前々回、前回とPCR検査関連の記事についてご紹介してきました。
今回、次回と新型コロナウイルス治療薬に挑む日本企業の最前線について2回にわたってご紹介します。
1回目は、6月1日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、武田薬品の取り組みについてのご紹介です。。
感染再拡大の懸念が高まる中、急がれるのが新型コロナウイルスの治療薬の開発です。
今日(6月1日)から2夜連続でその最前線についてお伝えします。
世界で激しさを増す開発競争に日本から名乗りを上げたが国内トップ企業の武田薬品工業株式会社(東京・日本橋)です。
カギを握るのが新型コロナウイルス肺炎から回復した患者の血液のある成分なのです。
新薬開発の現場を番組が独占取材しました。
アメリカでは今、回復した患者から血液を集める活動が始まっています。
採取されたのは、血しょうと呼ばれる血液の成分、実はこの血しょうが世界中で新薬の開発につながると注目されているのです。
日本で血しょうに目を付けたのが武田薬品工業です。
コロナウイルスに感染すると、多くの人がウイルスと闘う抗体を体内で獲得します。
武田薬品は回復患者の血液を採取、この抗体を含んだ血しょうを世界中から集めます。
血液から赤血球を除いているため、色は薄い黄色です。
この集めた血しょうから抗体を取り出し、コロナウイルスの治療薬をつくろうというのです。
生産は、昨年約6兆円で買収したアイルランドの製薬会社のアメリカの工場です。
社運を賭けた一大プロジェクト、買収の成果も問われています。
武田薬品で新型コロナウイルスの治療薬をつくる特命プロジェクトのメンバー、柏谷 祐司さんは次のようにおっしゃっています。
「武田薬品はグローバルな企業なので、アメリカとかヨーロッパの患者さんを救う、すごくそれも価値があって、グローバルカンパニーとしての使命は、日本の企業に勤めているというところに立ち返ると、やはり日本の患者さんに何か貢献したい。」
実は、武田薬品は今回、治療薬の開発のスピードを上げるため、世界のライバルメーカーにも共同開発を呼びかけて来たのです。
患者のために、今は利益を度外視しているといいます。
5月15日、柏谷さんは国立国際医療研究センター(東京・新宿区)に向かっていました。
こちらの医療機関で新薬の安全性などを確認する治験が出来ないか、相談に来たのです。
打合せの結果について、柏谷さんは次のようにおっしゃっています。
「前向きなコメントをいただいていますので、これから詳細を詰めて進めていって、更に進めていきたいと。」
そしてこの日、プロジェクトに大きな進展があり、柏谷さんは次のようにおっしゃっています。
「治験薬の製造がアメリカの工場で始まりました。」
「こちらの血しょうはオーストリアで採血された血しょうになります。」
治療薬のカギを握る血しょうがアメリカの工場に集まってきました。
武田薬品は、まずは治験用の薬を生産、7月から日米欧で治験を始め、安全性や効果を確認していくとしています。
クリストフ・ウェバー社長兼CEOは次のようにおっしゃっています。
「日本が迅速な承認プロセスを取るなら、年末までに患者に使ってもらえます。」
「どれだけ頑張っても年末です。」
「薬の数は、最初は限定的になります。」
武田薬品が総力を挙げて挑む治療薬、新型コロナウイルスを制圧出来るのでしょうか。
日経バイオテクの坂田 亮太郎編集長は次のようにおっしゃっています。
「感染者が回復をした際に獲得する抗体を使うと、新しい患者さんに効くということが分かってきているので、今回もそれを活用するということになっています。」
「薬の原料となる感染者の血液から収集しないといけませんので、回復者の協力が不可欠だということです。」
「いかに(血しょうを)確保するかということが課題になってくると思います。」
現在、この治療薬のもととなる回復患者からの血しょうの提供は、日本国内では制度上難しくて、実施されていないといいます。
今後、この治療方法が有効だと示された場合は、国内で血しょうを調達出来るかどうかというのも課題になっていきそうです。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通して、新型コロナウイルスの治療薬を石油に例えると、回復患者の血液が原油、そしてその中の血しょうに含まれる抗体が石油と言えるのではないかと思いました。
今や、新型コロナウイルスの感染はパンデミック(世界的な大流行)状態にあります。
まさに人類共通の危機です。
そして、その根本的、かつ最も効果的な解決策は明らかです。
すなわち、ワクチンと治療薬の開発です。
さて、 “企業は社会の公器”と言われていますが、世界中の関連メーカーはまさにその本領を発揮すべき時なのです。
そうした中、今回ご紹介した武田薬品は治療薬の開発のスピードを上げるため、世界のライバルメーカーにも共同開発を呼びかけて来たといい、患者のために今は利益を度外視しているといいます。
武田薬品に限らず、こうした姿勢の企業は尊敬に値すると思います。
なお、新薬の開発期間は9〜17年といわれています。
そして、人にとって有効で安全なものかどうかを調べる臨床試験(治験)は3〜7年かかるといいます。
更に、治験後の承認申請と審査期間は1〜2年といいます。
更に、世界中の感染者を救うための治療薬の開発には、それ相当の原油に相当する回復患者の血液を収集しなければなりません。
ですから、血液の収集には世界各国の協力が必要となります。
ということで、新型コロナウイルスを少しでも早く終息させるために、世界各国の関連企業が協力してワクチン、および治療薬の開発、および回復患者の血液の収集に取り組んでいただきたいと思います。
同時に、治験後の審査を担当する厚生労働省には、特例で少しでも期間を短くしていただきたいと思います。