれば単なる資金繰りで済むんですけど、赤字xxになっちゃうんで、そうするといよいよ貸し出している債権が不良債権になっていくということで、下手をすると金融機関までいっちゃう、そういうリスクがあります。」

「(そうならないためにこの連鎖を食い止めるにはどうしたらいいかという問いに対して、)まずはとにかくとりあえず生き延びるためのいろんな融資を出すなり、いろんな猶予をするということなんですけど、ずうっとやってますと赤字になってるわけですから、どんどん財務が傷んで行って自己資本が無くなっていっちゃうんですね。」

「で、資本が無くなっていくと、今度は銀行はいよいよお金を貸せなくなるので、そうすると私は特に大企業に関しては波及が今度はまた中小企業に来ますんで、それを避けようと思うと、企業の側にも銀行の側にも予防的な資本注入みたいなことを考えないと、本当に危機的な状況になる可能性があると思います。」

「(予防的なというのは事前に資本を入れることが大切だということなのかという問いに対して、)そうですね。」

「実は前回のリーマンショックの時にも、あるいはその前の20年前の日本の金融危機の時にも、土壇場になってから資本注入スキームを実は用意しているんですが、結局一番効いたのは、それを出来るだけ早めに入れる、早めに入れてもらった会社の方が早く戻ってきているので、そういった意味でいうと金融危機の時には金融再生プログラムというので金融機関、それから私たちがやっていた産業再生機構で借り手の方に資本注入しました。」

「で、10年前のTARP(不良債権買取プログラム)、これはアメリカが用意した仕組みなんですが、これは金融機関と自動車産業、GMとかに沢山お金を入れているんですけど、金融機関は予防的注入を早めに入れたので破たんせずに済んだんですが、GMの場合には破たんしてから入れたので、これ結構しんどいですから、やっぱり早めにこのコロナショック、コロナのパンデミックが終わった後に早く経済を戻したいのであれば、そういう危機になる前に予防的に資本を入れて、資本の厚みをつくって、それをバッファーにして会社がまた借り入れを増して、いろんな意味でリカバリー出来るような状態をつくった方が、私は少なくとも準備はしておいた方がいいと思います。」

「こういう時は、最悪の想定を置いて、出来るだけ最悪の想定に基づいていろんな準備をしておいて、結果的にそれを使わずに済んで、「急に済んだね」って終わるのが一番良いパターンなんで、これが危機の時の私は一番大事な備えだと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず新型コロナウイルスによる経済への影響の段階についてまとめると以下の通りです。

1.(国内) 小売り・サービス業

2.(グローバル) 耐久消費財メーカー

3.(グローバル) 金融機関

 

では、現在はどの段階かというと既に段階1の小売り・サービス業には広く影響が及んでおり、段階2の耐久消費財にも影響が及びつつある状況と言えます。

ですから、特に小売り・サービス業に対しては、国や自治体による給付金や金融機関による資本注入が必要なのです。

同時に耐久消費財メーカーに対しても金融機関による予防的な資本注入が検討が必要な状況と言えます。

 

一方、一部の大企業は早期に金融機関に対して融資枠設定の要請をしております。

ちなみに、トヨタ自動車でさえも3月の時点で新型コロナ長期化に備え、金融機関に1兆円の融資枠を要請したといいます。(詳細はこちらを参照)

トヨタ自動車のこうした早期の融資確保の取り組みこそ新型コロナウイルスのリスクを最小限にする対応策として企業に求められるのです。

 

なお、冨山さんの指摘されているように、最悪の事態を想定し、出来るだけそれに基づいて万全の準備をし、結果的に最悪の事態への対応策を使わずに済むというのが危機の時の一番大事な備えだと思います。

この基本的な考え方は、企業のみならず、国や自治体、そして一般家庭においても通用すると思います。

 

ちなみに、同番組で、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「(新型コロナウイルス対策として、)基本的に現金給付の第2弾、第3弾があるということを政府がアナウンスしていくということはとてもいいことだと思います。」

「というのも現金給付というのはたった1回きりの単発なのかどうかというのはみんな気になっているところでしたからね。」

「(今、企業や個人が本当に求めている支援策はどんなものかという問いに対して、)金額もさることながらスピードなんですよ。」

「とにかく4月にお金がおりるものがあまりないんです。」

「ですから、まず何でも総動員して、例えば手形の不渡りを一定期間停止するとか、あるいは民間の金融機関が審査なしで口座があるところには融資するとか、そういうとこまでまず4月を食い止めること、ここが大事だと思います。」

 

こうした状況は、大なり小なり番組放送から2ヵ月経っても変わっておりません。

解雇・雇い止めはむしろ深刻さを増しています。(詳細はこちらを参照)

ですから、新型コロナウイルスによる経済への影響の段階に応じた国の対応策と並行して、国や自治体による個人や中小企業への定期的な現金給付などは状況に応じて継続的な実施が必要なのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています