2020年07月27日
アイデアよもやま話 No.4705 「水の底」は巨大市場!?

4月13日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で巨大市場と言われる「水の底」について取り上げていたのでご紹介します。 

 

海底で人類が見たことのある領域はテニスコートに針1本分と例えられるほどわずかで、ほぼ未知の世界なのです。

人類未踏の新たな産業を興そうするベンチャー企業があります。

神奈川県藤沢市であるプロジェクトが動いていました。

海に投入したものが水中ドローンです。

空ではなく海中を漂う、そして深く潜る、深海250m、海底のリアルな姿を映し出します。

それを見ているのは、新江ノ島水族館の飼育員たち、エサを探して海底を歩いている魚の姿が見えます。

展示飼育部の八巻 鮎太さんは次のようにおっしゃっています。

「深海にどんな生物がいるかというのを観察してどんな生き方をしているのかというのを調べる。」

「網なんかで獲ると、生き物は撮れるんですけども、それはどういうかたちで生きていたかは分かりませんので、そういったのを実際に見ることが出来るのは水中ドローンの強みだと思いますね。」

 

従来は、こうした深海調査をコストや規模の面で自前でする手段がありませんでしたが、水中ドローンの登場で頻繁に行うことが可能になったといます。

この水中ドローン、約20kgと2人いれば使える手軽さです。

これを開発したのが、ベンチャー企業、株式会社フルデプス(東京・台東区)の創業者、伊藤 昌平社長(33歳)です。

伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「深海を自分の作ったロボットで見たいというのが最初のきっかけでしたね。」

 

海へのこだわりは子ども時代からでした。

たまたま好きになったのが深海魚でした。

筑波大学でロボットを研究していた2009年、小さい頃図鑑で見ていた深海魚とテレビで再会しました。

伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「深海生物が(テレビに)映っていた時に、いつも通り面白いなと思ったんですが、何で写しているんだろう、じゃあそれだったら自分で作ろう。」

 

深海を調査する水中ドローンの開発を始めると、意外な事実が分かってきました。

深海に限らず、陸の近くや浅い海を含め、海底は全て「未知の世界」だったのです。

伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「水中ドローンだったりを使って簡単に、当たり前に水中のことを分かるような状況を作り出せれば、人の役に立てるんじゃないのか・・・」

 

フルデプスの拠点を訪ね、中に入るとまず目に飛び込んで来たのがオフィスの1階に設置してある実験用のプールです。

いつでも実験が出来るようにしてあるのです。

水中ドローンを操作する手元をよく見ると、ゲーム用のコントローラーです。

右側のレバーを上げると浮上し、下げると沈みます。

勿論、旋回も出来ます。

2時間も練習すれば、自由自在に動かせるようになるといいます。

カメラはフルハイビジョンの高精細、推進機は7基搭載しています。

ただ、意外にも開発で一番難しかったポイントについて、伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「水中は電波が通らないといったところに課題があるんですけども、有線で船と陸とつなげて使用します。」

「(潮の)流れですね。」

「ケーブルがたわんでいって、ロボット自体が引っ張られて浮いてしまう。」

 

波の抵抗を受けない、かつ極細で切れにくいケーブルを開発、このケーブルだからこそ、水中ドローンが自在に動けるのだといいます。

 

3月下旬、伊藤社長が向かったのは、神戸市の水道用に建設された、100年以上の歴史がある立ヶ畑ダムです。

伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「昨今、潜水士さんの担い手不足といいますか、人手不足が問題になっていまして、どうしても水中の作業は過酷なので、どんどん人が減ってきていて、これを水中ドローンで機械化出来ないか。」

 

ダムや港などの水中インフラに欠かせない老朽化の点検、これまでは潜水士が全部目で確認するという、膨大な作業でした。

しかし、水中の様子をドローンが先に確認し、補修が必要な時だけ潜水士が潜れば、人手不足を解消出来、コストも削減出来ます。

その他、魚の養殖施設で育ち具合をチェックするなど、漁業の現場でも活躍し始めています。

更に、将来は海底の姿をデータ化することで、海の産業革命を起こそうとしています。

伊藤社長は次のようにおっしゃっています。

「グーグルのストリートビューを海底で完成させるというのが私の一つの夢でございます。」

「水質だったり、海流だったり、環境情報ですね。」

「資源はどのくらいあるのか、どのくらい汚れているのか、今後も人が海と付き合い続けていくかぎり、(水中ドローンは)必ず必要なんじゃんないのかと思って・・・」

 

これまで海底を見るには、大掛かりな機材が必要だったそうですが、今回取り上げた水中ドローンはかなりコンパクトで、更に月20万円からレンタルが出来るということで、水の底がグッと身近になりそうです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今や、若い人たちを中心にテレビゲームはすっかり暮らしの中に溶け込んでいます。

そうした中、今回ご紹介した水中ドローンはゲーム用のコントローラーで操作出来るといいます。

ですから、テレビゲームに慣れている人たちはすぐに水中ドローンを簡単に操作出来るようになるはずです。

また、これまで海底を見るには大掛かりな機材が必要でしたが、フルデプスで開発された水中ドローンはかなりコンパクトで、更に月20万円からレンタルが出来るといいます。

 

一方、水中ドローンには以下のような用途が挙げられます。

・鉱物資源の有無などの深海調査

・水質や海流など、環境情報の提供

・ダムや港などの水中インフラの老朽化の点検

・魚の養殖施設での育ち具合のチェック

・グーグルのストリートビューの海底版

・レジャー施設などでの、自ら水中ドローンを操作しての海中散歩

・個人で楽しめる簡易的な水中ドローンのレンタル/販売

 

こうしてまとめてみると、人手不足の解消、あるいはコスト削減の手段として、深海調査や水中インフラの老朽化の点検やなどのサービスは企業からの引き合いが期待出来ます。

また、水中ドローンによる海中散歩は、個人向けサービスとして、オンライン操作であれば、国内外の綺麗な海中の風景を自宅に居ながらにしてリアルタイムで散歩気分で味わうことが出来るので多くの個人客からの引き合いが期待出来ると思います。

 

なお、水中ドローンより一足先に空中ドローンは既に空中において、水中ドローンと同様の分野で普及が進んでいます。

ただし、水中ドローンはケーブルが必要なのでその分制約を伴います。

しかし、海中、あるいは水中は陸上に比べて私たちの目の届かない場所なので、その分好奇心も湧いてきます。

中でもグーグルのストリートビューの海底版の作業を進めれば、これまで未発見だった沈没船など思わぬ多くの発見が期待出来そうです。

しかもこうした映像をリアルタイムで公開すれば、多くの閲覧者の獲得が期待出来ます。

 

ということで、海底はまだ“ニューフロンティア”であり、従って水中ドローンにはビジネスとしていろいろな面で期待期待出来そうです。


 
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