6月30日(火)放送の「TBSニュース」(TBSテレビ)で日本発の全自動PCR検査装置について取り上げていたのでご紹介します。
日本のPCR検査が画期的に変わるかもしれません。
画期的な全自動PCR検査装置を開発した日本のメーカー、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社(PSS)の田島
秀二社長は次のようにおっしゃっています。
「(この装置の)蓋を閉めて、ボタンを押していただければ、全自動で結果が出ると。」
保健所などの公的機関が行う従来の方法だと、検体と試薬を混ぜる作業などは一つひとつ手作業です。
結果が出るまでの6時間ほどかかり、技術を持つ人材も必要です。
それがこの装置を使えば、12本のノズルが同時に動き、検体からウイルスの遺伝子を抽出、その遺伝子の入った容器に試薬を注入します。
遺伝子が増幅されるのを待って結果が判明、この1台の装置だけで2〜3時間のうちに12人分のPCR検査をこなせるといいます。
従来の方法と比べると、時間も人手も圧倒的に少なく済みます。
しかし、日本の企業が開発したこの全自動PCR検査装置は日本では普及せず、海外では引っ張りだこだというのです。
この装置を導入しているフランスの政府からこの企業に感謝状が届いています。
またイタリアでは、感染の中心地だったロンバルディア州の州政府がこの装置のメーカーをオフィシャルメーカーに指定し、病院への配備を進めました。
PCR検査に追われる世界の現場で大きく貢献している日本生まれの全自動PCR検査装置、5年前にEUで認可されて以降、既に50ヵ国で500台以上導入されています。
フランスの検査部門の責任者は次のようにおっしゃっています。
「感染の拡大を抑えられた国は最初から大量の検査を行えるようにしていました。」
「この装置は検査を大量に実施することが可能です。」
また検査技師の一人は次のようにおっしゃっています。
「日本の検査機関がこの機械を使わずにどうやって作業しているのか想像もつきません。」
この全自動PCR検査装置が日本で普及していないのはなぜなのでしょうか。
安倍総理はたびたび検査能力の目標を掲げていましたが、検査を受けられないまま重症化したり、亡くなったりする人が相次ぐ中、PCR検査の不足が指摘され続けてきました。
実はこの頃、PSSは国内での販売を目指して動いていました。
ただ日本でこの装置を売り込むためには、まず装置とセットで使う試薬について厚生労働省(厚労省)から保険適用の承認を得る必要がありました。
PSSの田島 秀二社長は次のようにおっしゃっています。
「いろいろ考え方がコピット(新型コロナウイルス)に関しては厚労省さんも自分でお持ちになって、ガイドラインじゃないけど、そういうある指針をおっしゃって、それを勉強させていただきながら、「じゃあ手続きとしてこうやって行こう」というのを我々なりに段取りをつけて、・・・」
1ヵ月半かけて検査の精度を示すデータを集め、厚労省に提出、遂に6月、検査試薬への保険適用が認められました。
ようやく日本でもこの全自動PCR検査装置を使うことが出来るようになったのです。
田島社長は次のようにおっしゃっています。
「(結果判明が)何日後、ひどくなると1週間後ということじゃなくて、症状が出ている患者さんを目の前にして、これ(検査装置)に乗せれば1時間、1時間半でデータが出るわけですから、やっぱり現場で使えるような装置だということが非常に大事だと思います。」
なお、人口1000人あたりのPCR検査の実施数(6月28日時点 イギリス「Our World Data」より)は以下の通りです。
アメリカ 92
イタリア 88
カナダ 70
シンガポール 64
韓国 24
フィリピン 6
日本 4
各国と比べてみると未だに日本は世界の中で圧倒的に低いことが分かります。
世界で活躍する日本生まれの全自動PCR検査装置の導入を早期に進める選択肢はなかったのか、厚労省に取材してみると、以下のような答えが返ってきました。
「全自動装置が日本の検査現場のニーズに合っているかどうかは分からない。」
「(実際に検査現場のニーズを吸い上げたのかどうかについては、)何をどこまでやるかだと思う。」
「地方の現場でそれぞれ判断してもらうのが適切だった。」
今後の導入についてもこれまで通り各現場の判断に任せる考えだといいます。
今後、第2波、第3波に備え、検査体制は十分に確保出来るのでしょうか。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
新型コロナウイルス対策に取り組むうえで、まず感染者数を把握することが基本です。
しかし、日本では多くの人がPCR検査を受けるとなると、医療機関に多くの人が殺到して、そこで医療機関で感染が広がってしまうという懸念がありました。
そこで、早期にクラスター(感染者集団)を見つけて、クラスターをつぶしていくということが当初の方針でした。(参照:アイデアよもやま話 No.4621 新型コロナウイルスとの闘い その1 日本がパンデミックにまでならない理由!)
要するに、もし医療機関で感染防止対策が十分に整備され、大量のPCR検査対象者を受け入れるだけのキャパシティを持ち合わせていれば当初からPCR検査を実施出来たわけです。
しかし、今や感染経路不明の感染者数の割合が半数近くと無視出来ないことから感染者の特定が必須の状況です。
それでも安倍総理がたびたび検査能力の目標を掲げていたにも係わらず、人口1000人あたりのPCR検査の実施数(6月28日時点)は各国と比べてみると未だに日本は世界の中で圧倒的に低い状況なのです。
しかも日本生まれの全自動PCR検査装置は5年前にEUで認可されて以降、既に50ヵ国で500台以上導入されている一方、国内ではようやく今年6月に検査試薬への保険適用が認められたという状況なのです。
更に、この装置の導入を国内で早期に進める選択肢はなかったのかについて、番組が厚労省に取材した結果をみると、国がリーダーシップを取って積極的に導入を推進する意図はなく、各自治体にお任せのように読み取れます。
本来、こうした装置の導入推進こそ国の果たすべき役割だと思います。
こうした状況だけ見ても、安倍総理、および厚労省の新型コロナウイルスの感染被害に対する危機感の低さが疑われます。
5年前にEUで認可されていた全自動PCR検査装置がせめて1月末にでも国内で導入が進められていれば、感染されたうちの何人かの方々の命が救われたのではないかととても残念に思います。
新型コロナウイルスのパンデミック状態はまだまだ当分続きそうです。
せめて、第2波、第3波の到来に備えて、より多くの人たちがPCR検査を受けられるように体制を整えて欲しいと思います。