4月30日(木)放送の「アイデアの方程式」(テレビ東京)で魚の睡眠輸送について取り上げていたのでご紹介します。
新鮮な魚を新鮮なまま食卓に届ける、それは水産業界の長年の課題でした。
そんな課題をズバッと解決したある画期的なアイデアがあります。
生きた魚を眠らせて運ぶ画期的な輸送技術が評判を呼んでいます。
誕生したのは1998年、それまで魚の輸送は冷凍や氷詰めが主流でした。
しかし、どうしても鮮度が落ちてしまいます。
水槽付きの専用車ではコストがかかります。
誰もが安くて新鮮な魚を楽しめる方法はないか、そう考えたのが水産コンサルタント会社の社長です。
ある日、社長は腰を痛め、針治療を受けていました。
その時、頭の中に浮かんだのが以前目にしたことのある中国の針麻酔でした。
閃いたのはその時です。
「そうか、魚も針麻酔で眠らせれば、鮮度を落とさずに運べるかもしれない!」
以来、社長は本を読み漁り、水族館に通い詰め、魚が眠るツボを研究、試した魚は2000匹以上、試行錯誤の末、ついに魚の運動機能を麻痺させるツボを発見しました。
こうして誕生したのが、魚を生きたまま低コストで運べる睡眠輸送です。
魚にもストレスがかからないため、身が新鮮で美味しいと評判になりました。
水産業界に革命を起こした魚の睡眠輸送は針麻酔をヒントに生まれていました。
ということで、今回のアイデア方程式は低コスト輸送×針麻酔=魚の睡眠輸送でした。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
この針麻酔による魚の睡眠輸送は誰が発明したのか、番組では伝えていなかったのでネット検索したところ、有限会社おさかな企画(大分県)の卜部俊郎社長であることが分かりました。
なお、この発明は2005年8月に特許を取得しています。
鮮度を落とさずに低コストで魚を輸送出来ないかという長年の水産業界の課題とたまたま腰を痛めて受けた針治療から連想された中国の針麻酔、そしてそこから魚の針麻酔に応用した魚の睡眠輸送が閃いたというわけです。
というわけで、ここでも前回のアイデア方程式でもお伝えしたように、卜部社長に日頃から強い課題意識があったからこそ、たまたま受けた針治療をきっかけに魚の睡眠輸送へとアイデアが展開されていったのです。
さて、ここで疑問がいくつか湧いてきたので以下にまとめてみました。
・魚の針麻酔はどのくらいの時間効き目があるのか
・麻酔の効く時間は針麻酔の方法によって調整出来るのか
・以前、アイデアよもやま話
No.4367 魚を眠らせたまま長時間運搬出来る”魔法の水”!でお伝えした別な魚の輸送方法と比べて、どちらの方法が魚の新鮮さの維持、および低コストでの輸送において優れているのか
こうした輸送に伴うアイデアの中からの取捨選択、あるいは優れた方法の組み合わせにより、鮮度を落とさずに低コストで魚を輸送する最善の方法を実現させることが出来ると思うのです。
一方、アイデアよもやま話 No.945 “魔法の水”で魚が急成長!では魚を急成長させる”魔法の水”についてご紹介しました。
また、アイデアよもやま話 No.4664 クロマグロ減少に救世主!?ではクロマグロの養殖技術についてご紹介しました。
こうした魚の成長、養殖、あるいは輸送に関する様々な優れたアイデアの組み合わせにより、より新鮮で美味しい魚を低コストで国内外の食卓に届けることが出来るようになると大いに期待出来ます。
ここであらためて思うのは、常にアイデアをより閃き易くする状態にしておくためには好奇心を持つことがとても重要であるということです。(参照:No.56
好奇心が大切!)
アイデアは既存の要素の組み合わせなのですから、好奇心が旺盛であればあるほど、アイデアが閃くうえでの要素が増えるというわけです。
ということで、卜部社長も好奇心旺盛な人物であると容易に想像出来ます。