2020年07月22日
アイデアよもやま話 No.4701 新型コロナウイルス対策に必要な発想の転換!

6月11日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルス対策における発想の転換の必要性について取り上げていたのでご紹介します。 

 

番組の「コロナに思う」コーナーで、東京慈恵会医科大学 医学部外科・統括責任者の大木 隆生教授は次のようにおっしゃっています。

「私は外科医で、感染症の専門家ではありませんが、今回のパンデミックに関して多くの勉強をして、そこから見えて来たものがありますので、それをご紹介させていただきたいと思います。」

「まず冒頭に申し上げたいのは、このパンデミックにおけるゴールはただ一つ、それは世界規模で集団免疫を獲得するというものであります。」

「そして、そこに至るルートはワクチンを待つか、あるいは自然感染で集団免疫を獲得するかということは念頭に置いておいていただきたいと思います。」

「さて、この3ヵ月間(番組放送時点)の経験から分かったことは、日本では一見、感染爆発が起こったかのように思いますが、これを他国のグラフと一緒に並べてみますと、実は日本では感染爆発、あるいはオーバーシュートが起こってないということが明らかであります。」

「もう1つ分かったことは、日本におけるコロナ感染症の死亡率が極めて低いということであります。」

「死亡率は5.3%と言われています。」

「これは欧米の10〜20%に比べて低い値ではありますが、それでも5.3%は怖い病気と感じてしまいます。」

「しかし、最近行われた慶応大学病院における熱のない患者さんに対するPCR検査、あるいは巨人軍関係者に対する検査で、慶応大学では2.7%の陽性、巨人軍では坂本選手を含む1%にコロナ感染者がいることが判明しました。」

「これらをもとに、日本における真の感染者数を逆算しますと、130万人から390万人規模で既に感染者がいるということになり、そうしますと、死亡率は(死亡者が)900人ですから5.3%ではなくて0.02〜0.06%と、季節性インフルエンザと同レベルで、過度に恐れる病気ではないということが明らかになりました。」

「これらのことを念頭に発想の転換をし、政策の変更をしてもいいのではないかと思うわけです。」

「今まで慈恵医大を含めて、コロナ患者さんを引き受けた病院は軒並み赤字になっていますが、それではコロナ患者さんのたらい回しということになりかねませんので、ここは政府に思い切って(コロナ患者さんを受け入れた)病院に財政支援をし、医療体制を強化する、そうすればコロナによる医療崩壊が一層防げて、一層安心して経済を回すことが出来ると思います。」

「このような前提で経済を今よりも自由に回し、そして人々の生活においては手指衛生やマスク着用など、基本的な感染対策をするというサステナブルな政策を取って、しかもそれが取れるのは日本の特権ではないかと感じております。」

「ただし、それを野放図にやりますと、感染爆発・医療崩壊ということになりますから、このようなウオッチすることが必要です。」

 

ここで大木教授は大木リミッターという概念、すなわち医療逼迫度という数式を示しました。

医療逼迫度=重症患者数/ICU(集中治療室)ベッド数

 

続けて、大木教授は次のようにおっしゃっています。

「これは従来の感染者数に着目したものではなく、医療崩壊が起こるか、起こらないかで、50%をラインにリミッターをかける、この分母のICUベッド数、これは是非国の支援を得て、分母を大きくする。」

「感染者数が増えることに一喜一憂するのではなく、肝心なこういった指標をモニターしながら、そして皆さんにおいては、従来のようなロックダウンとか非常事態宣言とかそういうものではなく、サステナブルな、持続可能な政策、コロナとの闘いは長丁場であります。」

「このような政策を取って、もし運悪く感染してしまったら、その時は強化された医療が全力で国民の皆さんを守りたいと思います。」

 

なお、大木教授は日本での死亡率が低いと話していましたが、それに関連して結核の予防接種、BCGのうち日本から広がった「日本株」のBCGを摂取している国や地域(台湾、イラク、ナイジェリアなど)では、他の種類のBCGを使っている国よりも新型コロナウイルスによる人口10万人あたりの死者数が少なくなっています。

大木教授は日本株のBCGと死者数の少なさとの因果関係は実証されていないとしつつ、こうした点にも関心を寄せているということでした。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

大木教授のお話を伺って、新型コロナウイルス対策に対して新たな道が開ける思いになりました。

そこで以下にお話の要旨をまとめてみました。

(新型コロナウイルス対策のゴール)

・パンデミックにおけるゴールはただ一つ、それは世界規模で集団免疫を獲得することである

 

(方針)

・ゴールに至るルートはワクチンを待つか、あるいは自然感染で集団免疫を獲得するかである

 

(現状認識)

・日本では感染爆発、あるいはオーバーシュートが起こってない

・日本におけるコロナ感染症の死亡率が極めて低く、季節性インフルエンザと同レベルである

・国全体が感染者数の増減に一喜一憂している

・従って、主に感染者数に着目した指標で感染状況を監視している

・現状の新型コロナウイルス対策はサステナブル(持続可能)とは言い難い

 

(対策)

・コロナ患者を受け入れた病院に財政支援をし、医療体制を強化する

・人々の生活においては手指衛生やマスク着用など、基本的な感染対策をするというサステナブルな政策を取る

・感染者数に着目するのではなく、医療逼迫度という指標で監視し、50%をラインにリミッターをかけ、50%を超えたら分母のICUベッド数を大きくする

医療逼迫度=重症患者数/ICUベッド数

 

(効果)

・医療崩壊が一層防げて、安心して経済を回すことが出来る

 

こうしてまとめてみると、一つ疑問が出てきました。

それは、医療逼迫度を重症患者数だけに着目していいのかということです。

最近の傾向は、全感染者数に対する無症状感染者数、および軽症患者数の割合がとても多くなって来ていることです。

ですから、現実には、重症患者以外の感染者用の受け入れ施設も必要です。

この点について、是非大木教授のお考えをお聴きしてみたいところです。

しかし、大木教授の基本的な考え方は、感染者への取り組みと経済活動とのバランスを持たせる、まさにサステナブルな新型コロナウイルス対策と言えます。

 

なお、7月9日(木)付けネットニュース(詳細はこちらを参照)では、以下のように報じています。

 

東京都を中心に新型コロナの新規感染者数が増加するなか、ネット上ではある医療機関の対応に注目が集まっている。東京女子医大で夏のボーナス(夏季一時金)を支給しないと労組に回答し、看護師約400人が退職を希望していると言われている問題だ。

 

しかし、この東京女子医大の問題をはじめ医療機関が経営的に切迫している問題をぶつけられても、政府はいまだに対応をとろうとはしていない。

 

大木教授の提言からだけでなく、この記事からも分かるように、まさに医療の現場では医療崩壊が進みつつあるのです。

こうした現状について、とても残念なことに国の認識はとても甘すぎると思うのです。

国には、こうした発想の転換による新型コロナウイルス対策を早急に検討するとともに、並行してワクチン、および治療薬の開発を推進していただきたいと思います。


 
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