2020年07月21日
アイデアよもやま話 No.4700 スウェーデンの揺らぐコロナ対策!

一部で報じられているように、スウェーデン政府は集団免疫という独自の取り組みで新型コロナウイルスの早期終息を目指してきました。

そうした中、6月16日(火)放送の「国際報道2020」(NHKBS1)でスウェーデンの揺らぐコロナ対策について取り上げていたのでご紹介します。

 

新型コロナウイルスの感染者が5万人を越えたスウェーデン、検査件数を増やしたこともあり、新たに感染が確認される人は1日に1000人を上回ることもあります。

人口100万人当たりの死者数は478人、隣国のデンマーク(102人)やノルウェー(44人)と比べると際立って多くなっています。(出典:欧州疾病予防管理センター(6月14日現在))

中でもクラスターと呼ばれる感染者の集団が発生しているのが高齢者施設です。

亡くなった人の実に半数近くが施設に入所している人でした。

背景には施設で働くスタッフに感染を防ぐための防護服が不足していたことや予防のための知識が十分でなかったことなどがあると見られています。

更に一部の地域では医療崩壊を防ぐために病院で受け入れる患者を年齢などによって選別したのではないかという批判も上がっています。

ウオメ大学のイングヴェ・グクタフソン教授は次のようにおっしゃっています。

「高齢者を差別するなんてとんでもない事例です。」

「患者を診察もしないで、生きるべきか死ぬべきかを決めるということですからね。」

「誤った診断によって、死なずに済んだ数百の命が失われたのです。」

 

厳しい制限措置を取らなかったスウェーデン、それでも経済への深刻な影響も浮き彫りになっています。

スウェーデンの中央銀行は、GDPが前年度比で10%近く減少するという見方も示しています。

EU域内などからの入国は制限していませんが、航空便の運航が大きく減少したこともあって、観光客は激減、その影響はサービス業を中心に広がっています。

あるレストランでは、夏には大勢の観光客で賑わうということですが、売り上げが90%以上減ったといいます。

一方、素朴で大胆なデザインが観光客に人気の雑貨店でも店を訪れる客はほとんどおらず、今後の見通しも立たないといいます。

 

こうした状況について、ロンドン支局長の向井 麻里さんは次のようにおっしゃっています。

「(スウェーデンというと、福祉の手厚い国というイメージがあるが、高齢者施設で多くの人が亡くなっていることについて、)世界でも有数の高福祉国家のスウェーデンでも高齢化が進み、財政面や制度面など様々な課題が出てきています。」

「そうした状況の中で、高齢者施設で感染拡大が起きてしまったわけです。」

「政府も早い段階で問題を認識し、施設への外部からの訪問を禁じるなど、必要な対策は取っていました。」

「ただ施設のスタッフなどは自由に出入りしていたこと、また防護服が足りなかったことなど、複数の要因が重なり、結果として感染を抑え込むことが出来ませんでした。」

「加えて、感染した高齢者が医療機関から治療を拒否されるという、言わば命の選別が行われるケースまであったことに国民の間には大きな衝撃が広がっています。」

 

「(世界各国が今感染拡大の第2波に対する警戒を強めているが、今後スウェーデンとしてはどう対応しようとしているのかという問いに対して、)スウェーデン政府がこれまでの対策を大きく変えることはないと見られています。」

「対策の責任者は、一部に不備があったことは認めていますが、基本方針は間違っていないという姿勢を貫いています。」

 

感染対策の責任者、テグネルさんは次のようにおっしゃっています。

「高齢者施設などではより良い方法があったかもしれないが、感染防止戦略はおおむね機能していた。」

「次に大きな感染が起きても同じような対策を実施するつもりだ。」

 

向井さんは、続けて次のようにおっしゃっています。

「ただ、国民の受け止めには変化が見られます。」

「多くの人が亡くなる状況にこのままの対策でいいのか、疑問や不安の声が聞かれるようになっています。」

「こうした声を反映し、この数週間で8ポイントから10ポイント下落しました。」

「そもそもスウェーデンの対策は、政府と国民の信頼関係が前提となっていますが、ここにきてその信頼関係が揺らいでいるようにも見えます。」

「信頼関係が一旦崩れてしまえば、政府の対策そのものが問われる事態になりかねず、世界から注目されるスウェーデン独自の対策は正念場を迎えていると言えそうです。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

スウェーデン政府は他の国々と異なり、意図的に集団免疫による新型コロナウイルスの早期終息を目指してきました。

また、亡くなった半数近くが高齢者施設の入居者だといいます。

その背景には以下のことが挙げられています。

・施設で働くスタッフに感染を防ぐための防護服が不足していたこと

・予防のための知識が十分でなかったこと

・一部の地域では医療崩壊を防ぐために病院で受け入れる患者を年齢などによって選別していたこと

 

このことは何を意味しているのでしょうか。

以下は私個人の見解です。

・集団免疫を目指すのであれば、当然ある期間大量の感染者数をもたらすので、それに応えるだけの十分な医療体制を前もって準備しておくべきであった

・しかし、そうした準備が不十分で、しかも高齢者施設で働くスタッフなどの知識が不十分だったことから、高齢者施設の入居者を中心に他国に比べて多くの死者数をもたらしてしまった

・こうした状況に、国民の間にこのままの対策でいいのか、疑問や不安の声が聞かれるようになり、政府と国民の間の信頼関係が揺らいでいるようである

・しかし、感染対策の責任者は「これまでの感染防止戦略はおおむね機能していた」、また「次に大きな感染が起きても同じような対策を実施するつもりだ」と発言している

・こうした政府の方針のまま、第2波を迎えれば、更に死者数は増え、国民との信頼関係も破たんする可能性が多くなる

 

ただし、ロックダウンを続けていた他の欧州諸国を見ると、人口あたりの死者数がスウェーデンより多い国があるという状況については、スウェーデン以上に啓もう活動、あるいは医療体制が不備だったのではないかと思われます。

 

ということで、新型コロナウイルスに対してどのような取り組みをしようとも、国民に対する啓もう活動、および医療崩壊を起こさないように感染者を受け入れる十分な医療体制が必須なのです。

特に、スウェーデンのように集団免疫による新型コロナウイルスの早期終息を目指そうとするならば、なおさらだと思うのです。

 

最後に、スウェーデンの集団免疫対策に対して、賛成派、反対派の意見の一例についてご紹介します。

賛成派はこちら、反対派はこちらを参照下さい。


 
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