2020年07月30日
アイデアよもやま話 No.4708 中小の自動車部品メーカーの生き残りを賭けた取り組み!

4月3日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で「”クルマの未来”についていけ」をテーマに取り上げていたのでご紹介します。

 

新型コロナウイルスの影響で工場が停止することもあり、逆風の自動車業界ですが、そもそも電気自動車(EV)などは新しいクルマづくりにも直面しており、特に中小の部品メーカーは大変な状況です。

そこで地方で始まった、生き残りを賭けた取り組みを番組で取材しました。

 

1月下旬、ものづくりが盛んな浜松市で開かれた自動車部品メーカー向け勉強会に、地元の約30社が参加して次世代の主力、EVのモーターの構造などについて、専門家からレクチャーを受けました。

主催したのは一昨年静岡県と浜松市が設立した次世代自動車センターです。

このセンターは、大手メーカーのスズキ、ヤマハ発動機と連携し、約300の中小部品メーカーの支援を行っています。

その目的は、未来の自動車産業を見据えた部品メーカーの供給体制の構築、将来自動車のエンジンがモーターに代わることで、既存の約4割の部品が使われなくなるとされる中、地域が一体となって生き残るすべを見出そうというのです。

次世代自動車センターの望月 英二センター長は次のようにおっしゃっています。

「次世代自動車に向かって部品が変わってくると、(従来の)サプライチェーンが変わる可能性があるんですよね。」

「(地元が)一緒になって開発する体制をつくる・・・」

 

特に力を入れているのは、次世代のクルマづくりでも通用する“強み”の再発見です。

地元企業が持つ埋もれた技術を発掘しようとしています。

活動をきっかけに新たな挑戦を始めた企業も出ています。

自動車部品メーカー、株式会社コーリツ(愛知県刈谷市)は長年エンジンの動力をタイヤに伝えるシャフトと呼ばれる部品を手掛けてきました。

エンジンのないEVが主流になれば、需要が無くなると危惧していました。

しかし、センターの担当者に相談する中でシャフトを作る際に用いる金属に溝を入れる技術がEVのモーターの主軸づくりに応用出来ると分かったのです。

会社では早速試作品の開発に着手、3年以内にはEVを手掛けるメーカーへの納入を目指しています。

コーリツの寺尾 尚広営業課長は次のようにおっしゃっています。

「実は埋もれていた技術が“売れる技術”だったというところは、今回初めて気づきがあったところで、やってみて良かったなと。」

 

地域一帯で生き残ろうというこの取り組み、地元の自動車メーカーも期待しています。

スズキ自動車の鈴木 修会長は次のようにおっしゃっています。

「“小さな滴”が50個あれば、“大きな滴”になりますね。」

「どんどんやって下さい。」

「新しい血が生まれます。」

「新しい命が生まれますよ。」

 

こうした背景には地元の危機感があると思います。

クルマのつくり方が抜本的に変われば、地域の雇用が失われることも心配されます。

今回の取り組み、部品メーカーの生き残りの一つのヒントになると思います。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

なお、7月2日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で株の時価総額でテスラがトヨタを追い抜いた意味について報じていましたが、この事実は、近い将来、EVがガソリン車に取って代わる時代を迎えることの象徴だと言えます。

そして、世界中の既存のガソリン自動車メーカー、および自動車部品メーカーはこの事実にひと際危機感を抱いていると容易に想像出来ます。

また将来、自動車のエンジンがモーターに代わることで、既存の約4割の部品が使われなくなるという予測は既存の自動車部品メーカーにとってまさに脅威です。

 

そうした中、静岡県と浜松市が設立した次世代自動車センター主催の浜松市で開かれた自動車部品メーカー向け勉強会は、まさにこうした危機感の表れです。

 

しかし、考えてみれば、自動車産業に限らず、多くの産業はEV化の波同様に、技術革新によりその波に乗り切れなかった企業は衰退し、一方でうまくその波を乗り切れた企業は生き残っていくのです。

 

番組でも取り上げていた自動車部品メーカー、コーリツは自社の持つ既存の技術をEVのモーターの主軸づくりに応用し、3年以内にはEVを手掛けるメーカーへの納入を目指しています。

こうしたチャレンジ精神旺盛な企業は、単に生き残っていくだけでなく、新たな飛躍の可能性を秘めているのです。

 

番組でも指摘しているように、より多くの自動車部品メーカーが次世代のクルマづくりでも通用する“強み”を再発見し、生き残っていって欲しいと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています