2020年07月20日
アイデアよもやま話 No.4699 新型コロナウイルスワクチンの実用化が間近に!

6月25日(木)、7月2日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルスワクチンの開発状況について取り上げていました。

また、7月3日 ()付け(こちらを参照)、および7月6日 ()付けネットニュース(こちらを参照)でも同様のテーマを取り上げていたのでこれらを併せてご紹介します。

 

大阪大学発ベンチャー企業、アンジェス株式会社は開発中の新型コロナウイルスワクチンの安全性や効果を調べるため、国内で初めて人に投与する治験を始めると発表しました。

なお、アンジェスは20万人分のDNAワクチンの生産体制を早急に整えるとしています。

大阪市立大病院のほか大阪大医学部附属病院でも治験を行いますが、人数は2施設合わせて数十人程度、順調に進めば9月中に結果が出るといいます。

アンジェスでは、その後、大規模な治験に移行し、年内には治験を終え、厚生労働省の製造販売承認取得を目指すとしています。

 

“日の丸ワクチン”に取り組んでいるのは、塩野義製薬、第一三共、タカラバイオ(=アンジェス)など6社です。

塩野義は2019年12月に66億円で買収したバイオベンチャーUMNファーマを拠点にコロナワクチンの開発に乗り出しており、他の国内メーカーより先行していると言われています。(厚生労働省の幹部)

それでも欧米勢に比べて周回遅れの感があるといいます。(関係者)

一方、「DNAワクチン(*)は、新型コロナに限らず、これまで世界中で承認された事例はない」(同)とされています。

 

* 病原体を構成する成分の設計図であるDNAをワクチンにしたもの。

遺伝子ワクチンとも呼ばれる。

筋肉内に投与すると、DNAの指示に従って病原体の一部であるタンパク質を合成し、そのタンパク質に対する免疫が作成され疾患の治療に寄与するものである。

 

そもそもバイオワクチンの成功の確率は1割以下といわれています。

アンジェスのDNAワクチンは、富士フイルムホールディングスのアビガンの二の舞になりはしないかとの見方もあります。

というのは、治療薬候補「アビガン」の治験が遅れ、7月以降にずれ込むことがわかったのです。

6月中に終了する予定だったのが、足元で新型コロナの感染者数が急減し、治験の参加者数が目標に届かず、治験の進捗次第では、承認手続きが更に遅れる可能性があるというのです。(詳細はこちらを参照)

それでも、アンジェスでは年内には治験を終え、厚生労働省の製造販売承認取得を目指すとしています。


なお、7月18日付けネット記事(こちらを参照)では「アビガン」の最新状況について以下のように報じています。


富士フイルムホールディングスなどは、「アビガン」の臨床試験(治験)を月内(7月)にもクウェートで始める。最大1千人程度の参加者を集める大規模な治験で、新型コロナ薬としての効果や副作用を確かめる。有効なデータが得られれば日本での承認申請に利用することも検討。国産の治療薬としての量産を急ぐ。


ですから、治験参加者を海外に求めて、少しでも早く治験の完了を急いでいるのです。

 

一方、アメリカの製薬大手、ファイザーとドイツのビオンテックは共同開発している新型コロナウイルスのワクチン候補を24人の健康な被験者に2回投与したところ、感染した人に通常見られる水準を超える抗体が確認出来たことを明らかにしました。

7月下旬にも最大3万人が参加する最終段階の治験を始めます。

 

以上、2つのテレビ番組と2つのネットニュースの内容を併せてご紹介してきました。

 

ちなみに、新型コロナウイルスの治療薬として期待されているアビガンの最新状況ですが、7月10日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で以下のように報じています。

 

藤田医科大学は、臨床研究として軽症もしくは無症状の感染者88人に対してアビガン投与した場合と非投与の場合を比較、6日目までにウイルスが消える割合や熱が下がるまでの日数を検証しました。

回復が早い傾向は見られたものの、統計的に明らかな差は確認出来なかったとしています。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

一方、4月22日(水)付け(こちらを参照)、および5月2日(土)付け(こちらを参照)のネットニュースでイギリスでのワクチン開発について取り上げていたので併せてご紹介します。

 

イギリスのマット・ハンコック保健相は4月21日、イギリス・オックスフォード大学が開発した新型コロナウイルス向けワクチンの臨床試験が4月23日に始まると発表しました。

政府は「全力をあげて」ワクチン開発を推進していると話しています。

 

他のほとんどの開発チームが安全性を実証する数百人規模の小規模な試験からスタートしなければならない中で、同大学のジェンナー研究所はワクチン開発で好発進を切りました。

これまでに手がけた臨床試験で、同様の予防接種(新型コロナとは違う別のコロナウイルスに対して昨年行われたものを含む)が人間に無害であることを証明していたからです。

 

オックスフォード大学の研究者チームは5月末までに、6000人以上を対象とした新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を他に先駆けて行う予定になっています。

安全性だけでなく、有効性も実証したい考えです。

 

同大学の研究者によると、効果が確認されて当局の緊急承認が得られれば、最初の数百万回分のワクチンは9月までに利用出来るようになる可能性があります。

公表されている他のいかなるワクチン研究よりも数カ月は先を行きます。

 

同大学のジェンナー研究所が開発するワクチンは、身近なウイルスの遺伝子コードを改変する技術を用いています。

従来のワクチンは弱体化させたウイルスによって免疫反応を引き起こすが、この研究所が使用する技術では別のウイルスを非活性化したうえで新型コロナウイルスを模倣します。

この“無害な偽物”を体内に注射することで免疫を誘導する仕組みです。

この免疫が新型コロナと戦い、体を保護するのです。

 

こうしたオックスフォード大学の取り組みについて、「とてつもなく迅速な臨床プログラムだ」と、様々なワクチン開発プログラムに資金援助しているビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団でワクチンプログラムのディレクターを務めるエミリオ・エミニさんは語る一方で、どれが最も効果的なワクチンとなりうるかは、臨床試験のデータが利用可能となるまではわからないと言います。

いずれにしても複数のワクチンが必要になる、とエミニさんは主張しています。

子どもや高齢者のような集団で他より効果を発揮するものもあれば、費用、投与量で違いが出てくる可能性もあるからです。

複数のワクチンを製造すれば、製造上のボトルネックを回避するのにも役立つといいます。

 

以上、2つのネットニュースの内容を併せてご紹介してきました。

 

ということで、いくつかのテレビ番組やネットニュースの内容をご紹介してきました。

 

新型コロナウイルスの早期終息に向けて、最も重要なことはワクチン、および治療薬です。

そして、治療薬については、7月15日より3日間にわたってお伝えしましたが、他にも並行していろいろな治療薬の開発が進行中のようです。

そうした中でも、アメリカの製薬会社、ギリアド・サイエンシズが開発した新型コロナウイルスの治療薬、レムデシビルは実用化間近のようです。

 

一方、新型コロナワクチン開発の状況については、国内では大阪大学発ベンチャー企業、アンジェスを中心にご紹介してきました。

なお、“日の丸ワクチン”に取り組んでいるのは、塩野義製薬、第一三共、タカラバイオ(=アンジェス)など6社といいます。

しかし、欧米勢に比べて周回遅れの感があるといいますから、官民一体でスピードを上げて取り組んでいただきたいと思います。

 

また海外の動きについては、アメリカの製薬大手、ファイザーとドイツのビオンテックによる共同開発、およびイギリス・オックスフォード大学の取り組みについてご紹介しましたが、オックスフォード大学の研究者チームは5月末までに6000人以上を対象とした新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を他に先駆けて行う予定で、効果が確認されて当局の緊急承認が得られれば、最初の数百万回分のワクチンは9月までに利用出来るようになる可能性があるといいます。

公表されている他のいかなるワクチン研究よりも数カ月は先を行くということですが、5月25日(月)付けネットニュースでは、イギリス・オックスフォード大学の研究チームは、感染率の低下によってワクチン効果の有無を検証することがますます困難になるだろうと指摘したと報じています。(詳細はこちらを参照)

 

開発メーカーや研究機関はそれぞれいろいろな課題に取り組まれていると思いますが、大きなネックの一つとして、アビガンやオックスフォード大学の研究者チームの治験の遅れに象徴されるように、治験をスムーズに進めるためには必要な回復した感染者、すなわち治験の参加者数が目標に届かないという悩みがあります。

ところが皮肉なことに積極的に集団免疫を進めるスウェーデンのような一部の国を除き、多くの国々はこうした悩みがある一方、新型コロナウイルスの感染防止に必死に取り組んでいるのです。

まさにジレンマです。

 

なお、ワクチンの種類によって子どもや高齢者のような集団で他より効果を発揮するものもあれば、費用、投与量で違いが出てくる可能性もあるので複数のワクチンが必要になります。

そこで、複数のワクチンを製造すれば、製造上のボトルネックを回避するのにも役立つとエミニさんは主張しています。

そこで、ワクチンや治療薬開発の治験に必要な参加者数を確保するために、世界各国が協力して必要な分だけ回復した感染者を確保する仕組みが必要だと思います。



*7月24日(金)追記


7月22日(水)付けネットニュース(こちらを参照)では、イギリス・オックスフォード大学の研究チームの進めているワクチン開発の最新状況を取り上げていたので、以下にその要約をお伝えします。
・イギリスのオックスフォード大学は、開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンについて、「強い免疫反応が見られた」と発表した
・大学の発表によると、ワクチンをヒトに投与した結果、ウイルスの働きを弱める「抗体」と、感染した細胞を攻撃する「キラーT細胞」による「強い免疫反応が見られた」という
・ワクチンは、早ければ9月にも実用化される可能性がある
・共同開発するアストラゼネカは7月21日、日本でも大量のワクチンを供給したいとしていて、日本政府と協議を進めている
・一方で、日本で緊急事態として治験が免除されなかった場合は、供給が遅れる可能性がある


ということで、このワクチンが実際に国内外を問わず多くの未感染の人たちに投与され、その効果が発揮されれば、新型コロナウイルスのパンデミックから解放され、一気に終息に向けて動き出すと大いに期待出来るのです。


 
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